ぼくの心が泣いている


ぼくの心は
泣いている
幸せなのに
泣いている

30年近く前
君の小さな妹は
高校一年の夏のその日
かすかな風が運んだ
硫化水素を吸い込んで
リンドウの花咲く
白根の山に
散った

それからずっと
野良仕事に
腰を丸め
色んなことに耐えてきた
君の母さんが
いま土に還る
悲しみを地中に
埋めてしまうのだ

ぼくの心が
泣いている

土砂降りの
雨のように
泣いている