施設長の独り言

  

 第64話 '14第47回衆議院選挙を考える

 
2014年12月14日という師走に実施された衆議院選挙はマスコミ各社の予想通り自民党と公明党の与党連合の圧勝で終わった。戦後最低の投票率(52.66%)は何を物語っているのだろうか。かくいう私も最後まで誰に、どの政党に投票したものか悩み、投票日に行ったものの投票所で悩んでしまった。
 今回の選挙は争点がはっきりしなかった。消費税10%増税延期の信を問うという安倍首相の「自己都合解散」に全く与党も野党も腰砕けの有様であった。大義ない解散は思わぬしっぺ返しをくうと言った与党幹部は、官邸の揺さぶりになりを潜め、準備の整わない民主党は「消費税増税延期は約束違反だ」と叫んだところで犬の党吠えにしか聞こえなかった。
 ある評論家が言った「安倍自己都合解散」とはまことに妙を得た言葉だと思った。解散権は首相に与えられた専決事項とよく言われるが、今回の解散劇ほどこの解散権の意味を天下によく知らしめたものはないと思う。自民党先代の麻生前首相は解散権をちらつけさせながら結局任期満了による解散に追い込まれてしまった。首相の持つ解散権とは自分の主義主張を具現化させるためにあり、自身の座を長持ちさせるためにあるということである。
 安倍首相の目指す憲法改正や集団的自衛権にはほとんど触れずにアベノミクス一本槍の戦法は見事であった。円安になり株価は上がり雇用数が100万人も増えたと言えば、野党が、円安に泣いている中小企業が多い、一握りの人しか株価上昇の恩恵にあずかっていない、正社員が増えたのでは無く非正規雇用が増えたと言ったところで増加数値を出されればアベノミクス批判たり得ない。
 民主党が政権をとった前回の総選挙のスローガンである「コンクリートから人へ」は間違いのない政策であると思う。ヒグマしか通らない高速道路や役目を果たさないダムをを作るよりは40人学級をなくし教員の数を増やす政策は、資源の無い日本が将来にわたって繁栄する礎(=人材育成=教育)を築く糧になると思う。このことを民主党は主張しなかった。なぜなのか。民主党政権時代の足の引っ張り合い、何も決められない政権時代の悪夢に取り付かれたままだったのかもしれない。
 総選挙直後に、ある30代の女性に「株って儲かるの?」と相談された。昔から「素人が手を出す頃は天井で、売り抜けに徹する」と言われている。多くの人がトリクルダウンによる経済のおこぼれに預かりたい気持ちが強いようである。金儲けは自分自身で開拓し、実践しない限り儲けることはできない。依存や依頼だけでは無理で有る。
 結局今回の選挙は、首相のアベノミクスだけが勝ったのである。勤勉が持ち味な日本人が勤勉さを忘れ、他者への依存心ばかりが目につくプライドを失った国民には選挙などどうでもよいのである。



            平成26年12月26日  小林 直行




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