中3道徳学習指導案

 

T 主題名 生命の尊重(内容項目3−(2))

  資料名 「たとえぼくに明日はなくとも」(読み物資料とその利用「主として自然や推敲なものとのかかわりに関すること」文部省刊

U 主題設定の理由

  1. ねらいとする価値について

 近頃ニュースなどでは、殺人や自殺といった自他の生命を軽視した事件があまりにも多い。物質的には実に便利になり豊かになった生活環境とは反対に、精神的には著しく貧しくなり、情緒が不安定になったり、気分や体力のおもむくままに行動して、自分の考えや価値観と違うものを排除したり、時にはかけがえのない生命を傷つけたりすることもある。
 中学生のこの時期は心身ともに著しく発達するが、同時に人間の生き方や考え方についての関心も高まる。このように、心身の変化の著しいこの時期に、かけがえのない自他の生命を尊重する精神を涵養していくことは、充実した人生を創造していく上で、意味深いことである。
 そこで、生命は親から子へと受け継がれていくものであるが、それぞれ、かけがえのないものであり他にかえることのできない存在であるという生命の尊厳に気付かせるとともに、やり直しのきかない一度だけの人生であることを認識させる必要がある。そして、このことの理解を深めることが自分の人生を大切にしていくことになり、自分の生命を支えている家族をはじめ周囲の人々に感謝の念をもつとともに、他の人やすべてのものへの生命の大切さを認識し、生きとし生けるものの生命の尊さの意義についても考えを広げていくことになると考える。すなわち、生命の尊さをもとに人間は有限な存在であるという自覚をもち、一日一日を精一杯生きることの大切さに気付かせることで、人間としてどう生きればいいのかについて自覚を深めさせるとともに、自他の生命を尊重する態度を身に付けさせていきたいと考える。

  1. 生徒の実態(省略)
  2. 内容項目の系統

 生命を尊重する態度を養うため、1年生では、自分の誕生に寄せられた両親や周囲の人々からの大きな愛情に気付かせ、生命の大切さを考えさせることを指導してきた。2年生では、生命の尊厳に対して正しく理解させ、かけがえのない自他の生命を尊重する心情を育ててきた。これを受けて、3年生では6月に関連として、「終わりのない旅に」で人間の弱さや醜さに気付き、それを克服しようと努力する意欲を高める指導をしてきた。本時ではさらに、生命の尊さをもとに人間はゆ有限な存在であるという自覚をもち、一日一日を精一杯生きることの大切さに気付かせることで、自他の生命を尊重する態度を育てたい。

  1. 資料について

 生徒の実態から、ねらいを達成するために本時で扱う資料を「たとえぼくに明日はなくとも」とした。この資料は、難病と闘いつつ、短い人生を燃焼しきった青年の話である。二十歳くらいまでの命だと宣告された青年が、その事実を事実としてしっかりと受け止め、残された時間を大切にし、その中から自分が人間としてどう生きていくか、幸福な生き方とはどういうことなのかを考えながら生きようとしている姿が、自作の詩をまじえて描かれている。
 この資料は、難病を背負って生まれてきた主人公・正一君が難病生活を耐えつつ、生きる喜びを見いだし、一日一日を精一杯に強く生き抜く内容となっている。本学級の生徒にとって、今のこの時期に本資料の主人公の生き方を通して、自己の生命のかけがえのなさと人間の存在の有限性に気付かせ、目標に向かって自らの人生を積極的に取り組むとともに、他者に向ける望ましい気持ちや態度を育てていくのにふさわしいと考える。

  1. 事前・事後の指導

V 指導方針及び留意点

  1. 資料が長文のため、生徒の実態を考慮し、2時間扱いとする。指導計画は次の通りである。

過 程

時 間

ね  ら  い

主 な 学 習 内 容

   第 一 次

 1

資料内容を把握し、道徳的価値追求の基盤をつくる。

資料を読み、初読の感想をもとに主人公の生き方について自分なりの考えをもつ。

   第二次(本時)

 1

生命を大切にする心情を深め自己の人生を精一杯生きようとする態度を育てる。

精一杯生きようと決めたときの主人公の気持ちを考え、それらをもとに最も大切なものは何かについて考える。

 

  1. 第一次の段階では、資料を読み、特に心に残った点を中心に初読の感想を書き、発表させていく。この段階において以下のようなことに留意したい。

○書かせる場面では、次のように学習を進めたい。

○発表させる場面では、次のように学習を進めたい。

  1. 生徒一人一人を主人公の立場に立たせ、主人公の気持ちを考えさせ、プリントに表現させる。深く考え自分の意見を決定させていくために、発問を明確にし、考える時間を十分とりたい。
  2. 第二次の段階にあたる本時では、前時に出された感想をもとに、「たとえぼくに明日という日がなくても、ぼくは生きようと思ったとき、ぼくはどんな気持ちでそう決心したのだろう」という課題を提示し、追求を深めさせたい。
  3. 課題の追求にあたっては、まず形式的には個別ですすめ、資料を参照させることなどを通して、一人一人の生徒に「主人公が決心したときの気持ち」についての考えをもたせたい。
  4. 課題の追求を深めるために、次のように学習を進めたい。

W 本時の学習(第二次)

  1. ねらい

  他の何物にもかえることのできない生命を大切にする心情を深めさせ、自己の人生を精一杯に生きようとする態度 を育てる。

2.準 備  読み物資料プリント、生徒発言の掲示用カード、前時の意見をまとめた掲示用模造紙

3.展 開

 

学習活動と主な発問

予想される生徒の反応

指導上の留意点

 

 

 

 

 

 

 

  • 前時に出し合った初読の感想をふりかえり、本時の学習内容を確認する。

 

 

 

 

 

 

  • 前時の発表内容について二つの観点からふりかえる。

〈主人公に感動意見〉

  • 一生懸命生きようとしているの が偉い。
  • 治らない病気と知りながらもよく頑張った。
  • 短い人生でも、命を大切にしている。
  • 館野さんとの出会いが正一君を変えたのだと思う。

〈自分との比較意見〉

  • 自分が不治の病だと知ったら普通ではいられないと思うが正一君は乗り越えて立派だ。
  • 正一君は短い人生でも精一杯生きようとしているのに、自分は毎日を大切にしていない。

·  前時に出された初読の感想を〈主人公に感動意見〉〈自分との比較意見〉の二つの観点からまとめたものを掲示し、本時の課題追求の基盤にさせる。

·  主人公に感動意見からは命の大切さやその有限性、自分との比較意見からは困難を乗り越えることの大切さや一日一日を精一杯生きることの大切さを意識させたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

  • 課題:主人公が大切にした気持ちについて考える。「ぼくは生きようと思ったとき、正一君はどんな気持ちでそう決心したのだろうか」

 

 

 

 

 

25

  • 主人公の気持ちについて考える
  • たとえ、あと少ししか生きられなくても一日一日を大切にしなくてはいけないことに気付いたのだと思う。
  • 今自分がやらなければならないことを見つけられたのだと思う
  • 短くても命は大切にしなければいけないと感じた。
  • 館野さんの生き方に感動したのだと思う。

·  一人一人を主人公の立場に立たせ、正一君の気持ちを探らせる。

·  一人一人の生徒が自分なりの考えをもち、記入できるまで考える時間を与え待ちたい。

·  なかなか記入できない生徒には個別に主人公の気持ちの変化に着目させるなどの支援をしたい。

·  発表の場面では、できるだけ多くの意見が出るように雰囲気づくりを心がける。

·  話し合いが深まるよう他の意見の感想等も交えて発表させたい。

·  多様な意見が出るよう教師からの意図的な指名も行いたい。

  • 主人公が最も大切にしてきた気持ちを考える。「みんなが考えてきた正一君の気持ちで、どれにも共通して言える大切なことは、どんなことだろう」

 

 

 

15

  • 最も大切なことについて考える。
  • 命を大切にすること。
  • 一日一日を大切にすること。
  • 今やらなければならないことに全力で取り組む。
  • 他人の素晴らしいところに素直に感動できる心をもつこと。

·  発表された内容をもとに考えさせていきたい。そして、発表させた内容に共通して言えることに目を向けさせ、「他の何物にも代え難い」「生命を尊重することがすべての前提になる」「生きている時間が長い短いではなく、一日一日をどう生きるか」等の大切さに気付かせていきたい。

 

 

 

  • 命の大切さについて考える。

 

 

 

 

  • 出された意見について振り返る。

 

  • 説話的な終末にならないよう配慮し、生徒から出された意見の中から重要だと思われる部分、特に生命の尊さと有限性、困難を乗り越えることの大切さ、一日一日を精一杯生きることの大切さ等の意見について振り返らせる。
  • 教師は不足と思われる内容の補足のみを心がけ、生徒から出された意見を共感的に受け止めさせ、個々の考えを大切にしつつ余韻をもたせてまとめにしたい。

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