【 関連する諸問題 : アルコール関連問題
】
(改訂 08/04/23)
「これまで飲酒運転によって起こした交通事故は数え切れない。運転免許取り消しを5回受けた。今考えると生きていたのが不思議なほど」。
約2年前まで、数カ月毎に、泥酔状態で入院していたアルコール依存症患者、Sさん(41歳)の話である。
専門家の調査によると、ひき逃げ事件の逃避動機の1位は「飲酒運転」である。また、飲酒運転違反者の再犯率は高く、再犯者のアルコール依存症罹患(りかん)率も高い。このように、交通犯罪と飲酒、アルコール依存症との関係は根深いが、日本では交通犯罪対策の一環として依存症関連の教育が取り入れられることはほとんどない。
Sさんも警察などで、「飲んだら乗るな」と言われるだけで、アルコール依存症関連の教育や専門的治療を勧められたことはなかったという。アメリカのカリフォルニア州では、飲酒運転で逮捕されると、依存症対策を念頭に置いた36時間のアルコール関連問題教育を受けることを義務づけられ、これにひっかかった日本人旅行者や海外出張社員がその厳しさにド肝を抜かれる。このあたりの考え方には国によってかなりの差があるようだ。
飲酒運転に限らず、飲酒問題は、社会の中に広く根を張っている。飲酒関連の事故や犯罪が新聞に載らない日はほとんどない。1979年、WHOは、アルコール関連の全ての健康社会問題をまとめて、「アルコール関連問題」という大きな概念を打ち出した。この中には、肝障害や糖尿病、心臓病など本人の健康問題のほか、事故、家族問題、職業問題、犯罪、自殺などがあり、それぞれの項目に含まれる問題は、以下のようなものである。
[事故] 飲酒運転や酔った歩行者による交通事故、転落、転倒、爆発、熱傷、誤飲、自傷行為、焼死、溺死(できし)、凍死。
[家族問題] 信頼感の喪失、不和、嫉妬、夫婦間暴力、子供への虐待、経済破綻、別居、離婚、家族の健康問題、近隣とのトラブル。
[職業問題] 二日酔いによる怠業、遅刻、欠勤、職場の人間関係の悪化、勤務中の飲酒によるミス、産業事故、生産能率低下、失職、働き盛りの死。
[犯罪] 暴行、傷害、窃盗、強盗、失火、放火、性犯罪、殺人。
これらすべてのアルコール関連問題の中心にあるのがアルコール依存症だ。実際、同病患者の病歴を聞くと、必ず、これらの問題のいくつかを合わせ持っている。
[飲酒運転関連問題のリンク]
● 節酒自助グループ、MM創始者の飲酒運転事故 当院HP内関連問題ページ
● MADD(08/04/23確認)・・・Mothers Against Drunk Driving : 飲酒運転者に子供をひき殺されたひとりの母親が設立したNPO。飲酒運転撲滅、被害者支援、未成年者の飲酒防止などに取組んでいる。
[飲酒運転関連統計データ]
(基礎データ)
夜間における死亡事故の4分の1に飲酒が絡んでいる。
飲酒程度の重い「酒酔い」運転による事故は減少している。
程度が軽い飲酒による事故は増加傾向にある。
女性の飲酒運転事故が増加している。
程度の重い飲酒ほど重大事故になる危険性が高い。
法令に定められた「基準以下」の飲酒でも重大事故になる危険性は「飲酒なし」の場合より高い。
飲酒運転事故を起こした運転者は、飲酒事故・違反の前歴がある者の割合が高い。
ひき逃げ事件での逃走動機の1位は「飲酒運転」で、全体の3割を占める。
交通事故総合分析センターに聞いてみると、1955-2000年に起きた死亡事故の加害者5万344人のうち、飲酒していたのは15.3%に上る。99年でみると、飲酒運転で人身事故を起こした17737人の中で、過去4年間に飲酒運転で摘発されたことがある人は2633人と、ほぼ7人に1人が「再犯」だった。(02/05/12付け読売新聞)
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文責:竹村道夫(初版:99/01)