花火に火を点けた

亡くなった父のところに
友人が訪ねてきた

その人は父の亡骸に
覆い被さるようにして
父を惜しんだ

すると父の眼から
うっすら涙が浮かんできた

回りにいた人がみんな
驚いてそれを見ていると
父の身体が少し動いた

右手でその人の身体に
触れようとしている

私は両手を合わせ
亡くなってからもう
何日になるかと母に尋ねた

母はもう2週間になるが
まだ焼くわけにはいかない
事情があると答えた

私は供養のためにと
線香ではなくどうした訳か
花火に火を点けた

花火はミサイルのように
天空に次々と発射され
一本の大木に燃え移った
そんな夢だった




群馬県立近代美術館にて