高山の虹

病院の
6階のギャラリーで
今にも消えそうな虹を見た
きれいな淡い虹を見た

生花の片付けをしながら虹は
展示写真を見ている
パジャマ姿のぼくに
声をかけた

「そのダニ族の酋長はね
豚を何頭あげたら
嫁に来てくれるか
まじめに尋ねたのよ」


末期ガンで
死の宣告を受け
フランスから日本へと
死ぬために戻って来た虹は
その期間を過ぎても
こうして元気に生きている

「同じように病気と闘っている人の
力になりたくて
それで病院を回っているの」

ああ虹よ
いつまでも消えるな
高山の命の虹よ