1月某日年始の日直で出勤する。年賀状を整理していると「小林」と声をかける者がいる。見上げるとそれは大学時代の友人で今は新潟にいる「I」ではないか。「よく来たなー。はるばる新潟から来たのか。まーあがれよ。」と招き入れた。Iとは4年前に静岡で会って以来である。Iの仕事は高校の校長で、年末年始の休みで奥さんの実家のある大宮から来たのだという。大宮なら高速道路を使えば2時間も有ればロータスに着いてしまう。しかし、良くロータスまで来たものだ。3時間以上もの間、お互いの仕事は勿論のこと政治や経済更には文化のことまで会話し続けた。学生時代もそうだったが酒が入らなくても何時間でも議論できるタイプの人間で、教祖に祭り上げ新興宗教を創設しようと真剣に検討したことが思い出される。
  
芭蕉「月日は百代の過客にして、行きかふ年もまた旅人なり」
1月某日同業者の親の告別式に出席する。今年初めての葬儀である。今年は多い予感がする。予感どおり1月だけで5回出席した。
1月某日朝礼で火元に注意するよう伝える。各地で火災が頻発している。特にたばこの消し忘れとコンセントの埃に注意するよう伝える。
1月9日今日、伊勢崎市に初雪が降った。昨年は23日であった。今年は暖冬という予想であるが結構寒い。ヨーロッパやアメリカは厳しい寒さだという。今年は北極からの寒気の吹き出しがヨーロッパとアメリカに向かっている。
1月某日伊勢崎市は市長選を迎えた。五十嵐候補と三好候補の一騎打ちである。県議と市議の対決であるが、大方の見方では五十嵐候補の圧勝予想である。伊勢崎老施協では五十嵐候補を支持する。この不況時、使えるお金はますます細り市レベルでは如何ともし難い状況であるが、政策の安定性が何より求められるとの判断である。実際ふたを開けてみると圧勝とは言い難い勝利であった。前市長の観覧車問題や体制刷新を望む有権者が多数存在したということだろう。
1月某日アメリカ US AIRWAYの飛行機がNEWYORKハドソン川に不時着した。乗員乗客155人の命を救ったサレンバーガー機長は偉い。命を第一に考え、機長自ら沈み行く機内を2度にわたり乗客が残っていないか確認した後に外へ出た行動は称賛に値する。
1月某日東京にある病院の患者3名がインフルエンザで死亡したとニュースは伝えている。東京都の立入監査が行われた。湿度が極端に低い。本当に病院?と思わざるを得ない管理体制である。職員も病院ということで安心していた面もあるかも知れない。ここに入院している人たちは圧倒的に老人が多い。このような問題が起きたとしても退院することが出来ない。退院しても行く場所がないからである。医師とはいえ四六時中監視するわけにもいかない。職員全員で情報を共有し対策を人任せにしない組織体制が必要であると思う。ロータスヴィレジでは、お陰様で今冬は入居者にインフルエンザ感染者が発生しなかった。
1月21日ロータスの紅梅が開花する。季節は少しずつ春へ向かっていることを実感する。
1月某日介護労働安定センター群馬県支部主催による本間郁子氏の講演を聞きにいく。本間氏はNPO法人特養ホームを良くする市民の会理事長として特別養護老人ホームに関し積極的に発言していることで知られている。今回初めて氏の話を聞く機会に恵まれた。正直、氏の話は疲れた。氏の考えは「質の向上」を目指すことが重要のようで、如何に継続したケアを長期にわたり一定の品質で提供するか、という視点が欠けていると思った。また質の向上の方法として教育の大切さを主張されたが、様々な人が就業してきている現状に教育のみで十分なのか。一昔前の精神論の臭いを感じた
1月某日
この時期中国では旧正月ということで故郷に帰る人たちで各ターミナルはごった返すほどの人混みであるが、今年は不況の影響で様変わりのようである。昨年は大雪に見舞われたことも影響して大変だった。やはり今年は暖冬気味か。
1月某日群馬県地域包括・在宅介護支援センター設立準備委員会に出席する。今日は代理ではなく準備委員が参加したので議論が進展した。今年6月の設立総会に向け着々と準備を進めたい。
1月某日
今日は親睦会主催の新年会である。毎年この時期は寒く自家用車での出席なのだが、今回は自宅まで送ってくれる職員がいるのでおいしいお酒が飲める。今まで焼酎が多かったのだが、最近ウイスキーに戻った。香りとこくがあることが気に入っている。
2月某日先月は新規特養入居者が3名と多かった。体調のすぐれない退所予備軍の高齢者もいるので新規入所者を選定しておくよう相談員に伝える。
2月某日全国社会福祉施設経営者協議会(以下「経営協」という。)主催の介護保険事業経営セミナーに参加する。経営協と全国老人福祉施設協議会(以下「老施協」という。)とは考え方に大きな違いがあり、協調路線をとっているようにはみえない。経営協と老施協双方の考えを聞くとGood。しかし、今回の介護報酬改定は基本サービス費のアップはなく、条件が揃えば加算できる報酬なので老施協が言うような勝利ではない。また、訪問介護は、国が在宅介護の充実と言いながら常勤職員が多くいればいるほど経営が成り立たない事業である事実も温存された。高コスト構造(報酬を上げれば常勤職員は雇えるが、利用者と保険者の負担は増える。マンツーマンの介護はお金がかかる。)である訪問介護はそろそろ今後のあり方について考えても良いように思う。。
2月某日伊勢崎老施協の会議が久しぶりに開かれた。市内在所のすべての特養と養護と1カ所の単独デイサービス施設が参加した。今後は伊勢崎老施協としてまとまりがあり、行政に物言う団体になろうと思う。
2月某日年度末を迎え、事業計画と予算の作成時期になった。私は今月と来月が一番忙しい。理事会に向けての準備と来年度の準備が重なるからである。
2月某日東和銀行新生会主催の講演会に出席する。講師はドイツ証券(株)副会長の武者陵司氏である。演題は「世界経済とマーケットの動向」である。さすが証券会社所属だけあって、今回の不況は今年前半にも底を打ち力強い上昇を遂げるという楽観に満ちた内容であった。確かに中国の公共事業への追加投資やアメリカの経済対策の結果良い指標も出ているのも事実だが、それ以上にアメリカをはじめ各国の金融機関の不良債権も上昇の一途で決して予断を許さない。昨年までは日本への影響は比較的軽微と言われていたが、昨年第4半期(10月〜12月)のGNPは予想を上回るほどの落ち込みでアメリカやヨーロッパ以上の落ち込みである。そうそう楽観視できる経済状況ではない。日本を代表する企業であるトヨタやパナソニックでさえ現金の積み増しを急いでいる。社会福祉法人だから世の中の流れと無縁と言ってられない。我がロータスヴィレッジの安定度は抜群であると思う。今までに無理な拡張はしていないので余裕がある。

2月某日NHKスペシャル「沸騰都市」でシンガポールが取り上げられ興味深く視聴した。徹底した能力主義で世界中の自然学者を招聘し国の富を増す戦略を採っている。今はバイオ(生物学)に集中的に投資し、今後は環境にシフトしていく戦略だという。日本からもたくさんの学者がシンガポールに渡っているが、その論文は「ネイチャー」、「サイエンス」、「セル」の三つの学術誌にに掲載されないと評価されない仕組みになっている。評価は毎年行われ、3年間これらの学術誌に掲載されないと解雇になるきわめて厳しい仕組みである。また、単純労働は外国人が担っており、男性は建設労働者が一般的で女性はメードが一般的である。共に月給500ドルから800ドルである。女性労働者は半年に1度妊娠検査が義務づけられており、妊娠が分かると母国に送還されるという。ある外国人記者がリー首相にこのことを質問するとリー首相は「私はシンガポール国民に選ばれて首相になっている。国民の利益になることは何でも行う義務がある。従って外国人労働者は国民の利益になっており、バッファーとして使うことは至極当たり前のことである。」と答えていた。私はこのバッファーという言葉を平気で使うリー首相が恐ろしくなった。バッファーとは「緩衝」の意味で、労働力の緩衝材になっている訳である。日本をはじめとした先進国が、外国人労働者の人権を無視した対応をとることは許されない。シンガポールだから許されるのである。外国人労働者の犠牲の上に成り立っているシンガポールの一面が暴かれた番組であった。
2月某日東京のマンションのエレベーターの不具合で起きた男子高校生死亡事件につき警視庁が、このエレベータの保守管理会社であるSECに再度家宅捜査に入ったという。不具合が分かったにもかかわらずそのまま放置していた容疑という。このSECはエレベーター保守管理会社としては独立系で、安値を武器にメーカー系の保守管理会社が独占していた牙城を少しずつ浸食してきた歴史を持つ。当初からエレベーターの技術情報がSEC側に渡らないことが指摘されており、不具合が見つかってもその原因特定が遅れたり分からないことがあった。本来ならばこういったときは運転停止にすればよいのだが、マンション管理組合側の意向として一刻でも早く運転して欲しいという要望にどう対処したらよいか迷うことが生じる。今回の死亡事件も不具合が生じたら運転を中止すべきだったのに、そうしなかったSECの責任はあるが、エレベーター製造会社が技術情報を提供しなかった問題もあるのではないか。そもそも適正なエレベーター保守管理料は一体いくらなのか分からないという現実は残る。分からなければ保守管理会社を決める手だてはなく。結局製造会社系の保守管理会社になるのは目に見えている。そうなれば保守管理料は管理会社の言いなりになる恐れがある。困ったものである。ちなみに当施設のエレベーターはTOSHIBA製で保守管理会社も東芝系である。
2月某日訪問介護員の募集を1年以上にわたって行っているが、やっと応募者があった。労働がきつい割には賃金が安いというイメージが浸透しているのだろう。当施設の訪問介護員は時間拘束で拘束中の賃金はきちんと支払い、その上12月には1ヶ月分のボーナスまで支給する。更に公用車で移動し制服も貸与し、サービス提供責任者が控えているのですぐに相談連絡できる体制になっている。大変働きやすい職場である。

2月某日
15回目の食事会である。プラザアリアさんにお世話になり2日間で入居者24名、家族は8名の参加である。食事有り、飲みもの有り、カラオケ有りの楽しい食事会であった。
2月某日地元殖蓮中学校の廃品回収の売上げが791,240円になったという。新聞紙が1Kgあたり11円と良い値段である。当施設も新聞紙や段ボールと協力している。最近は新聞を読まない家庭が増えているという声を聞くと将来は廃品回収も難しくなるのだろうか。このお金で体育館のワックス塗りや学生の県外への旅費に使うという。

2月某日
当施設でケアマネージしている利用者宅のエアコンの調子が悪いというので業者にみてもらったところ、なんと室外機がなかった。盗まれたようであるが、何とも物騒な世の中になった。地域の対応と警察力にお願いするしかないのか。09年2月27日付朝日新聞朝刊の記事に、かつて構造改革を積極的に主張した経済学者の中谷巌氏が「グローバル資本主義によって、日本の良さがどんどん破砕されている。−−略−−日本が国内総生産(GDP)で上位にあったのは、平等性が大きな力を発揮したからだ。貧困層の急増は社会的な分断をもたらし、国民が一体となって進んできた歴史を変えてしまう。」と掲載され、中谷氏が構造改革主張から転向したことが記されている。これだけ貧困が問題になっている中で、政府自治体が有効な手だてを打てないのは、小泉・竹中構造改革に問題があったと考えるのはごく自然なことだと思う。

     群馬県老施協ホームページhttp://www.jsgunma.jp


                                          
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ロータスヴィレッジの出来事と施設長日誌