中3道徳学習指導案

T 主題名 心の弱さの克服(内容項目3−(3))

  資料名 「終わりのない旅に」(読み物資料とその活用「主として自然や崇高なものとのかかわりに関すること」文部省)

U 考 察

  1. 主題設定の理由

  @ 学習指導要領における位置

 この主題は、学習指導要領における第3章「道徳」、第2の「内容」の3「主として自然や崇高な物との関わりに関すること」の(3)「人間には弱さや醜さもあるが、それを克服する強さや気高さがあることを信じて、人間として生きることに喜びを見いだすように努める」ことを指導内容として設定したものである。

  A ねらいとする価値

 人は皆、自分自身の心の弱さや醜さから目をそむけ、そこから逃げてしまいたいと感じることがある。しかし、そんな自分を素直に受け入れ、弱さやいたらなさの中から向上しようと努めることが大切である。つまり、ありのままの人間の姿を率直に受け入れ、弱さやいたらなさの中から向上しようと努めることが大切である。つまり、ありのままの人間の姿を率直に認め、人間に対する共感的理解や人生をあたたかい態度でいとおしんでいくことを通して、人間の中にある強さや気高さに目を開かせることが重要である。
 しかし、中学生のこの時期は、困難を克服する強さや気高さをもつことの大切さを知るとともに、同じ人間が内に弱さや醜さを併せもっていることに気付き、悩み、そんな自分に自信がもてず内向的になってしまうことも少なくない。
 そこで人間とは、誰もが弱さや醜さをもち、悩み、それを克服しようと生きる存在であることに気付かせていきたいものである。すなわち、他の人間も自分と同じように、弱さや醜さを乗り越えて強く生きようとしていることを知るときに、人間としての誇りや深い人間愛が生まれ、崇高な人生をめざし、ともに人間として生きていくことに深い喜びを覚えるようになると考える。

  1. 主題の系統

 人間の気高さや生きる喜びを知り、人間の弱さを克服しようとする態度を養うために、1年生では、生きる喜びや人間のもつ弱さに気付かせ、2年生では、困難や生涯を乗り越えて、やり遂げようとする態度や意欲を育ててきた。これを受けて本時では、人間の弱さや醜さに気付き、それを克服しようと努力する意欲を高めたい。

  1. 生徒の実態(省略)
  2. 資料観

 生徒の実態から、ねらいを達成するために本時で扱う資料を「終わりのない旅に」とした。この資料は、不幸なできごとに苦しむ主人公の綾が、自分の心の弱さに負け、我が子同然のロンという犬を捨てる。主人を待つロンがテレビで放映され、綾は心を傷め、自分のとった行動を責めるのである。さらに、世間の目を恐れ償いのできない自分の弱さに嘆き、心が揺れる。しかし、綾は過去の過ちに気付き、弱さを乗り越え、ロンを捜す旅を続けるだけでなく、自己の人間としての生き方を深めようとする内容である。
 この資料では、ロンを迎えに行かなければと思いながらも、なかなか行けない主人公綾の心の迷いとそれを克服しようとする強さを共感的に理解させるとともに、綾が終わりのない旅を続ける姿を通して、自己を見つめ、人間としてよりよく生きようとすることの大切さを考えさせることができる。葛藤場面があり、生徒の活発な話し合いが期待させる資料である。

V 指導方針

  1. 資料は、前後半の二つに分けて提示することで、前半部分では主人公の心の迷いを中心に葛藤場面でより深く心を揺さぶり、後半部分では主人公のとる行動を感動的に受け止めさせたい。
  2. 資料の前半部分は、事前に配布し読ませておいて、特に心に残った点を中心に初読感想を書かせておくことで、自分の考えをもって本時に取り組ませたい。
  3. 「ロンを迎えに行かなければと思いながらも、なかなか行けないでいる綾さんのことをどう思いますか。」の投げかけに対する自分自身の考えを一人一人にもたせ、多くの生徒に発表させたい。このとき、ここでの意見を次の三つの観点から〈同情的〉〈批判的〉〈中間的〉な意見として分類することで、多様な考え方や感じ方があることに目を向けさせ、共感的に受け止めさせるとともに、葛藤場面を盛り上げ、活発な話し合いにさせたい。
    〈同情的〉の観点:生活のためにやむを得ない。または、名乗り出ることへのためらいが表れている意見。
    〈批判的〉の観点:単なる犬ではなく、ロンの存在を大きく考え、主人公の行動を批判的にとらえた意見。
    〈中間的〉の観点:ロンも仕事も主人公にとって、ともに大切なものであるという意見。
  4. 生徒一人一人を主人公の立場に立たせ、主人公の気持ちを考えさせ、プリントに表現させる。深く考え自分の意見を決定させていくために、発問を明確にし、考える時間を十分とりたい。
  5. 生徒が自分の考えを発表しやすい雰囲気をつくり、本音で話し合いができるよう心掛けるとともに、事前調査や日常の観察により、本音での発問に対する感じ方や考え方を予想し、計画的な指名をしたい。
  6. 主人公のとった行動に対して出された意見をもとに、「綾さんはこの後どんな行動をとるだろうか」について考えさせる。この場面でも、どちらか一方の意見で押し進めるのではなく、多様な考え方で意見を出させたい。
  7. 資料後半部分は、本時のまとめとして読んで聞かせる。この行動が本時の結論的であるかのような考え方にならないように配慮し、この資料の中で主人公が選んだ一つの方法として共感的に受け止めさせ、個々の出し合った意見を大切にしつつ、余韻を残したい。

W 本時の学習

  1. ねらい 自分の弱さに気付き、それを克服しようとする意欲を高める。
  2. 準 備 読み物資料プリント(前半・後半)、生徒の発言掲示用カード
  3. 展 開

 

学習活動と主な発問

予想される生徒の反応

指導上の留意点

 

  • 読み物資料「終わりのない旅に」の前半部分の音読を聞き、内容を把握する。

·  資料の音読を聞いて内容をつかむ。

 

5

  • 事前に資料後半部分を読ませ、心に残った点を中心に感想を書かせておく。
  • 音読では、抑揚をつけたり、間をとったりして、資料の内容をよく理解させ、話し合いの基盤にさせる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

○本時の中心発問の「ロンを迎えに行かなければ行けないと思いながらも、なかなか行けないでいる綾さんのことを、どう思いますか」について考えさせる。

  • プリントにまとめた内容を発表させる。

〈同情的〉意見

  • 生活が苦しくって自分のことで精一杯だった。
  • 迎えに行って白い目で見られるのはいやだった。
  • 自分の選んだ仕事を一生懸命できたのだから、多少の犠牲はしかたがない。

〈批判的〉意見

  • 子供同然だった犬を捨てるなんて。
  • 白い目で見られることを気にするなんてよくない。
  • ペットを捨てること自体許せない。

〈中間的〉意見

  • 自分が綾さんだったら、迷っていたと思う。
  • ロンは綾さんにとって子供同然だけど、この仕事は自分の夢である。

 

 

 

 

 

 

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  • 一人一人を主人公の立場に立たせ、自分なりの考えを記入させる。
  • 一人一人の生徒全員が自分なりの考えをもち、記入できるまで考える時間を与え、待ちたい。
  • なかなか記入できない生徒には、机間巡視にて主人公の気持ちについての記述部分を示し、参考にさせる等の支援をしたい。
  • 発表の場面では、できるだけ多くの意見が出るように、雰囲気づくりを心掛ける。
  • 生徒の意見は、発言カードに書き入れて黒板に掲示し、同情的、批判的、中間的な観点から分類する。
  • 話し合いが深まるように,自分と違う考えの意見についての質問等も出させたい。
  • 強い批判的な考えの生徒には、同情的な生徒の意見に触れさせたり、置かれた立場を理解させたりすることで、行動のみを判断するのではなく、人間の弱さを共感的にとらえさせたい。

○「綾さんはこの後、どんな行動をとるだろうか」について考えさせる。

  • 仕事をやめ、ロンをつれて帰り、貧しいながらも幸せに暮らす。
  • 源造さんが許してくれて、ロンと一緒に今の生活を続ける。
  • ロンを探しに行くがロンは死んでしまい綾の心の中で終わりのない旅を続ける。
  • 仕事をやめる決心でロンを捜しにいくが、見つからずに綾はロンを捜す旅に出る。
  • ロンのことは心残りだが、自分にとって生活することも大切であり、今の生活を続ける。
  • ロンのことはあきらめて幸せな生活を続ける。

 

 

 

 

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  • 今まで出された意見をもとに、綾さんがとるだろう行動について考えさせる。
  • ある一方の考え方で行動を一つに絞っていくというのではなく、この場面においても、「自分が綾さんだったら」を念頭において多様な意見を自由に出させたい。
  • 意見んが出尽くしたと思われるところで、「綾さんが最終的にどれか一つの行動に決断しなくてはならない」ことから「この中で、一番ふさわしいと思う行動はどれ」を投げかけ、さらに考えを深めさせたい。

 

  • 資料後半部分の音読を聞き、主人公の行動を共感的に受け止めさせ、自分の心の弱さの克服に向けて努力しようとする実践意欲に結びつけさせる。

·  資料の中でその後、綾のとった行動を知る。

 

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  • この行動が本時の結論的であるかのような考え方にならないように配慮し、この資料の中で、主人公が選んだ一つの方法として共感的に受け止めさせ、個々の出し合った意見を大切にしつつ、余韻をもたせてまとめにしたい。

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