淬  礪  抄


        雨 宮 抱 星

花  ふくらはぎ叩けば騒ぐ登山靴
 蜘蛛の網破れて羽の鳴き細る
 月明の恐きまで彩ふかめたる
 たましひの疲れを解くシャワー室
 月明の嶺の禽ごゑ地に落ち来
 秋立つやこだまを返す屏風岩
花
 髪染めて己あざむく終戦日
 終戦日孤独の風呂を溢れさす
 詠い継ぐ季語とし遺す終戦日
 烏瓜の花やおのれが闇となる
 烏瓜咲いて閉扉の宮太鼓
 駆けてくる毛髪風となりし処暑



「俳句は生きる歓びの生活文学である。俳句は静かなる誠の文学である。」これは、草林の提言である。