施設長の独り言

  

 第56話 消費税増税について

 
今回は、消費税増税について私の考えを述べたいと思う。増税については賛成反対様々な意見が有り、例えば8月29日付朝日新聞朝刊には賛成を説く記者と反対を説く記者の対談が掲載されたりしている。マスコミでさえ両論相立つ状態である。本稿はあくまで私の考えであることを強調したい。
 私は増税はやむを得ないと思う。平成26年4月から8%、そして27年10月からは10%になる。確かに施設経営者としても一消費者としても余分な税金を負担しなければならなくなるのは頭の痛い問題である。
 巷では「増税の前にすることがあろう。無駄使いの根絶。議員定数や歳費の削減。公務員給与の減額を先にすべきであろう。」といった意見をよく聞く。しかし、残念ながらこれらの意見に押され、財源の当てが無いまま様々な給付やサービスは提供され続け、国民負担は現状維持のまま国の借金は1000兆円へと膨れ上がってしまった。
  各メデイア世論調査では増税反対が賛成を上回っているが、共同通信調査(2012年7月14、15日調査)によると賛成は42%を上回っている。ということは財源を消費税に求めなければならないと考える人も多いということである。2012年度の税収入は42兆3460億円で国債発行額は44兆2440億円である。支出は社会保障費が最大で26兆3901億円と税収入の62%を超えている。この内訳は年金8兆1417億円、医療8兆6036億円、介護2兆3392億円と毎年増えていく。これら国家予算の支出ばかりではなく、国民や企業の負担も確実に増えている。平成23年度の租税負担率は22.9%、社会保障負担率は17.2%、国民負担率は合計40.1%となっている。ヨーロッパ各国(スウエーデン64.8%、フランス61.2%、ドイツ52.4%、イギリス48.3%)と比べればかなり少ないが、将来の日本の高齢化率を考えればこの先どこまで上がるのか予測がつかないのが現状である。さらに増税感を強く意識させるのが社会保障負担率が上がるのに少しも社会保障の充実感がないことである。増え続ける高齢者にお金が回って社会保障の充実は後回しにされているである。
 私が属している特別養護老人ホームは、介護報酬という形で群馬県国民健康保険団体連合会を窓口として介護給付費から現金が支払われる。介護給付費は2010年度で総額7兆2536億円(サービス利用時の一部負担金は除く)にも上り、この財源は国が25%、都道府県と市町村とが共に12.5%、残り50%を国民や企業が保険料や法定福利費として負担している。健康保険や厚生年金も負担割合こそ違うが、この介護保険と同じ財源構造になっている。健康保険や厚生年金の負担も労使双方にあるので当施設の2011年度法定福利費は3300万円を超え人件費の11%にもなっている。労働者側も同じように負担があるので労使共に「もう払えない、いい加減にしてくれ」というのが本心である。
 高齢者が増え続ける限り、給付は増え続けその財源をどうするのかという問題はずっと残る。給付を減らすのか?一部負担金を増やすのか?国や行政の負担を増やすのか?保険料や法定福利費を増やすのか?どれも当事者にとっては受け入れ難いことである。すべての当事者がすべからく痛みを共有しなければ解決しない問題だと思う。この痛みこそ消費税だと思うのである。




            
平成24年8月31日  小林 直行




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