施設長の独り言
第61話 2013参議院選挙を考える
2013年7月21日に実施された参議院選挙はマスコミ各社の予想通り自民党の圧勝で終わった。戦後3番目に低い投票率(52.61%)は何を物語っているのだろうか。かくいう私も最後まで行くか行くまいか悩み、投票所では誰に、どの政党に投票したものか悩んだ。
今回の選挙は争点がはっきりしなかった。消費税増税、TPP、将来の社会保障像等重要な課題が山積しているにもかかわらず、自民党は安倍首相が唱えるアベノミクス一本槍の戦術で、野党に一分の隙も与えぬまま猛暑による特需もあり勝利したのだと思う。消費税増税は自公民3党合意で与野党差が無い。TPPは、自・民ともに交渉に参加で差が無い。社会保障は、高齢者に対する負担増は戦術上得策ではないので封印。これでは選挙にならない。
私が迷ったのは今述べた課題に対し自分なりの判断がつかないからであった。消費税増税は必要だが、増えたお金は何に使われるのか。社会保障なのか、公共事業なのか、3%や5%増えたところで国の財政再建は解決されない(これらのことは56話消費税増税についてH24.8.31参照)。また低所得者に対する消費税対策が不十分である。TPP参加は自由貿易を国是としてきた日本のとって必要だと思うが、食の安全保障をどう考えていくのか全く見通しがつかない。社会保障制度の将来はどうなるのか。増え続ける高齢者の年金・医療・介護の給付と負担をどうするのか。選挙が終わった7月29日になって社会保障制度改革国民会議は、消費税増税を前提とし、一部の高所得層の自己負担増を打ち出した。
個人と経営者としての立場での間でも悩んだ。職員が70人を超え利用者も200人もいるとなれば、個人の立場は捨てなければならないと思う。職員や利用者を見捨てるような行動はとれない。施設の繁栄こそが絶対真理である。しかしながら長年育んできたポリシーもある。絶対多数の与党を牽制するためにも、議会制民主主義が正常に機能するためにも野党の存在は必要である。道路、鉄道や港湾など無駄な公共事業に税金が湯水のごとく使われ、国家予算とは関係ないことをいいことに、年金積立金が必要も無い保養所や会館建設に使われたことを私は忘れはしない。
今後3年間は国政選挙はないという。安倍首相も腰を据えて政策実現できる訳である。しかしながら、首相が何をやりたいのか良くわからない。憲法改正や集団的自衛権には熱心という印象を受ける。往往にして政治家は歴史に名を残すことを行いたがるという。安倍首相もそうなのか。今、必要なのは、高齢社会を迎えた日本のあるべき姿をあらゆる面で高齢社会向けに整えることだと思う。こちらの方が憲法改正よりはるかに歴史に名を残せると思う。高齢社会は、日本が先陣を行っており、先進国は言うに及ばずG20各国もこれから高齢化社会を迎え、日本のこれからを注目している。
思い切った政策が打てるのは、今でしょう。安倍首相は、国民的合意や議論が深まらない憲法改正や集団的自衛権にうつつを抜かさず、TPP、消費税、社会保障制度など差し迫った重要課題を高齢社会向けに大改革して、歴史に名を残し、各国の模範となるよう頑張って頂きたい、と同世代の一人として申し上げておきたい。