名 医 の 条
件
群馬大学名誉教授
清 水 弘
一
Koichi
Shimizu
鬼手仏心 という言葉がある。
医師、特に外科医のことを表現する成語であり、手術を
する際には私情を抜きにして冷静に処置を行うが、その一方、患者さんに対しては思いやり
の心で接することを意昧している。
今回開業することになった田中君は、
群大眼科に入局して以来の14年間、一緒に診療や
研究をしてきた。大学の眼科で出会う病気は実に多種多様であり、その都度、内外の研究
書を相手に勉強をしなければならないが、田中君の勉強のスタイルは、とにかく徹底してい
て自分が納得するまで調べるのである。検査や診断だけでなく、治療法も現代の眼科では
その進歩がとにかくめざましい。 レーザー光線を使った治療や、白内障などの手術の方法
も、この10年の間に大きく発展飛躍した。
この進歩の速い眼科の臨床では、新しい技術を
いちはやく身につけ自分のものにする努力が当然必要であるが田中君は、群大眼科の中
でも傑出したリーダー的な存在であった。
現在の群大眼科が国内でもぬきんでて高い医療
水準を維持している事実の裏には、田中君をはじめとする中堅医師の日毎の習練があって
のことと評価されるのである。 田中君は国際的にも通用する優れた研究を発表し、医学博
士の学位も群馬大学から授与された。
いずれは、群大眼科をになう学者としてさらに大成
することが期待されていたが今回あえて開業することになったのは、その意味では深く惜し
まれる。 しかし、眼科の診療では超一流の腕を持つ田中君が新しい自分の医院を基盤とし
て活躍することで新町を中心とする住民の方々にはなによりの福音となるであろうことを疑
わない。
鬼手仏心 とは、まさに田中君のような医師を意味するのである。