施設長の独り言

  

 第70話 介護技能実習生(インドネシア人)を採用

 

 
平成18年12月28日付けで「フィリピン人介護労働者受入について私見No2(本文にジャンプ)」を本欄で掲載してから、ようやく11年後の平成29年11月に外国人技能実習制度に介護が取り入れられた。筆者は早くから介護労働者の不足を想定し、外国人労働者動向に注意を払い情報収集に努めていた。筆者が所属する施設は平成6年にオープンし当時は新卒を多く採用することができたが、十分とまではいかなかった。オープンから今年度までの筆者の仕事は如何に介護職員を確保するかだった。こういったこともあり外国人労働者に関心を持つことになった。ただ、この時点では、外国人労働者は低賃金で雇える労働者と思っていたのも事実である。
 外国人労働者受入については経済連携協定(EPA)がある。EPAは、平成20年7月にインドネシア政府との間で交わした協定が発効した。同年8月にインドネシア人看護師候補者並びに介護福祉士候補者208名が入国し、翌年1月に看護師候補者が、2月に介護福祉士候補者が働き始めた。以後フィリピンやベトナムとの間でEPA協定が締結され、日本入国4年後または5年後に看護師や介護福祉士資格を取得し日本永住を認める内容であった。その後、平成29年度までに看護師候補者が1203名、介護福祉士候補者が3529名が日本にやってきた。しかし、合格率の低さや合格しても母国に帰ってしまうなどの問題が指摘されている。想定された内容にはほど遠いのが現状である。
 介護技能実習制度とEPAによる外国人労働者とは何が同じで、何が異なるのだろうか。下表は外務省や厚労省のHPに掲載されている内容をまとめたものである。
  目 的  期 間  備 考 
 EPA(介護福祉士) 人の移動を含む幅の
広い経済関係の強化 
5年以内に資格
取得。その後は
日本在住を許可 
1日本人と同等以上の待遇
2資格取得は雇用主の役目 
 介護技能実習制度 技能、技術又は知識の
開発途上国等への移転
を図り、開発途上国等
の経済発展を担う「人
づくり」に協力する
一生の間に1回
で最長5年 
1日本人と同等以上の待遇
2資格取得の必要は無い 

この表の目的を見てもわかるように、EPAは国と国との双方向の経済連携である。一方、介護技能実習制度は、先進国から発展途上国への一方通行の「人づくり」という名の経済援助なのである。技能実習制度で日本で働いた外国人が母国に戻り同じ仕事をしている率はかなり低いとも聞いている。日本語を生かし、通訳として働いているケースが多いことも知っている。通訳の賃金が高いことがその主な理由だという。確かに技術や知識の移転にはならないかもしれないが、日本語習得という技能で母国の経済発展に貢献している訳で当初の技能実習制度の目的を果たしているのかもしれない。
 当法人では、この夏インドネシアに採用面接に行き、2名のインドネシア人女性を採用した。採用枠は技能実習制度である。
    左の写真は、日本語学習風景と採用者のプロフィールである 

 当法人がなぜ技能実習制度の枠で外国人を採用したのか。大きな理由は労働者不足は構造的な問題(少子高齢社会)で今後改善する見込みがない。ならば外国人労働者に頼らざるを得ないであろうという判断である。また、技能実習制度枠を用いたのは介護福祉士資格取得の必要がないからである。当法人程度の規模では、介護福祉士資格を取得させる為の専任の指導者を置く余裕はない。未経験の介護職員を一人前にする文化を当施設は開設以来持っているので、外国人とはいえ十分対応が可能と判断した。その上、日本にやってくる介護技能実習生は、母国で看護大学を卒業し日本語試験N4に合格するべくインドネシアで日本語学習をしている、というのも大きな理由である。
 EPAにしろ技能実習制度にせよ外国人がわざわざ見知らぬ国に来るのは、経済的理由が大きい。面接でははっきりと「お金が欲しい」とは言わないが、もろもろの情報ではお金=賃金は避けては通れぬ問題である。上表備考欄に書いたように、EPAでも技能実習制度でも日本人と同等以上の待遇を求められる。ここをけちったりすると外国人労働者の逃亡だったり、雇用主に対する暴力とかの問題が発生する。
 技能実習制度では技能実習生への賃金や法定福利費、管理団体への支出金等で年間実習生1人あたり320万円程かかる。日本人を雇った方が良いと思われる読者もいるかと思う。もっと安い料金を提示してくる管理団体もあるかと思う。安かろう悪かろうの状況になる可能性もある。ここは雇用主の判断だと思う。
 要は外国人労働者に対し労働基準法等の法令を遵守し、きちんとした待遇を行い、一人の介護労働者として適切な指導を行い5年後には一人前の技能を持った介護労働者に育て母国へ送り返すことが大切である。

 


            
平成29年12月25日  小林 直行

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