【窃盗癖、回復者と回復途上者からのメッセージ 】  赤城高原ホスピタル

(改訂 08/10/12)


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嗜癖問題Q&A: 万引、盗癖 万引と法律問題。

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【Case 1】 

 私は摂食障害、薬物依存、盗癖、セックス依存、ネットゲーム依存など、多くの嗜癖問題を持ち、回復途上の20代女性です。摂食障害、薬物依存については、発症してから10年になります。

 現在は生活保護を受け、関東地域に住み、ミーティング(自助グループ)と通院治療を中心とした生活をしています。

 万引について、私の場合は、自分の意志で何度も止めようとしましたし、大切な人から怒られ懇願され、泣かれ、時には殴られもしましたが、この悪癖を止めることはできませんでした。自分では止められないので、「いつか捕まれば止められる」とも思っていました。しかし実際には、捕まっても、警察で調書をとられも、翌日にはまた万引きをしてしまいました。

 他のアディクションもそうですが、物理的に隔離するなどの外的な力では、一時的な抑止力にしかならず、その枷が外れればまたもとの(アディクション中心の)生活に戻ってしまいます。

 私の場合は、専門的治療を受ける事によって、ほとんどの嗜癖問題から回復することができました。現在も残っている症状は、軽度の摂食障害傾向だけです。薬物、盗癖、ネットゲームなどが止まって2年以上になります。

 専門家の力を借りることにより、あんなに止められなかった万引が止まりました。そして止め続けるために、今も回復の努力をしています。
 
 私は今現在、週に一度専門外来に通院し、いろいろな嗜癖問題の自助グループに通っています。ミーティングに通うことでアディクションに溺れずに生活を送ることができています。

 私は、自分の体験から、以下のことを確信しています。

@ 万引き、盗癖がアディクションであり、アディクションは回復可能であること。
A 回復のためにはミーティングに通い続けることが効果的であること。


もしも、万引、盗癖に苦しんでいる方やご家族の方で、私に会いたい方がおられたら、赤城高原ホスピタルにご連絡ください。私の体験をお伝えすることしかできませんが、上記のようなことでしたらお話しすることができます。(08/06)


【Case 2】 

 私は摂食障害、盗癖からの回復途上の女性です。摂食障害は十代後半に発病しました。初めは拒食症でしたが、1年後には食べては吐く過食症に変わりました。以来、最近まで、1日1回、夜間に食べては吐くという生活を10年近く続けてきました。私が20代半ば頃、姉が自殺しました。両親の不仲と離婚など、つらく悲しい幼児期に私を支えてくれたたった一人の優しい姉でした。私とは違って聡明で成績も良く、誰に対しても親切で、何事にも真面目に取り組む人でした。そんな姉の突然の死でした。私は人生に絶望しました。正直に生きていて、何になるんだろう…。姉が死んだ今となっては、誰も私のことなんか気にかけてくれない。信用できるのはお金だけだ、と思うようになりました。私の摂食障害は徐々に悪化し、過食嘔吐の生活にも疲れてきました。過食嘔吐を続けるためには、毎日大量の食べ物を買わなければなりません。

 その頃から、私は過食する為の食べ物を時々万引きするようになりました。正直に言って、万引きをする時のスリルや成功した時の達成感などは、私にとって小さな慰めでした。やがて万引きはだんだんエスカレートし、食べ物だけではなく、日用品にまで手を出すようになりました。万引きの興奮や解放感はすぐに不安に変化しました。こんなことが何時までも続くわけはない、いつかは捕まる…。恐怖でした。でも、一方では、こんな人生、生きていても仕方がない、捕まったら死ねば良い、と自暴自棄にもなっていました。実際に一度、捕まって警察で調書をとられた直後に、身の回りのものを整理して睡眠薬を大量に服用しました。2日間寝込んでいましたが、死に切れずに目が覚めてしまいました。そして数ヵ月すると万引きを再開してしまいました。罪悪感はありました。明日は止めようと毎晩考え、それでも翌朝になると、次の万引きの事で頭がいっぱいでした。いつの間にか、万引きは私の生活の一部になり、もう自分自身の力では止める事ができなくなっていました。「苦しい、辛い」。私は、過食嘔吐の悪化と処方薬のまとめのみで、精神病院に入院を繰り返すことになりました。そんな状態でも、私は万引きの悩みは、家族や友人には勿論、治療スタッフにも一度も話しませんでした。

 そんな時に、ある病院に入院中に知り合った摂食障害の仲間から、クレプトマニアを治療する病院があるということを聞きました。私が行った事もない遠方の病院でした。入院しても、何も変わらないかもしれない…。でも、死を選ぶこともできない私は、入院する決意をし、全財産をかき集めて、ひとりで群馬県の赤城高原ホスピタルを訪ねました。そこは、開放的で、外出が自由な一方で、週に一度の荷物検査、外出から帰った時の持ち物チェックなどがあり、お金とお小遣い帳の管理に至るまで全てが厳しく指導されました。それと同時に、同じ病気の患者だけが参加する万引・盗癖ミーティングに参加することになっていました。ミーティングでは、自分の問題を正直に話すこと、仲間の話を傾聴することが求められていました。ホスピタルでは、そのようなミーティングが毎日あります。摂食障害や万引問題から回復した仲間にも会えます。私は、クレプトマニアを病気だと認識でき、治療すれば回復できるのだということを実感しました。また、心を開く事によって、苦しかった気持ちが楽になりました。

 私はホスピタルで3ヵ月の入院期間を過ごし退院しました。入院中に掴んだ回復の足がかりが今の自分の生活の基盤となりました。私は今、関東地域で生活保護を受け、ミーティングに通いながら、ホスピタル院長が出張勤務している外苑神経科に通院し、社会復帰の準備をしています。自由になるお金は少ないし、贅沢はできませんが、正直に生きられるというのはすばらしいことです。私は、赤城高原ホスピタルで治療を開始して以来、一度も万引きしていません。今は過食嘔吐もしていません。アルコール依存症が、一滴のお酒から再発につながるように、一回でも万引きすれば、それは昔のすさんだ生活への引き金になると思っています。ミーティングに通い、仲間の話を聞く事や、正直な自分の気持ちを話す事によって、昔を忘れずに今の自分を強く保てるのだと思います。

 私の場合は、万引について、自分の意志で何度も止めようとしましたが止められず、誰にも相談できず、どうすれば良いかわからず、長期間一人で悩んでいました。心穏やかでいられる今があるのは、専門病院での治療、諦めずに指導してくれた主治医、私を受け入れてくれる仲間とミーティングのおかげだと感謝しています。

 私と同じ、(摂食障害+万引)でお悩みの方やご家族で私の体験を直接お聞きになりたい方がおられたら、ホスピタルのPSW(精神科ソーシャルワーカー)にご相談ください、ホスピタルの院長先生に招かれ、近くメッセージをスタートする予定です。(08/10)[TOP]


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AKH 文責:竹村道夫(2008/9) 


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