施設長の独り言

  

 第20話 群馬県による指導監査の報告

 6月15日に行われた群馬県施設監査課による指導監査の報告をしたいと思います。オンブズマン制度等の問題もありますが、当施設に関係したことを事実のまま述べたいと思います。自主点検表を監査課に提出し、これに基づき監査課の3人の職員は指導監査することになります。この自主点検表はA・B・C(AはできているBは一部できているCはできていない)の3段階で自己評価します。太字が監査課が示した自主点検項目です。
(特別養護老人ホーム)
1:人員基準@基本方針A人員に関する基準
   施設長、相談員、介護支援専門員、介護職員、看護職員、栄養士や医師が基準どおり配置され、加算の対象になっている場合は加算の基準を満たしているかを問う内容になっています。当施設の定員は長期60名ショート10名の計70名で、配置基準3:1を満たすためには介護職員21名看護職員3名の計24名がいれば良いことになりますが、平均介護度4.0の入居者への待遇を考えるとこれでは足りません。当施設では2.7名(常勤換算40時間×2.7=108時間)余分に配置し、更に午前4時間の清掃業務と入居者用の洗濯業務に午前5時間のパート職員を雇って入居者へのサービス向上にあたっています。職員を配置基準以上に雇ったからと言って介護報酬は増えません。また事務職員は配置基準には入っていません。ということは介護報酬には事務職員分は入っていないことになります。膨大な事務作業を誰が行うのでしょうか。当施設では2名の事務職員を置き、私は人事労務管理を一手に行っています。だから私が年末調整をしています。当施設規模では2.5人の事務員が必要になります。これ以外に税理士と社会保険労務士と顧問契約を結んで会計業務と社会労働保険業務を行っていただだいております。施設の収入(=介護度別の介護報酬×定員)は定額のままで、この収入の中で人件費や修理、備品購入、水光熱費等すべての経費を賄うことになるわけで決して経営は楽ではありません。いかにコストを削るか、職員が知恵を出し合って将来の改築費を貯めているのが現状です。

2:職員処遇@就業規則等の整備及び運用A秘密保持
            
B職員の状況C職員の健康管理D職員研修
            
E給与等
  これだけのことを監査されるのでから社会福祉法人はきちんと運営されています。顧問社労士の話では就業規則さえない会社はたくさんあるそうで、運転資金を確保するために社会保険に入れない会社もたくさんあるそうです。当施設全体の法定福利費は17年度で2480万円にもなります。このお金を運転資金に回せれば助かると思う経営者も多いと思います。Aの秘密保持とは業務上知り得た入居者や家族の秘密を漏らさない工夫をしているかということです。介護の仕事は様々なことを知り得る立場にあり、絶対に秘密を漏らしてはいけない。また職員一人一人の給与も群馬県に報告することになります。今は給与が高いとか安いとか指摘されることはなくなりましたが、就業規則どおり運営されているか問われます。

3:運営基準
 
(全般)@運営規程A定員の遵守B協力病院等C掲示
        
D秘密保持等E広告
        
F居宅介護支援事業者に対する利益供与等の禁止
       
 G会計の区分H記録の整備
    当施設の定員は60名です。60名を超えての入所はショートステイや入院等で定員を下回ることがある場合を除いて出来ません。入所を強く希望する家族も有りますが理解をお願いしているところです。

 
(処遇・看護)@内容及び手順の説明及び同意
             
A受給資格等の確認及び入退所の記録
            
 B要介護認定の申請に係る援助C入退所
             
D入所者等の状況E地域との連携
     現在各施設とも利用者と施設の間で契約を結びこの契約に基づき様々な介護サービスを行っています。この契約には利用者に対してどのような方法でどのような介護サービスを行うかを示した介護計画(ケアプラン)を示す必要があります。平均して6ヶ月ごとにこのケアプランを見直します。そして実際に行ったサービスをきちんと記録し、介護計画と記録を家族へ知らせています。見直すたびに利用者は重度かし、自力での食事摂取もままならなくなり、朝、夕の食事介助は人手不足で大変です。家族が来てくれると助かるのですが。面会に来てくれる家族は日々の状況がわかるので良いのですが、たまにしか来ない家族は、思っていた自分の親と現実に施設にいる親とのギャップに驚きます。

 
(介護・看護)@サービスの取り扱い方針
             Aサービスの提供記録B身体拘束
             Cサービスの質の評価
             D施設サービス計画の作成
             E短期入所施設サービス計画の作成
             F介護(全般・入浴・排泄)G相談及び援助
             H社会生活上の便宜の供与等I機能訓練
             J入所者の入院期間中の取り扱い
             K計画担当介護支援専門員の責務
             L衛生管理M苦情処理N事故発生時の対応
             O健康管理P嘱託医による医療Q看護の記録
             Rじょくそう(床づれ)対策S感染症対策
     
食事介助・排泄介助・入浴介助は三大介護といって施設での生活を維持するために最も必要な仕事です。三大介護をきちんと行なわないで、様々なサービスを行うと施設は崩壊します。ところが国は様々なことを要求しています。国は国民の声を代弁しますので国民が要求しているわけです。限られた職員と予算ですべてのことが出来るわけがありません。今は国が示す基準どおりにサービスを提供しなければなりませんが、今後は、施設が示すサービスと利用者が求めるサービスを突き合わせそれに基づく契約となると思います。

4:食事の提供 @食事の提供A栄養管理B食材の発注C衛生管理D検食E食中毒、研修F業務委託
   
当施設は日清医療食品という給食会社に調理を全面委託しています。施設の食事は健常者が思い描く食事と甚だ違っています。飲み込みが困難な人が多い。むせやすい人も多い。このような老人に若い人と同じ食事を出すわけには行きません。施設が直接行うより専門業者に任せる方が合理的であると私は思います。業者に任せることにアレルギーを持つ福祉関係者が多いです。直営だと利用者の声に迅速に細部まで対応でき、調理職員のやる気を出すことができるというのが委託アレルギーの理由です。委託だとこのようなことが出来ないのか。委託業者は給食のプロであり、出来ないはずがありません。感情的側面が強いようです。

5:設備基準 居室、静養室、浴室、洗面設備、便所・医務室、食堂、機能訓練室、消火設備等
  
設備基準は細部にわたって決められています。大勢の人が暮らしているのですから安全という視点からすればやむを得ないことだと思います。

6:預り金 @管理方法
   
利用者の負担(特養で5〜8万円位)がありますので、きちんとしたお金の管理をしないと問題になります。当施設ではすべてのサービスの利用料は振り込みとしています。お金に関しては性悪説を採って対応していますので、事務職員を除いて一切お金に関知させていません。

7:防災対策 @施設設備A防火管理B消防用設備C防災訓練D非常時の協力体制の整備E消防の立入検査
   
火災発生は、今年2月の長崎のグループホームの例のように悲惨な結果をもたらします。ですから日頃の訓練が重要になっています。当施設では、6月に通報訓練、12月に消火訓練、3月に地元の方々の協力を得て夜間想定の避難訓練を行っています。後は極力ゴミ等の燃え易いものを施設内外に置かないことです。

8:利用料 @利用料の受領A居住費・食費

   
当施設入居者の利用料負担は、4段階(利用者の収入によって負担段階を4つの段階に分けている)の内2と3段階がほとんどで、最も負担額が多い4段階の入居者はわずか1名であります。当施設の居住費は一日あたり320円、食費は1380円であります。17年度決算では、特養の食材料費が1030円、
調理人件費等が571円計1601円かかっています。ということは1日あたりかつ一人あたり221円の赤字であります。

9:介護給付費
  当施設の介護報酬加算は@重度化対応(+10円/一日あたり)A管理栄養士配置(+12円)B栄養マネジメント(+12円)C療養食(該当者のみ加算)D看取り介護(該当者のみ加算)です。

10:添付資料
 (1)職員の配置状況
 (2)給与等の状況
 (3)入所者の状況
 (4)施設平面図
 (5)直近1ヶ月の勤務割表
  (6)17年度決算書類 

(ケアハウス)
1:人員基準 2:職員処遇  3:処遇・看護  4:食事の提供  5:設備基準  6:預り金  7:防災対策

  当ケアハウスの定員は15名で、1部屋だけ夫婦部屋になっています。職員は2名です。ケアハウス入居者は自分で身の回りのことができることが条件になっていますので、介護度が出ている方は入居はできません。ですから2名の職員で運営できるわけです。時々入居したいといってくる方がおり、理由を聞くと病院から退所を求められているという人がいますが、特養と間違えているようなので良く説明し断っています。当施設に入居している方はすべて自分で身の回りのことが出来ますので、食事も健常な年寄りと同じで栄養管理されているメニューが用意されます。17年度決算では
食材料費は1日あたり921円調理費等は572円で計1493円です。ケアハウス1月の生活費(入居者が施設に支払う額)は42,490円でこの金額でケアハウスでの生活に係る施設のすべての経費を賄います。また施設では入居者のお金は預かっていなく、すべて自分で管理しています。

(通所介護、訪問介護、居宅介護支援)
  ほとんど今まで述べてきた内容と同じです。それぞれ自宅で生活している老人が対象ですので特養のように入所施設特有な厳しい基準はありません。法令や通達どおり運営されているかを自主点検することになります。ただ、自宅にいる老人はそれを取り巻く家族の要望が強く、いかに自宅での生活を続けさせることができるかが重要なポイントです。当施設ではそれぞれの部門が緊密な連絡を取ってできる限り自宅生活を継続させるようにしています。だからむやみやたらに自法人でのサービス提供を優先していません。
 通所介護(デイサービス)は1日あたりの
食材料費461円調理費等193円計654円です。当施設の利用者負担額は600円ですので54円を施設が負担しています。
 居宅介護支援事業で最も大変な添付資料は運営基準減算確認表であります。これは利用者ごとの氏名、契約年月日、要介護認定期間、ケアプランの新規作成及びその変更、サービス担当者会議の実施及びモニタリングの実施を一覧にしたもので、ケアマネージャーはまとめるのに苦労しました。当施設での監査が今年度初めてでケアマネの話を良く聞いていきました。
当施設の方法が標準であることを担当職員も自覚したようでありました。

 
  
      平成18年6月30日  小林 直行

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