共に生きていこうとする態度を育む総合学習

〜ひと、自然、暮らしへの主体的なかかわりを通して〜

これは私たち独自の研究ではありません。先進校の資料をもとに一例として考えてみました。

T はじめに

 21世紀を生きる子供たちには、どのような力を育む必要があるのでしょうか。私たち人類が人間らしく生きていくためには、人  と人との絆を大切にするとともに、多の生き物や自然との共存が不可欠です。そこで私たちは、これからの時代を生きていく子供たちに次のような資質や能力を育てたいと考えます。

○身近な暮らしや社会にかかわる問題を地球的な視野にたってとらえる力。(かかわり合う力、多面的な見方や考え方、統合力)
○未来を構想するなかで、目標や課題を自分自身で設定し、価値あるものを追求していける力。(判断力、自己決定力、持続力)
○自他の存在を認め、共に高め合おうとする力。(自己効力感、合意形成力)

 これらのすべてのベースとなるものは「自己決定できる力」であり、目指すものは、ひと、生き物、自然と共存していく主体的な生き方を身に付けさせることです。

U 基本構想

  上記の目標を達成するため、総合的な学習として、次の2つの学習の場を構想しました。

 

自己発見セミナー

プロジェクト「ゆめ未来」

   ねらい

 家庭、学校、、地域社会での啓発的な体験活動について、企画・実践・評価活動を自分たちの手で行うことを通して、自己効力感をもつとともに、判断力や自己決定力を身に付ける。

 人が人として尊重され、生き生きと生活していくためには、ひと、自然、暮らしとどのようにかかわっていけばよいかを追求していくことを通して、よりよい未来を構想しながらともに高め合っていこうとする能力や態度を身に付ける。

配当時間

各学年35時間

各学年35時間

体験活動及び、
他教科等との連携

・学級活動における進路指導
・学校行事(旅行的行事、少年の主張等)
・生徒会活動(部活紹介等)

・各教科、道徳
・学校行事(校内文化祭、人権学習、福祉施設訪問等)
・生徒会活動(廃品回収、アルミ缶回収、高齢者訪問等)

 

V 基本的な学習過程

 総合的な学習では、生徒自身が課題を設定し、自分なりの方法でその課題を解決していく根気強い研究活動を仕組むことが重要です。しかし、現状では、その趣旨が生徒たちに十分には理解されず、「言いっぱなし、やりっぱなし」というように、活動することだけが目的になってしまい、結果として質の高い研究活動になっていかない危険性をもっているように思われます。
 そこで、総合的な学習を実施するにあたって、次のような基本的な学習過程(活動過程)を仕組んでいきたいと考えています。

活動過程

課題追求T

課題追求U

 

  主な活動

○より高い課題追求を目指すための基礎づくり。
○趣旨の理解(ガイダンス)
○共通の体験活動(プレ活動)から課題を広げてい
く活動。
○既習経験を出し合うことから問題点を掘り起こ
 す活動。

○目標に向かい自ら課題を設定し追求していく活動
○個人やグループで追求してきた課題や解決方法を
 交流し合い、さらに質の高い課題に挑戦していく
 活動。


  学習の場

○各教科、道徳、学級活動の時間
○総合学習の時間

○総合学習の時間
○学校行事等(実践化)
○地域での活動

 

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W 実践化に向けての具体的な構想

  自己発見セミナー(課題追求U)

1   年

2   年

3   年

      体験入部活動
 体験入部活動を通して自分に合った部
活動を決定していく。
・部活紹介(1)
・体験活動(2)

               体験入部活動
 新入生への部活動紹介や体験入部活動の企画・運営を通して、自分の所属する部
活動や自分のよさを再発見していく。
・部活紹介(1)
・体験活動(2)

      親子逆転活動
 保護者が学校で学び生徒が家庭で家事
を行う活動を通して、社会生活の最小単
位である家庭の一員としての自己の在り
方を見直す。
・計 画(4)
・実 施(2)
・まとめ(4)

      職場体験学習
 体験活動を通して職業に対して新しい
見方や深まった考え方ができる。
・計 画(4)
・実 施(夏休み)
・まとめ(4)

      上級学校訪問
 上級学校を訪問する活動を通して自分
の希望する学校で学ぶ意義を再確認する
・計 画(4)
・実 施(夏休み)
・まとめ(4)

                         自己発見の旅

 自己のテーマを決めて計画・実施・まとめの活動を行うことを通して、今まで見えなかった自分や新たな自己を発見していく。まとめとしては、自己のテーマにそって紀行文を作成する。

    自己発見 in 東京
・計 画(5)
・実 施(実践)
・まとめ(5)

   自己発見 in 榛名
・計 画(5)
・実 施(実践)
・まとめ(5)
   自己発見 in 京都
・計 画(4)

   自己発見 in 京都
・計 画(4)
・実 施(実践)
・まとめ(4)

     働く人に学ぶ会
 父母や身近な人の働く姿を通して、生
き方を学ぶ。
・計 画(2)
・実 施(2)
・まとめ(2)

 

     自分史をつづる
 自分が誕生してからこれまでの画像や
文でつづる活動を通して、自己の生き方
を見つめる。一部を卒業文集へ。
・編 集(10)

                     地域活動への参加(全学年共通)
 自分の興味のもてる地域行事を選択し、その行事へのかかわりを考えることを通して、地域社会の一員としての自己の在り方を見つめる。地域の道路愛護、地域の祭り、ボランティアなど
・計 画(3) ・実 施(随時) ・まとめ(3)

 

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  プロジェクト「ゆめ未来」              

 課題把握・課題追求Tの学習内容として、次のような項目をとりあげ考えさせていくことが、以下に続く課題設定・課題追求Uにおいて、自ら課題を設定し意欲をもって追求していく学習へつながっていくと考える。

【課題追求T】
 @家庭で実践しているリサイクル活動
 A話し合い活動……リサイクルは本当に必要なのか。
 B話し合い活動……リサイクルの壁はどこにあるのか。

【課題追求U】
 個別テーマ1  
「ゴミのゆくえ……リサイクルの可能性にかける」
 個別テーマ2  
「水の旅……浄化のメカニズムを追う」
 個別テーマ3  
「残飯が大地を潤す」
 個別テーマ4  
「再生紙に未来を託す」
 個別テーマ5  
「吾妻川……死のよどみから生の川へ」

【課題追求T】
 @ブラインドウォークなどの共通の体験活動
 A人が人として生きていく上で障害となるもの(バリア)を考える活動
 B障害者にとってのバリアとは何かを話し合う活動

【課題追求U】
 個別テーマ1  
「日常生活の中のバリアフリー」
 個別テーマ2  
「住空間にバリアフリーを生かす」
 個別テーマ3  
「高齢者にとってのバリアフリー」
 個別テーマ4  
「いじめをなくす心のバリアフリー」

【課題追求T】
 1,2年時の積み重ねにより、課題を設定する力は身に付いているものと考えたい。実態に応じて補充。

【課題追求U】
 プロジェクト1  
「高齢化への対応」
 プロジェクト2  
「福祉と健康の町をめざして」
 プロジェクト3  
「吾妻町と世界を結ぶスイセンの花」
 プロジェクト4  「文化の香りを大切にする町づくり」
 プロジェクト5  
「省エネルギー・省資源に配慮した暮らし」

 

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 ☆ 踏襲の場としての「文化祭」

X おわりに

 総合的な学習の時間が、その本来のねらいを達成していくためには、課題追求Uで生徒自身の発想による課題設定や課題追求がなされなければなりません。そのためには、課題追求Tで「共生」を考えていく上で必要となる基本的な物の見方や考え方を培っておく必要があります。今後の課題として、課題追求Uで生徒がどのような考え方や発想をするところまで高めていきたいかを考え、そのために課題追求Tでどのような授業を仕組んでいったらよいか、また、他教科や分野との関連についても研修を深めていきたいと考えています。

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