【処方薬の乱用と依存 】      赤城高原ホスピタル

(改訂:08/10/15)


別ページの関連記事
覚せい剤
リタリン乱用
薬物乱用からの回復者のメッセージ
薬物乱用関連ニュース
覚せい剤の乱用(上毛新聞・オピニオン)
合法薬物の虜になるひとびと(当院PSW著)


 鎮静剤、催眠剤、抗不安薬、鎮痛薬など、処方薬や市販薬の乱用・依存は、数カ月ないし数年、時には数十年をかけて徐々に進行するやっかいな病気です。急性中毒による転倒、昏睡、死亡などのほか、慢性の乱用によって、情緒不安定、対人関係、社会生活上の障害、法律上の問題などが生じます。「OD あるいは、O.D.」というのは、overdose (オーバードーズ)つまり「薬の適量超過」のことです。日本では、処方薬、市販薬の過量服用、大量服用、「薬のまとめのみ」の意味で使われています。


 もともと、神経症、うつ病やアルコール依存症、人格障害、慢性の痛みなどの基礎疾患を持っており、その治療の過程で、次第に服薬量が増え、乱用・依存になるケースが多いようです。一部の薬剤は、最初から非医学的目的のために使用されることがあります。たとえば、パーティーなどでの若年者によるアルコールと催眠剤の乱用です。極めて危険な行為で、しばしば急性中毒死が報告されています。

 時には、この病気の発症と悪化に医師や薬剤師が手を貸していると思われる場合もあります。医療関係者は、漫然と長期に薬物を投与することを避け、治療薬の乱用・依存にもっと用心すべきです。患者さんやご家族も、長期の服薬に関しては、その副作用、必要性などを吟味すべきでしょう。残念ながら、医師が処方しているから安全な薬だとはいえないのが現状です。処方薬依存は予防が大切です。

 また最近では、インターネットなどを通じて、薬物の情報を得たり、海外から薬物を入手されたりする方が増えてきました。その中には、誤った情報があったり、危険な薬物が含まれていたりします。一部には、このような手段で安易に大量の薬物を入手して、乱用する方も増えてきました。

 赤城高原ホスピタルには、やや重症の嗜癖性疾患の患者さん方が入院されますが、医療薬の依存を合併している患者さんは高率で見られます。アルコール症患者の3−4人にひとり、覚醒剤やシンナー乱用患者の2−3人にひとり、摂食障害患者の4−5人にひとりが処方薬に依存しています。
 
 一度できあがった治療薬の乱用・依存から抜け出すことは容易ではありません。 「乱用を止めるための強い意志を持つ」といった方法では、一般には乱用を止められません。この種の薬物は身体的依存を伴いますから、服薬中止は強い離脱症状をひき起こすことがあります。

 主な離脱症状は頭痛、悪心・嘔吐、低血圧、動悸、睡眠障害、渇望(強い薬物欲求)、不安、不穏、全身の震えや発汗、幻覚(幻聴、幻視、幻触など)、発熱、けいれん発作などです。通常、薬物中止後2〜10日間持続します。薬物の乱用に起因する頭痛は、薬物乱用頭痛(medication-overuse headache、MOH)といい、慢性頭痛患者の中にしばしばみられます。

 この状態を「薬物乱用・依存症」という嗜癖性の病気の一種であると認識し、専門家に相談すべきです。処方薬依存の背景には、「医療依存、専門家依存」という問題が含まれていますから、「専門家に相談しなさい」というのは、矛盾しているように思われるかもしれません。しかし「医療依存、専門家依存」の治療は、実はすべての嗜癖性疾患の治療の基礎であり、依存症専門治療の一部なのです。


[常用量依存]

 ベンゾジアゼピン系薬剤(ジアゼパム、ニトラゼパムなどの抗不安薬、睡眠薬)では、臨床用量の範囲内でも長期の服用で身体依存が形成され、退薬症状が出現することが知られています。この状態は常用量依存(または臨床用量依存、低用量依存)と呼ばれています。具体的には、投薬開始時の症状はなくなったのに、減薬や服薬中止をすると、もともとの症状に加えて、それまでにはなかった症状までも出現します。退薬症状には、不安、焦燥感、気分の落ち込み、頭痛、発汗、手足のしびれ、振戦、知覚異常、けいれん発作、離人感、動悸、嘔吐、嘔気、下痢、便秘、腹痛など多岐にわたります。これらの退薬症状のために、服薬をやめられなくなります。

 欧米では、1980年代にこの問題が医療関係者に広く知れ渡り、ベンゾジアゼピン系薬剤は、短期的に使用されるべきであるという教育がなされ、この種の薬剤の長期投与は例外的になりました。残念ながら日本では、この問題への取り組みは、極めて不十分です。


ご連絡はこちらへどうぞ ⇒ address
または、昼間の時間帯に、当院PSW(精神科ソーシャルワーカー)にお電話してください ⇒ TEL:0279-56-8148

AKH 文責:竹村道夫(初版:1999/11)


[トップページ]  [サイトマップ]