中1道徳学習指導案

 

平成17年6月6日(月)

 

1 主題名 生命の尊さ(内容項目3−(2))

  資料名 「ぼくの名前」(信教「私たちの道」4年より)

      「たったひとつのたからもの−友達」編(明治生命CMより)

 

2 主題設定の理由

(1)ねらいとする価値

 中学生になると、次第に自我に目覚め、人生について思索し始める。人生最大の成長期を過ごす中学生にとって、生死の問題は遠い話かもしれない。遠い話ゆえに、自他の生命の尊さに気づかずにいる。この時期にかけがえのない自他の生命を尊重する態度を身につけるよう指導することは、極めて重要なことである。自らの生命の大切さを深く理解させるとともに、他の生命の尊厳さに気づかせることによって、これからの人生をよりよく生きようとする自覚を促したい。

 自分が存在するのは、自分の両親があり、その両親の祖父母があるからである。またその両親の祖父母が存在するのは、さらにその祖父母の親が存在するからである。このように、自分は過去から受け継がれてきた生命の中で存在している。また、今日までの自分が在るのは、両親のかけがいのない深い愛情により育てられてきたからである。このことに気付き、身近な人の死、ペットの死など、生徒が体験した身近な「死」を想起したときに自他の生命の尊さ、かけがえのなさを実感し、深く考える機会となる。かけがえのない自他の生命を尊重する心を育て、意義ある人生を送ることができるよう自覚を促すことである。

(2)生徒の実態

 最近の中学生は、生命軽視の風潮とあいまって、生命といういうものが、他のなにものによってもかえることができない尊いものである、という自覚が十分でない。たとえば、青少年の自殺の増加が社会問題となっているが、どのような理由があっても、自殺は、許されるべきことではない。本来、生を捨てて死を選ぶことは個人の権限を超えることなのである。

 道徳の授業「生と死」で実施した「命」ってどんなものですか、というアンケートでは、「一人にひとつしかない大切なもの・尊いもの」10名、「大切なもの」2名、「大切にしなければいけない、買えないもの」2名、「一番大事なもの」2名、「人が生きるのに大切なもの」2名、「生き物には必ずある大事なもの」2名、「なくなると戻ってこない、買えないもの」1名、「生き物一つひとつがもっている大切なもの」1名、「生きられるひとつだけのカギ」1名、「見えない」1名、「失ってしまったらすべてが終わる」1名、「わからない」1名という結果である。

 命の大事さの認識は持っていると思われる。よりレベルの高い指導が求められるが、楽しい授業づくりが大切である。同時に出来過ぎて頭でっかちになっていないか気がかりで、優等生的な回答に心の弱さも気になる。心情的に納得でき、実感を持ってとらえられる行動にまでつながる授業である。それには振り返りの場面のある追体験や体験を想起できる授業づくりが必要になってくる。

(3)資料について

 @「ぼくの名前」(信教「私たちの道」4年より)

 「ぼくの名前」は、小4向けの道徳教材である。しかし表現や内容は中学生用としても十分活用できると考えた。身近な虫と人間の命についての体験を想起できる格好の教材である。

 「健太」という自分の名前に込められている「健やかに生きてほしい」という多くの人たちの切なる思いや願いがあることに気づいてはっとした…それなのに自分は小さなトンボに対して「命」があると見ることができなかった。

 Aビデオ「たったひとつのたからもの−友達」編(明治生命CMより)

 主人公は埼玉県桶川市の会社員加藤正さん、浩美さん夫婦の長男秋雪ちゃんである。秋雪ちゃんは加藤夫妻の長男として、平成4年10月19日に誕生する。秋雪ちゃんは、心臓の奇形を伴うダウン症で「余命1年」と医師から告げられる。妻浩美さんは「この子との一瞬一瞬を形に残したい」と写真を撮り始める。買い物、病院、家族旅行などで撮りためた写真は1万枚以上になる。沢山の思い出を残して、秋雪ちゃんは平成11年1月息を引き取った。その11ヶ月後、息子の生きた証を伝えたい、と明治生命主催のフォトコンテストに送った写真が入賞した。この入賞作をもとに明治生命が制作したCMが今回の資料である。

 このCMは「家族愛」「人間愛」など人それぞれにある愛の形を、心あたたまる一瞬をとらえた様々なスナップ写真を通して表現しています。この資料は、奇形を伴うダウン症で「余命1年」と宣告された子と両親という特殊な親子関係ではあるが、生徒が自分を素直に振り返り、両親の愛情に気付かせるのに格好な資料である。しかし、今回この資料の扱い方を工夫し、生命尊重「内容項目3−(2)」の内容に発展させた。本時は生命尊重を主題材として扱うように展開を工夫する。生命尊重の心情を養うことである。

 

3 指導方針

(1)導入段階では、自分の名前の由来や家族の気持ちについて発表させ、自分の名前と家族との関係について振り返らせる。

(2)生徒の考えを深めかめる場面では、次のように学習を進めたい。

 @生徒一人一人が自分なりの考えをもつことが道徳的価値追求の基盤となるため、考える時間を十分保証したい。

 A時間の確保だけでは自分の考えをまとめられない生徒には、個別支援をおこない、自分の考えをまとめられるようにする。

 Bワークシートに自分の考えを記入することにより、普段の自分を振り返らせ、素直に記入できるようにする。

(3)発表させる場面では、自分の考えを紙に書いて黒板に貼ることにより、生徒全員の意見を吸い上げる。

(4)終末の段階では、教師が無理にまとめるのではなく、生徒それぞれの思いを余韻に残すように終わる。

(5)「たったひとつのたからもの」の本も紹介して、生徒の関心を高めることも効果的である。

 

4 事前・事後の指導

(1)事前指導

 @道徳授業「生と死」を実施した。

 A命に関するアンケート調査を実施した。

(2)事後指導

 @生徒一人一人のワークシートを添削する。

 A学級活動や帰りの会、日常の会話などの機会を通して、本時を振り返らせる。

 

5 人権教育との関わり

(1)いじめや差別について話し合い、それらを許さない態度を身につけさせる。

(2)他人の個性を認め、互いに協調しあいながら生活することの大切さを理解する。

(3)自らの役割を果たすことの大切さや、自他の権利を尊重することの大切さを理解する。

 

6 校内研修との関わり

 生命の尊重を学ぶなかで自他の権利を認め合い、互いに高め合う集団づくりをする。

 

7 本時の授業

(1)ねらい

 かけがえのない命の尊さを自覚し、人間として誇りを持って生きようとする意欲を高める。

(2)人権教育の視点

 身近な子どもの人権問題について考え、個性や違いを認め合い、互いに尊重し合う態度を身に付け、自分らしさを発揮できるようにする。

(3)準備

 プリント「ぼくの名前」、ビデオ「たったひとつのたからもの−友達」編、ワークシート

(4)展開


段階


  学習活動と主な発問


 予想される生徒の反応


時間


指導上の留意点



導入

 


○自分の名前の由来について知っていることを出し合う。
「自分の名前はどうやってつけてもらったのか知っていますか」


・自分の名前の由来や自分が生まれたときの様子、家族の気持ち等について発表する。
 




10

 


・事前に自分の名前の由来を調べておく。


 








展開






 


○資料「ぼくの名前」について、教師の範読を聞く。
○健太の気持ちについて話し合う。
「健太はなぜ、はっとしたのですか」
「健太は、小さなトンボに命があることを知らなかったのですか」
「同じような体験をしたことはありますか」
○命を大切にするためには、どのようことが必要なのでしょうか。
 


・「トンボと自分の命」「命の大切さ」「アスファルトに捨てられた小さなトンボ」
「無関心」「自分が気がつかなかった」等
・「小さなトンボに命があることは知っていた」「オニヤンマがほしかった」等
・「自分の名前に込められている健康に生きてほしい、という家族の切なる思いや願いがあることに気がついたが、小さなトンボの命の大切さに気づくことができなかった。」








35







 


・生徒にまず黙読させ、もし音読したい、という生徒がいたら読ませる。
・母親の話を聞いて健太の気持ちが変化したことに気づかせる。
・小さなトンボにも命があることは当然知ったのに投げ捨ててしまったことに着目させる。
・健太は自分の名前を通して、生命の可能性、かけがえのない命の尊さについて気づいたことを理解させる。




終末



 


○「たったひとつのたからもの−友達」編のビデオを視聴する。
「秋雪という名前の6歳で病気なくなった男の子のビデオです」

 


・感動した。
・かわいそう。
・絶対この子を死なせない。
・お願いだ、いつまでも長生きしておくれ。
・この子を失いたくない。
・秋雪が大好きなんだ。
 









 


・ビデオ視聴したらそのまま授業を終了する。





 

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