寒い夜の虫

寒い夜
この虫は美しかった

触角を動かしてまるで
初めて化粧をする
少女のように
透き通る自分の姿を
眺めていた

右側が本当の命で
左側はその鏡像

どちらも今はもう
この宇宙にいない
迷いながら
私が この私が
にぎり潰したから