新学習指導要領の示す,各教科の「基礎・基本」について考える

 

 総合的な学習の時間の実施に向けての課題 

 2002年から完全実施の新学習指導要領のねらいは「ゆとりの中で一人一人の子どもたちに〈生きる力〉を育成すること」にあります。

 この〈生きる力〉とは、自らの人生における社会生活を営む上で、役に立つ資質や能力でなければなりません。

 そのためには、@自ら学び自ら考える力の育成を図るとともに、A基礎・基本の確実な定着を図り個性を生かす教育を充実させていく必要があります。

 また、この〈生きる力〉の育成のために新設された、「総合的な学習の時間」によって、これまでの教科の枠を越えた、学びの統合化としての学習ができるようになります。

 そこでASNECでは、〈生きる力〉の育成を目指す「新しい教育」の在り方について、多様な側面から考えていきたいと考えます。

 

 新学習指導要領の実施に向けて、懸念されること 

 最近の教育現場では、「テーマを何にしょうか?」「内容は福祉と環境のどっちにする?」といったようなことを、よく耳にします。

 このように、ややもすると「総合的な学習の時間」が、「生きる力」の育成に向けた学びではなく、発表のための単なるテーマ学習に終始してしまう危険性があると考えられます。

 

 「総合的な学習」は、それだけで成立するものではなく、各教科・領域の学習と深い関わりをもっており、いわば、基礎・基本としての各教科等の学習があって初めて、その応用・発展としての「総合的な学習」が成り立つということである。

 例えば、問題発見には理科や社会、家庭、保健などの学習が、データの処理や発表・表現には、算数、数学や国語、英語、図工、技術などの学習が直接的な関わりをもってくる。

    宇都宮大学教授 奥井 智久氏 
           「総合的な学習の時間」をどう工夫し発展するか」より

 

  今、私たち現場教師が「やらなくてはならないこと」 

 ASNECでは、「総合的な学習の時間」の構想としてのテーマ設定や試案づくりとともに、大切にしていきたいこととして、次の2点を明確にしていきたいと考えています。

 

@

 ゆとりある教育活動の中での基礎・基本の確実な定着を図るために、各教科における「基礎・基本」を明らかにしていくこと。

A

 「総合的な学習の時間」のベースとなる、学ぶ意欲やスキルとしての学び方等を身に付けさせていくための学習をどう仕組むかについて明らかにしていくこと。

 

基礎基本の確実な定着のためには、児童生徒の発達段階に即して各学年、各教科で取り扱うべき学習内容を厳選し、地域の特性や他教科との関連を踏まえ、学習時期等を明確にした指導計画を作成することが必要であると考えます。

 

 具体例からみる、明確な指導計画の必要性 

 例えば、新学習指導要領における「英語科」などでは、学習内容を複数学年で計画していくことができます。ということは、A中学校では「○○」の学習内容を第2学年で学習し、「△△」の内容を第3学年で学習していく計画を立てましたが、B中学校では、その逆に「△△」を第2学年で、「○○」を第3学年で計画するといったケースが考えられます。

 つまり、たとえ担当教師の移動があったとしても、系統的・計画的な学習が進められていけるような学習計画を、最低限もっている必要があります。

 その最低限度の学習の柱が基礎・基本であると考えます。

 

 学習内容すべてを「基礎・基本」と捉えるのではなく、どの子にも必ず身に付けさせたい最小限必要な重要事項を「基礎・基本」として、明確にしていきたいと考えます。

 つまり、「基礎・基本」となる内容は、そんなに多くないと考えられます。

 教師一人一人が、各自の教科について「この教科のこの時期の基礎・基本はこれとこれですよ」と言えるように、学習内容を構造的に捉えていくことができるかどうかが最大の鍵を握っているものと考えます。

 また、単に学習内容を教えるだけでなく、理解させていく過程の中で「自ら学び、自ら考える力」を育成していかなければなりません。だからこそ、「ゆとり」のなかで学んでいくことが大切なのだと思います。

 そのためにも、ASNECでは、各教科における「基礎・基本」について、明確にしていきたいと考えます。

 

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