はじまりの前に

水を含んだ
白いはきものが
床板の上に
脱ぎ捨てられ
あたり一面
セミの声が
耳の奥から
大きな欅の木まで
届いていた

そう
はじまりの前におわりがあり
おわりの後にはじまりがある

   
八合目を過ぎ
湿地を抜け
月山を登りつづけていくと
その先では
最上川の青サギが
鉄門海上人の
顔をしてこちらを見ていた

ぼくの中のぼくの底まで
宇宙が沈み込むと
そこでは
はじまりの前にはじまりがあり
おわりの後におわりがあった