施設長の独り言

  

 第57話 全国社会福祉施設経営者協議会浜松大会について

 
9月23日から24日まで全国社会福祉施設経営者協議会(以下略して『経営協』)大会で静岡県は富士市と浜松市に行ってきた。
  23日は朝からやや強い雨で新富士駅に着いたときも雨であった。富士川右岸にある大学時代の友人宅(ここは旧富士川町)を訪れ、ひとしきり話し込んだ後、母親(この母親は住民広場No1・33行目で触れた母親)が暮らしているという特別養護老人ホームに行くことになった。この母親は今はほとんど視力を失っているが、静岡県では少しは知れた詩人で反公害活動家で少し変わってはいるが、極ありふれた日本女性である。今は個室におり、今の暮らしに十分満足しているという。在宅での生活がだんだんと難しくなりこの特養ホームに入所することになったという。入所する前、どんな生活が待っているのか不安だったという。しかし、個室故好きなことができ、訪問者ともゆっくり話すことができ、食事もきちんとしたものが出てきて申し分ない生活を送ることができ、入所して良かったという。母親は「小林君のところも同じ?」と聞いてくるので、以前私の友人がこの母親に向かって「蘭もいいですけどスーやミキもいいですね」的な冗談とも本気とも付かないようなことは言えず、「エー同じです。」と嘘をついた。費用はいくらかかっているのか分からないと母子共に言うが、10万円は軽く超えていると思う。遺族共済年金受給者なので金銭的には何の問題ないのでいくらかかっているのか分からないのだろう。
  当施設と比べると、当施設はすべて多床室で費用は安いとはいえこの富士川町のホームとの差には愕然とさせられる。この差をほっといて良いのだろうか、という疑問を拭えなかった。
  この後静岡市を経由し浜松に着いた。静岡市、浜松市共に政令指定都市で両雄競い合う仲である。静岡市は私の出身大学、学部があった町なので土地勘もあるが、浜松市は数度訪れただけでほとんど馴染みが無い。静岡市は県庁所在地で消費都市文化都市の性格が強く、気候も温暖で市民は比較的のんびりしている。浜松市はホンダ、スズキ、ヤマハが生まれ最近では浜松ホトニクスなどの最先端企業も育っている工業都市の性格が強く、冬になると遠州の空っ風が吹き性格は比較的荒ぽい。
  初日は大会のプレセミナーとも言うべき性格の講演を聴く。経営協の下部組織に全国青年経営者会という組織があるが、この青年経営者会のOB・OGと現役会員とが懇親を深めるという目的で開かれたのがこのセミナーである。このセミナーで気に留めたことを書くことにする。
 ①絶対アプローチを目指していき、これが差別化になる。
 ②たとえば「変化に対応させる」と言ったところで明確に定義し具体的に展望を示さないと、職員一丸とはならないし経営の革新にはつながらない。職員一丸とは、同じ考えを共有し実行すること。
 ③昔は消費者(使ってなくす人)、今は生活者と言葉が変わった。生活する人の視点で考えないといけない。生活者は価値観が多様で好き嫌いが激しい。マーケテイングが難しい。
 ④お客のニーズは絶えず変化している。だから、絶えずニーズを把握し、それに対応しておかないとお客のニーズには適応できない。お客のニーズとは、ア)お客はなぜうちを選んだのか。イ)お客はなぜうちのサービスを選び続けるのか。という視点を忘れずに掴む
 ⑤「奥が深い」とは見えないところですばらしいことを行っていると言うこと。PDCAは見えるところの改善。見えないところのPDCAが必要。
 2日目、正確には大会初日である。高岡経営協会長の基調講演で気になるところを書いておく
 社会福祉法人をめぐる動きでア)公益法人制度改革の影響がどの程度あるのか見極める必要がある。イ)サービス供給主体が多様化する中で社会福祉法人の存在意義は?ウ)「内部留保」に対する各方面からの厳しい課題指摘にどう対応するのか?
 これらに対する対応として①良質な福祉サービスを行うこと②地域にある様々な生活課題、福祉課題に率先して取り組むこと③様々な面からの透明化、「見せる化」を図ること④職員を大切にし、魅力ある職場作りに努めること⑤公益法人にふさわしい経営を実践することを述べた。
 いずれにしろ様々なサービスを公益法人の最たる社会福祉法人に担わせる必要があるのかという議論は今に始まったことではない。最悪課税されても仕方ないと個人的には思っている。しかし、名称を社会福祉法人と名乗っている以上前述した①から⑤の対応策は実践しなければならないと思っている。

            平成24年10月26日  小林 直行




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