第58話 会計検査院検査を終えて

 
11月8日午後に会計検査院検査を終えた。これで群馬県、税務署、労働基準監督署を含めあらかたの行政官庁の現地検査を終えた。今回はこの4つの官庁の検査を比較しようと思う。私の独断と偏見で4つの官庁の検査をまとめてみた。

  群馬県  税務署  労働基準監督署  会計検査院 
 検査を受ける法的根拠 社会福祉法56条、70条
老人福祉法18条
介護保険法24条
国税通則法34条の6第3項  労働基準法101条
労働安全衛生法91条
 
会計検査院法22条 
 目的 上記法令に則って運営しているか 所得税等税金を法令どおり納めているか  労働者を法令どおり処遇しているか  国や地方公共団体からのお金をきちんと目的に沿って使っているか。 
 提出資料 A4版116枚
 決算書類
なし  なし A4版8枚 
 回数 原則年1回 随時 随時 随時
 検査官の人数 3名 2名  1名 1名他に群馬県役人3名
 検査内容 上記提出資料に基づき検査 会計元帳をすべて閲覧 雇用契約書、就業規則、賃金明細書、36協定、タイムカード、残業申請書、健康診断実施結果等に基づき検査 上記提出資料に基づき検査
 感想(一言で) 事前提出資料づくりが大変  所得税をごまかしているという先入観で検査されている  労働者保護のための検査  補助金の使い道に限って検査

  以上4つの官庁の検査を比較してみた。感想を詳しく述べてみたいと思う。
  当施設は社会福祉法人が運営している。社会福祉法人は、日本国憲法第25条2項で国に義務化されている社会福祉の向上及び増進を国に替わって行っている法人である。また同法89条に規定されている条文の逆解説で、公の支配に属して公金その他の公の財産を授受している。公の支配を受けているので群馬県の検査が一番多く多岐に渡るのも仕方ないことである。しかしながら事前提出書類の数が半端ではない。また、当日の検査も細部に渡る(詳しくは施設長の独り言群馬県検査を見て下さい)。当施設は群馬県が検査を担当しており、当施設を運営している社会福祉法人は本部が高崎市にあるが、検査は群馬県が担当し、法人が運営している保育園は高崎市が検査する。誠に複雑な検査態勢である。これは中核市(群馬県では前橋市と高崎市)にある法人や施設は中核市が検査し、中核市以外に所在する法人や施設は群馬県が検査する態勢になっている。また市町村をまたがる施設を運営している法人(当法人は高崎市と伊勢崎市において施設を運営している)は群馬県が検査するためである。平成25年度以降は群馬県の検査権限を市へ委譲し大幅に見直されるとのことである。
 税務署や労働基準監督署検査はどの企業も分け隔て無く受けており、会計検査院の検査は公金を補助金として受け取れば検査を受ける。
 税務署の検査は税金を法令通りに支払っているかを調べる。得た収入の使い道まで詮索はしない。群馬県の検査では使い道まで検査される。憲法に規定されている社会福祉の増進や向上のために使われているかを調べる。当施設は憲法25条に謳われている事業を行っているために法人税など法人諸税は課税されていない。給与や報酬を支払う際に徴収する所得税は源泉徴収義務者としてきちんと納税しているかを調べられる。検査当日は会計元帳を1枚1枚すべて調べられた。当施設でも過去に嘱託医報酬の所得税徴収漏れを指摘され延滞金を加算されて支払った経験がある。
 労働基準監督署の検査は労働基準法や労働安全衛生法に基づく検査のため労働者保護の性格が強い。給与を就業規則通り払っているか。健康診断は年1回行っているか。また夜勤を伴う労働者には半年に1回以上健康診断を行っているか。パート職員の雇用通知書はきちんとできているかなどなど。最近問題になっているのが残業手当の支払いである。払ってない場合は過去2年に遡って支払うよう命令がある。残業手当は普通は25%増しなので使用者側にすると大変な出費になる。今年検査を受けたのは、労働基準監督署内部で24年度は介護業界を集中的に検査することによるものらしい。様々な法人が運営する介護事業所が増えての措置らしい。
 今回あった会計検査院検査は、昨年度までの2年半にわたって国の財源を使った介護職員処遇改善交付金の使徒を把握するための検査であった。このお金を受給している事業所は、おそらく計算をパソコンでしていると思うがそのファイルの提出を求められた。至極当たり前の要求であると思った。これ以外に平成12年度以降の積立金と次期繰越収支差額の提出も求められた。社会福祉法人の内部留保が話題になっているが、これと関係するのかは定かではない。これら以外に平成5年度に当施設が建設された際の経費とその財源の内訳も提出を求められた。普通の法人ならば20年前の書類など廃棄してしまって無いと思うが、当法人は保存しておいたので記入することができた。
 公金を授受して事業を行うということはその使途をしっかりしておき、国会で決められた法律の趣旨に沿って法を守ることが肝要と思う。法の趣旨と行政執行との間で納得がいかない場合は行政不服審査や最後の手段として裁判所の判断を求めることもできる。

            平成24年12月27日  小林 直行




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