7 竹田良太郎さん

 竹田さんは、農繁期にブドー栽培をし、農閑期に行商をしている。趣味は釣り。

・高温のハウスブドーを気遣いて
 エンヂン響く水くれる音

・行商の凍てつく大地踏みしめば
 残れる雪のさくさくと鳴る

 竹田さんの目に映る田園風景はこんな感じ。

・広広と刈取られたる田園に
 ガードレールの白く際立つ

・収穫を終えし田圃の黒土に
 労わる母の如き雨降る

 「ガードレール」、「労わる母」が利いている。

・薫風を腹一杯に鯉泳ぐ
 孫の未来を開くごとくに

 鯉幟とそれを見上げる竹田さん。明るい希望を感じる。

 峠の人達は、愛妻家が多いいようだ。奥様の詩も多い。

・杖つきて歩の遅し老夫婦
 いたわりながら休みつつ行く

 夫婦はこういう風でありたいものだ。自然と触れ合う田舎の生活。夫婦円満の秘訣はその辺にありそうな気がする。

・何処から流れ来たのか菜の花の
 鏑の川辺に競い咲きおり

・朽ち果てし橋に野菊の咲き競う
 昔は我も通りたる橋

「菜の花」、「野菊」が競うように山里に咲いている。より一層過疎を感じさせる。

・宵の間に蛍の一つ川上へ
 友探すかに川霧に消ゆ

・葦原の長く続きぬ土手に寝て
 懐かしく聞く鳥のさえづり

 最後に力強く爽快な詩を二つ。

・空高く競輪選手の足太し
 見る間に遠く消えて行きたり

・次々に手順通りに組まれゆく
 クレーン高し我が住める家