第三章 霧の朝の線路

霧の朝の線路には
幼き頃のぼくがいて
犬の遠吠えを聞いている

止まってしまったはずの
柱時計が動き出し
潰れた幼い顔の上には
錆びついた
鉄の臭いがこびりつき
髪の毛は
赤く宙を舞っている



線香の香りが
白い弧を描き
青い空の下
黒い群れを覆っている

皮膚に香りが染み付いて
空気はさながら霧のよう

枯葉はきれいに掃き集められ
くすぶった煙の中に
黒焦げになった蓑虫が
横たわる