社会科学習指導案
社会科(公民) 平成19年6月13日(水)
1 単元名 人権と日本国憲法
2 考察
(1)教材観
@主な学習事項
社会科における人権学習は、「日本国憲法の基本的人権」を中心にして、人間の尊重の考え方を深めさせるとともに、民主主義の理解とその実現をめざしている。それは、人間尊重の考え方が「技能」「行動」として、「具体的な生活」の中に定着していくということを目指していることを意味している。
しかし、これまで行われてきた多くの人権に関する教育は、知識として教えることが中心となり、抽象的な規範意識の理解にとどまり、具体的な生活の中で、人間尊重の意識化、行動化へとなかなか結びつかない、ということが大きな課題となっている。
「人権教育のための国連10年」における「行動計画」では、これからの人権教育について「人権を抽象的な規範の表面」としてではなく、「自分たちの社会的・経済的・文化的政治的な生活現実の問題として捉えるような対話に学習を導くための手段や方法を探る」ことだとしている。つまり、「技能や知識を学習者に提供すると同時に、態度や行動に積極的に影響を与える」ことなのである。このことは、人権を守り差別を許さない「技能」「行動」として、具体的な生活の中に定着していくという意味での人権教育が重要であることを意味している。
本単元において、様々な人権に関する問題を、生徒自身が自己との関わりのある問題として捉え、その問題を「他者」と共有し合いながら吟味し、その中でこれまでの自分と違う自分を認め、新たな自分に気づく過程を通して、自らの生活を見直し、人権を尊重し民主的な社会の形成者としての自覚と態度を育成していけるものと考える。
A見方・考え方
ここで身につける見方・考え方は四つの観点から次のようになる。
・社会的事象への関心・意欲・態度
人間の尊重についての考え方と法に対する関心を高め、それらを意欲的に追究し、民主的な社会生活について考えられる。
・社会的な思考・判断
我が国の政治が憲法に基づいて行われていることの意義について多面的・多角的に考察し、民主的な社会生活の在り方について、人権問題を通して様々な考え方を踏まえ公正に判断できる。
・資料活用の技能・表現
人間の尊重についての考え方と人権に関する様々な資料を収集し、学習に役立つ情報を適切に選択して活用するとともに、追究し考察した過程を結果にまとめたり、説明したりできる。
・社会的事象についての知識・理解
人間尊重の考え方を基本的人権を中心に深めさせ、法の意義に着目させ、民主的な社会生活を営むためには、自他との人権を尊重する社会をめざし、法に基づく政治の大切さについて理解を深め、その知識を身につけることができる。また、日本国憲法が基本的人権の尊重、国民主権及び平和主義を基本原則としていること、天皇の地位と国事に関する行為について理解し、その知識を身につけられる。
また生徒の実態に応じて関心ある主題ごとに作業や発表の場を保障し、主体的な活動を仕組むことが、生徒一人ひとりの人権を学ぶ意欲に結びつくと考える。さらに、生徒に作業的な活動を通して、主題に対する自分なりの見方・考え方をノートに記入させ、四つの観点からその変容を評価の視点とする。
B学ぶ意欲
生徒一人ひとりが、人権問題を自己の問題として捉えられるためには、自分にとって身近な問題として認識を持つことができるものであるとともに、一人ひとりの心の中に人権意識を形成することができる学習が要求されてくるものと考える。
そこで本単元では、様々な基本的人権を生徒の生活との関わりから考えさせることにより、普段あまり意識していない基本的人権が自分の生活に欠かせない大切な権利であることを実感できるようにすることが大切である。また、生徒一人ひとりが自分なりの考えや問題意識を持って、自分の論拠をもとに、自ら主体的にグループで話し合い(他者と関わり)相互の考えを共有し、高め合い、互いの基本的人権を重視していこうとする姿勢が重要であると考えた。
そして、一人ひとりの生徒の普段の生活を振り返ったり、生徒の持っている自由な発想を重視した討議の中で、現代における人権に関する重要な課題について迫り、資料などを基に調べていくように計画した。さらに、人間尊重の考え方を直感的に感性を通して、一人ひとりの生徒の人権尊重の意欲と態度が育まれていけるものと考えた。現代の人権に関する重要課題について、学び合う中で、学ぶ意欲を高めるのである。
C主体的な学習
教師の示した教材を通して生徒がその単元の事象に興味・関心を抱き、資料を活用して、生徒自らが考え意思を持ったとき、初めて「基礎・基本」が定着したといえる。「基礎・基本」が定着すると、生徒自ら新たな疑問を持ち、さらに知ろうとする意欲が湧いてくる。
課題解決的な学習の学習過程は、学習目標の提示→学習目標の把握→仮説(結果の予想)→計画→追究→解決である。進める際のポイントは、学習内容「基礎・基本」を提示し、確実にそれを押さえる→生徒に疑問(仮説)を起こさせるよう、意図的に仕組む→生徒自ら調べ、考える時間を保障する→生徒の追究(調査)過程や結論・意思を尊重し、評価してやる→評価からもっと調べようという興味・関心を喚起させる→生徒に学習内容の「基礎・基本」を再確認させる。以上の手順を踏み、繰り返すことによって「基礎・基本」が定着し、主体的な学習や発展的な学習が図られる。
(2)教材の系統
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第2学年 |
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開国と近代日本の歩み |
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現代社会の日本と世界 |
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第3学年 |
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人間尊重と日本国憲法 |
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(3)生徒の実態
@学習事項に関する実態
<一部省略>人権や憲法の学習への取り組みは真面目であるが、積極的に発言できない等、自信を持って活動できない場面も多い。調査等の学習の取り組みももう一歩である。特別に支援の必要な生徒が数名いる。
授業における観察やアンケートの事前調査「人権とは」の質問の回答は、「生まれながらの持っている権利」1名、「差別・いじめ」7名、「憲法」1名、「基本的人権の尊重」3名、「部落差別」1名、「自由」2名、「わからない」10名である。
「憲法」では、「国」3名、「きまり」5名、「日本国憲法」3名、「三つの原理」2名、「国会・政治」1名、「わからない・むずかしい・無回答」11名である。この結果からわかることは、既習の学習内容があることや用語としては知ってる生徒もいるので、それを生かして具体的な日常生活の中で人権尊重の意識と態度を育てることである。
A見方・考え方に関する実態
四つの観点からの実態は次のようになる。
・社会的事象への関心・意欲・態度
全体的には社会的事象への関心は薄いが、授業にまじめに取り組んでいる。「北朝鮮」「年金問題」など単発的な社会事象の情報に関心を持っている生徒が数名いる。
・社会的な思考・判断
「人権」等の問題にまじめに考えることができるが、客観的に考察し、判断できる場面は少ない。
・資料活用の技能・表現
グループで協力して学習することができるが発言が一部のものに限られる傾向にある。資料活用に特別に支援の必要な生徒が数名いる。
・社会的事象についての知識・理解
社会科は覚えることが多く、ややこしいことばかりなので、好きではないと思い込んでいるために、さまざまな社会的事象を知識として獲得できなかったり、確実に理解しなかったりすることもある。
このような実態を踏まえたとき、人権尊重の教育は、生徒の関わりのある現実の生活の中から、自由・権利と責任・平等・義務の意味や関係を関連づけた学習課題の提示し、生徒自身が自ら「法」の意義を探究し、互いの基本的人権を尊重していこうとする態度を育める学習過程の工夫が必要となる。
B学ぶ意欲に関する実態
社会科は好き、と答える生徒5名、嫌い4名である。公民は好き4名、嫌い4名という結果である。生徒の多くは、自分や仲の良い友達の権利の主張には、とても積極的である。しかし、法(きまり)に対しては、誰か(他者)がつくり、与えられているものという消極的なイメージを持っている。また、法(きまり)は煩わしいものという考えを抱いている者も多い。法(きまり)によって自分たちの人権を守っている、というような考えを持っている生徒は少ない。このような状況から、生徒の規範意識は希薄であるといえる。
C主体的な活動に関する実態
課題学習で調べてまとめるなどの作業はお互いに協力してよくできる。特に発表では各グループで工夫して取り組むことができた。課題解決的な学習において、様々な資料から問題を考え出す思考力は不十分であるが、グループ活動にするとお互いの意見を様々な角度から見られ、自分の考えを修正しながら発展的な意見交換ができ、一斉授業ではなかなか見られない生き生きとした表情で学習に取り組める
資料の活用では、多面的な見方から資料選択して解決していくとき、自分の視点で解決のポイントをおさえるこが意識できるようになった。前単元「現代社会とわたしたちの生活」では、「現在の日本生活に大きく影響した戦後のできごとやものは何か」というテーマで課題学習をしている。
(4)学習指導と支援の方針
@本単元は、「人権とは何か」「憲法とは何か」など具体的な生活からとらえることのできる課題を設定し、追究することが容易であり、課題解決学習なに適している。課題解決学習を進めていくため学習過程を考え、支援の方法をさぐっていく。それぞれ学習段階で学習の進め方がわかり、課題解決に見通しをもって合理的な課題追究が行えるようにする。
A学習過程での支援の方法
・導入部では、生徒たちの興味や関心が持てるように、身近な資料や写真資料などに触れる機会を多く持たせる。イラストの教材を使って生徒たちに興味を喚起し、「ちがいのちがい」「2頭のロバ」などを行って意欲付けを図る。
・「課題設定」の段階では、基本的人権を考えさせるために、身近な生活に結び付けて具体的な社会事象に着目させて学習を進められるようにする。「人権とは何だろう」で興味・関心に応じた社会的事象について考え、話し合わせるようにする。
・人間尊重についての考え方や基本的人権を学習していく上で、グループ学習を取り入れて具体的な事象資料から話し合い活動を中心に学習を展開する事により、学習課題が明確になり、一人ひとりの学習が主体的に進めらるとともにグループ内相互の活動も活発になると考えられる。
・「仮説」の段階では、課題をつかんで学習を進められるように、ワークシートやプリントなどを活用する。「人権」や「憲法」の定義を考える。
・「課題追究1」の段階では、各自が主体的に物事をとらえ、思考できる力を培えるように、一人ひとりに自分の考えを持つことのできる時間を保障するとともに、次にグループ活動を行いながらお互いの意見交換を大切にする場を設定する。
・「課題解決1」の段階では、基礎的・基本的な理解ができるよう「ダイヤモンドランキング」で話し合い、学習ワークシートを活用して考えがまとめられるように支援する。
・「課題追究2」の段階では、資料の読み取りなど作業的・体験的な学習を多く取り入れる。資料選択の時に、引用する場合はそのまま写すのではなく、その資料を選択した理由を記述することを助言する等、解決するために必要な理由としてまとめられるよう支援していく。
・「課題解決2」の段階では、まとめや発表において、各班内で協力して行えるようワークシートを工夫し、また各班でお互いの考えを認め、自分たちが調べた視点以外から課題解決の共有化を図るとともに、より追究を深めるきっかけにしたい。
(5)人権教育との関わり
課題「あなたは大統領」から権利が侵されている例を日常生活から見つけ出し、社会的的な弱者の立場を考えることで主体的に改善・克服の方法を考える態度を持つ、という本質的に人権を学ぶ意欲となる。
(6)校内研修との関わり
主題「意欲をもって進んで学習する生徒の育成」〜学習過程の工夫を通して〜
@学習目標把握…「人権と日本国憲法」をとらえる。
A学習課題設定(仮説)…課題「人権(憲法)とは何だろう」を設定し、結果を予想する。
B課題追究1…自分が追究した課題に対して、解決した内容をもたせる。
C課題追究2…自分の内容と友達の内容を比較したり、モデルとしたりして新たな視点を見いだす。
3 目標
人間の尊重についての考え方を基本的人権を中心に理解させるとともに、日本国憲法の基本原理を具体的な生活とのかかわりでとらえさせる。
4 評価規準
(1)社会的事象への関心・意欲・態度
身近にある基本的人権に関する問題を人権尊重の考え方から取り上げ、日本国憲法との関わりについて調べようとしている。
(2)社会的な思考・判断
社会の発展にともなう新しい人権問題や、その他の基本的人権にかかわる問題が解決されていく過程を、日本国憲法をもとに多面的・多角的に考察している。
(3)資料活用の技能・表現
人間の尊重についての考え方と日本国憲法をはじめとした方に関する資料を、さまざまな情報手段を活用して収集している。
(4)社会的事象についての知識・理解
日本国憲法の基本原理、天皇の地位や国事に関する行為などの内容について理解し、その知識を身につけている。
5 指導計画(5時間予定)
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1 ・ 解決 1 |
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2 ・ 解決 2 |
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と め |
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6 本時の学習
(1)目標
社会のなかで差別されている人々、弱い立場にある人々に気づき、基本的人権がなぜ尊重されなければならないのかを考え、人権の保障について理解する。
(2)準備
教科書「新しい社会 公民」東京書籍、資料集、用語集、ノート、ワークシート(プリント)、画用紙、マジック、セロテープ
(3)展開
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・「ホワイトハウスの門の前で色々な人が待っています。どんな人たちが大統領に面会を求めていますか」 |
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・班長が進行し、進める。 |
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3 |
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と め |
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