第四章 朝の通勤ラッシュ
朝の通勤ラッシュは静まり
つり革が
大きく左右に揺れている
新聞紙に
記事はなく
メガネの奥の
分厚いレンズ越しに
畳の擦れる音がよみがえる
注意を視界の隅に集中し
虚空を見詰める
ジェントルマン
ポケットの中の土筆には
手のひらの生暖かさ
革靴の下の振動には
髪の毛が
粘りついたまま
離れない