オーベルマンの谷

ベランダで
布団を叩く音がする
時折手を休め
秋の空を眺めている

家の中から
フランツ・リストの
オーベルマンの谷が
聞こえてくる
同じフレーズを繰り返し
音の響きを
確かめている

意識と独立に
世界があることは
確かなのに世界が全て
意識の中にあるという
無間の閉塞やら
偶像化されることに
逆らうように
ウロコ雲が流れていく

心地よい風に
レースのカーテンが
揺れている




嬬恋村にて