施設長の独り言

  

 第66話 ヨーロッパへの難民移動についての私考

 
今年、ヨーロッパでは、北アフリカや中東からの難民移動で大変な1年であった。地中海を渡って来る難民、陸路を経由してくる難民に振り回された1年であった。     地中海を渡って来る難民、陸路をやってくる難民の痛々しさはテレビで何回も放映された。いったい何人の難民がいるのか?国連難民高等弁務官事務所Global  Trends 2014によると全世界で1950万人。トップ3は、シリア388万人、アフガニスタン259万人、ソマリア111万人、さらにスーダン、南スーダンと続く。
 この上位三カ国は国の体をなしていない。国連から認められている政府は存在しているが、国土全体を掌握し、そこに暮らす住民の生活を守る政権の基盤が弱い国ばかりである。だから国を捨てて難民になるのだろう。荒廃してしまった母国を国民は望んだのだろうか?そんなことはない。ほとんどの国民は平和で、未来のある国を望んだはずである。しかし一部の野心を持った者が、自分に都合の良い国ができると思って混乱に乗じ我が物顔に振る舞った結果が無政府状態にあるこれらの国々である。
 野心を持った者をのさばれるようにしたのは誰だろうか。私は、それは先進国、特にアメリカだと思う。独裁国家であったイラクを「大量破壊兵器を保有している」とでっち上げてサダム・フセインを死刑に追いやったのはアメリカやイギリスである。サダム・フセイン亡き後のイラクの現状は、政府軍とIS、更はに様々な武装勢力との内戦状態といってよいだろう。同じようにリビアのカダフィ大佐を殺害したのもNATO軍による空爆が反カダフィ陣営を勢いづかせた結果である。カダフィ亡き後のリビアは政府軍と反政府軍とが東西に分かれた内戦状態である。シリアにおいては、残念ながらアメリカの意にそぐ合わない方向に行っているが、三つ巴の内戦を行っている。
 確かに独裁者が君臨し民主的な国家運営がなされず基本的人権さえないがしろにされているのは、異常で打倒されなければならない。しかし、独裁者排除の後の国家運営は先進国が援助するから、「先進国同様にしなさい」といったところで、識字率が低い、女性の権利が保障されていない、部族主義が幅をきかせている等先進国にはない諸事情により先進国が普通に行っていることができない国は多い。選挙の結果に納得せず自分の部族を率いて国家内国家を作っている国は多い。今の混沌とし先行きも見通せない現状よりは、自由や人権は保障されていないが生活は保障されていた独裁国家を望む難民は多いと思う。
 先進国の論理を開発途上国に押しつけるのはやめて欲しい。独裁者が力で、すきあれば我が物顔にのさばりたがっている部族長を押さえていることを過小評価しないで欲しい。民度が低い国には、それに等しい人しか現れないことを知って欲しい。先進国は、相手国の国民の生活の安定を一番に考えた行動を取ってもらいたいものだ。



            平成27年12月28日  小林 直行




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