3 小金沢妙円さん

 小金沢さんは磯部温泉にお住まいの方。三ツ木さんと同じくご主人が他界されて、既に十有余年になる。お孫さんが嫁いでいかれたというのであるから、同じ位の年配の方ではないかと思う。

・幼髪なでつつ抱きし日も遠く
  孫はここに結納交わせり

小金沢さんは琴を弾く。その同じ手で畑にも出る。お孫さんのこと、畑のことをたくさん詩に歌われている。

・わが体ひまさえ有れば心足る
 背戸山畑の土に親しむ

・大空の光吸いたく畑に出で
 雪解まみれのなずなに出逢う

・春来れば畑の辺に咲く紅梅の
 匂いひろごり仕事は楽し

何よりも土と親しんでいることが楽しい、という小金沢さん。新鮮な土と野菜の香りが漂ってくる。

・のどかなる春の日長に植えし藷
 掘れば育ちし新じゃが白し

茶褐色の土に新じゃがの白さが眩しい。土の中から顔を出し光を浴びた藷はさぞかしうまいことだろう。

・掘らぬままの親玉こんにゃくこんもりと
 葉を広げたり雨傘の如

・今置きし籠が段畑転げゆく
 雨にあえぎし葱倒しつつ

段々畑を籠が転がってゆく。雨はもうあがっているのだろうか。すがすがしくて、ちょっぴりユーモアを感じる。

・笑い声絶えざるわが家愛犬が
 一員加はり朝な賑わし

些細なことにくよくよしない。大らかで明るい性格を感じる。