【 薬物乱用、依存症、200人の証言 】     赤城高原ホスピタル 


【 おわりに 】

 初め、「薬物乱用、依存症、100人の証言」という題名でスタートしたこのシリーズは、あっという間に証言者の数が100人を突破、1年余り後に「200人の証言」に改題しました。
 全体を通してみると、現在の日本の薬物乱用の傾向が見えてくるかもしれません。私自身、改めて読み返してみて、考えたことや思いついたことを以下に述べてみます。

 数の上で多いのは、処方薬、市販薬。その内容は、睡眠薬、精神安定剤、鎮痛剤など。薬物分類上はマイナートランキライザーが主です。ベンゾジアゼピン系薬剤、バルビツール系薬剤はその代表です。ブロムワレリル尿素は、現在処方薬ではあまり使われませんが、市販薬乱用の代表格です。リタリンは処方薬ですがアッパー系薬剤(アンフェタミン類似物質)ということで、特別な存在です。

 覚せい剤は、日本の薬物取締り政策上の最重要課題でもあり、覚せい剤の所持や使用は犯罪です。乱用者は逮捕歴、犯罪歴のある場合も少なくありません。治療者は報告義務はありませんが、赤城高原ホスピタルでは、入院時に関東信越厚生局麻薬取締部に報告することを条件に入院治療を受け入れています。また、入院時とその後に尿検査を行い、陽性に出たら、直ちに警察に通報します。入院報告だけで当局からの取調べが来たケースはありませんが、入院前の犯罪で入院中に逮捕された方が1人、入院時あるいは入院中の尿検査で陽性反応が出て、直ちに逮捕された方が既に4名います(2002年6月現在)。なお、外来治療や相談の段階では、当局への通報はしていません。

 覚せい剤は、また使用によって高率に幻覚妄想状態になることが特徴です。横断的な状態像としては統合失調症(精神分裂病)に似た状態になります。赤城高原ホスピタルは開放型の病院ですから、幻覚妄想状態や興奮が強い患者の長期入院は困難です。

 マリファナは、覚せい剤と同じように違法薬剤で取締りの対象です。また医学的には使用による精神症状の報告があります。その一方で、これまでに、この薬物の乱用、依存、中毒症状、薬物関連精神症状の治療のために、赤城高原ホスピタルに受診、または入院された方はいません。(註:2004年11月、大麻使用を止めたいがやめられないという方が受診されました。初めてのケースです) これは覚せい剤とは際立った違いです。

 しかし、覚せい剤乱用者(とくに吸煙使用者)の病歴を聞くと、高率にマリファナ乱用の既往があります。この点では、マリファナは違法薬、薬物乱用の入門薬だ、という専門家の指摘は当たっているようにも見えます。

 コカイン、ヘロイン、LSD、MDMA(エクスタシー)などの違法薬乱用は、ホスピタルではまだ少数です。MDMAは今後増えることが予想されます。

このほか、シンナー乱用、ブロン、新トニンなどの咳止め薬乱用、ライターガスなどの乱用も少なくありません。 [TOPへ]


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AKH 文責:竹村道夫(2001/11/21)


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