時間が雪のように

時間が雪のように
降り積もり
ぼくは雪に埋もれている

静かに耳を澄ませていると
真っ白い世界にぽつり
お地蔵さんの銀の両手が
浮かんでくる

中に入りませんか
とぼくが尋ねると
中なんてないよ
とお地蔵さんが応える

もう帰りましょうか
とぼくが誘うと
お地蔵さんは
帰りなんてないと言う

溜息をついてぼくは
窓の向こうを眺める
すると
朝の光を浴びて
浅間山が墨絵のように
輝いているのが見える

きれいですねと呟くと
本当にとお地蔵さんが
両手を合わせた

ああ時間が雪のように
降り積もっていく