赤城山から

赤城山から
かすかな冷たい風が
吹いていた

見晴らしのよい
牛舎にいる
ぼくの眼には
前橋の街並みが
もりあがる海に
沈んでいるように見えた

父はなぜ
あの手紙を
書いたのだろう

震えるまつ毛が
凍りつくような夕暮れ
暗い牛舎の中でぼくは
白い息を吐きながら
風に揺れて咲いていた
コスモスの花のことを考えた

赤城山から
かすかな冷たい風が
吹いていた