どこから帰ってくるのか
山に日が沈む頃になると
けたたましい鳴き声をあげ
病院の前の木々に
椋鳥が集まってくる

その黒い木の陰にぼくは
かすかな虹を感じた

前立腺肥大で入院中の
谷川さんが
外に出て
笑いながら
こん棒で一本の木の幹を叩くと
豆まきでもしたように
いっせいに椋鳥は
木から飛び立ち
空に散っていった

その夕空の中にぼくは
美しい虹を感じた

朝になり
椋鳥がざわつき
再びどこかへ飛び立つ頃
静かな病室の
ベットの上でぼくは
消え入りそうな虹の気持ちを
赤い目をして
考えた