もしかしたらぼくも

小雨のこぼれる朝
鳥がぽつぽつ群れをなして
ゆれながら灰色の空を
北の方へ飛んでいくのが見える

もしかしたらぼくも
拉致されてきたのかもしれない

ほんのり赤く色づき始めた
花水木通りを独りまた独り
女学生が片手で傘を差し
雨にぬれながら
自転車に乗っていく

もしかしたらきみたちも
拉致されてきたのかもしれない

コンビニの駐車場に車を停め
いつものように99円の
ブラックガムを買いぼくは
思い出すことのできない
アフリカの空を想う

自分の命が無意味だとしても
宇宙がまるごと無駄だなんて
今まで考えたことも
なかった