第六章 戦場

ぼくは見知らぬ人と話をはじめた
一度も見たことのない
戦場に群がる
死人の顔
その眼差しに
憎しみと狂気が渦巻いて
慌ててぼくは窓を破って外に出た
腐敗したそれでいて透明な空気が
額の傷を舐めていく




澄み渡っていた空に
しだいに紀元前の暗雲が立ち込め
ぼくは闇の中
おののき震える

枯れ木がざわめき
枯葉が舞い
川面は渦巻く滝になる

境内に猫はいない
電車は線路を走らない
警報機は鳴り止まず
線路の下から
猫の奇妙な鳴き声が
風に飛ばされ
聞こえてくる