コリネトキシン中毒
 一年生ライグラス種子の中で繁殖する細菌が産生するコリネトキシンと呼ばれる毒素による中毒です。1950年代にオーツヘイの生産地であるオーストラリアにおいて最初の本中毒発生が確認され、牛、羊の他にヤギ、ウマおよびブタでの中毒も報告されています。コリネトキシンとは、Clavibactor toxicusという細菌が産生する毒素ですが、この菌は土壌中の線虫によって媒介されます。この線虫が寄生しているだけでは一年生ライグラスは有毒ではありませんが、線虫に付いてライグラスの成長点に運ばれた細菌はその種子の中で増殖後、コリネトキシンを産生します。このような一年生ライグラスを摂取した場合の中毒症状としては、初期段階では一時的な起立不能状態を呈します。しかし、症状が進行するにしたがって、痙攣、歩行のふらつきおよび起立不能となり、当該家畜は後弓反張や遊泳運動を示しながら死亡します。
 なお、牛に中毒症状を発症させるためには、体重1Kg当たり約600個という多量の感染一年生ライグラス種子(土壌線虫によって媒介される細菌が増殖して、黄色の色素を作ったものであり有毒です)を摂取する必要があります。しかし、コリネトキシンは摂取した牛の組織に残留するという報告もあるため、かなりの長期間を置いた反復投与でも蓄積効果が現れ、その中毒症状を呈します。
 オーストラリア等輸入元の採草地は、一年生ライグラスが成熟して有毒になる前に、本来の牧草であるオーツヘイを刈り取るように指導しています。しかし、1996年に山形県で問題となったオーツヘイには熟したオーツが大量に含まれていました。このことは、当時の生産地における洪水等の問題があり、オーツヘイの刈り取り時期が遅れたことを示しています。そのため、その遅れたオーツヘイの刈り取り時にコリネトキシンをもった有毒な一年生ライグラスの混入を招いたものと推察されます。ちなみに、当時このロットは国内では山形県を含め数カ所にしか輸入されていませんでした。
 今回の中毒事故をきっかけにオーストラリア側では日本向け粗飼料の検査を厳格にする方針を表明しています。現在、国内でこのコリネトキシンの検査を日常的に実施している機関は一部しかありません。しかし、オーストラリアではコリネトキシンを多数検体を一斉に精度良く検査可能であるシステム(ELISA法)が開発されているため、本中毒の国内発生は今後防止できるものと思われます。

輸入粗飼料利用上の問題点へ