社会科学習指導案

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T 単元名 第二次世界大戦(太平洋戦争)

U 単元の考察

○教材観

  1. 主な学習事項

 明治維新以後、日本政府の対外政策は一貫して「富国強兵」をとり、アジアの帝国主義国家として、満州事変・日中戦争などの中国侵略をおしすすめた。その間、世界恐慌の影響で混乱した経済を立て直すため、政府や軍部はファシズム政策を展開した。昭和の歴代内閣は軍部をコントロールできず、侵略戦争は泥沼化していった。戦争反対の声は治安維持法や特高警察によりかき消され、多くの国民は正確な情報も得られず、政府の方針に従っていった。当時の複雑な国際情勢の下で、「日本政府」は、「太平洋戦争」を回避するような協調的な政策はとり得なかったか?今でもこの問題の解答は出ていない。この問題を正面から取り組んで議論することは、中学校の歴史学習にとっても意義深いと考える。キーワードは「太平洋戦争」と「日本政府」である。
 本単元の主な学習内容は次の通りである。先発の帝国主義国家と後発の帝国主義国家が、第一次世界大戦後に、民主主義とファシズム国家に二分されていくのはなぜかを考えさせたい。そして、第二次世界大戦後は、ファシズムに反対する戦争であったことを理解させたい。このような枠組みの中で、日本のアジア諸国への侵略と、アジア諸国民の日本に対する抵抗、ヨーロッパ諸民族のファシズムに対する戦いについて理解させる。その中で特に、太平洋戦争を単なる歴史的事項としてこれを学習させるのではなく、その原因や背景を当時の国際情勢や日本の国情から検証することは、生徒の歴史的事象に対する関心・意欲・態度を高め、思考力・判断力や資料活用の技能表現を培う上で効果的と考える。これらをもとに学習を進めれば、そこから現代日本の問題点や展望が開けてくる、という歴史学習の醍醐味も味わえる単元である。

  1. 見方・考え方

 「大日本帝国(明治)憲法制定に自由民権派の意見は反映された」という論題でディベートの学習を行った。生徒は、これらの既習事項から「帝国憲法制定」によって日本の近代化の基礎が築かれるとともに、日本(新政府)の進方向が決まっていく、というような見方・考え方をすることができている。また、「帝国憲法制定」から新政府のねらいを知ることで、より明確に近代日本の歴史的な意味や重要性を理解している。近代日本の確立過程への興味・関心や資料活用による調査で得た知識・理解、また資料活用能力そのものを生かし、既習事項の学習を発展させたい。
 本単元は、「太平洋戦争は、日本政府にとって避けることのできた戦争だった。」という論題でディベートを行い、太平洋戦争の原因や背景を多目的(肯定・否定の両方の立場から)に考察させる。ここで、身につける見方・考え方は四つの観点から次のようになる。

 学級の実態に応じて役割ごとに発言の場を保障し、自己表現活動を仕組むことが、生徒一人一人の主体的な学習態度に結びつくと考える。さらに、生徒にディベートマッチを通して、論題に対する自分なりの見方・考え方をワークシートに記入させ、その変容を評価の視点としたい。

 ○教材の系統(省略)

 ○生徒の実態(省略)

V 学習指導と支援の方針

  1. 導入部では、生徒たちの興味や関心に訴えるように、ビデオの視聴覚教材を使って生徒たちに興味を喚起させて。共通課題を全体で考えていけるように意欲づけを図る。
  2. 課題解決的な学習の時は、各自が主体的に物事をとらえ、思考できる力を培えるように、一人一人に自分の考えをもつことができる時間を保障するとともに、次のグループ活動を行いながらお互いの意見交換を大切にする。
  3. 資料選択の時に、そのまま写すのではなく、その資料を「証拠資料」として選択した理由を記述させるとともに、引用する場合は問題点をはっきりさせ、解決するために必要な資料としてまとめられるようワークシートを工夫し、支援していく。
  4. 発表においては、各班内で協力してディベートマッチが行えるようフローシートを工夫し、また、各班でお互いの考えを認め、自分たちが調べた視点以外から課題解決の共有化を図るとともに、課題追求を深めるきっかけにしたい。
  5. グループ構成は、同じ考えで相互に助け合い、協力できるように配慮し、同質集団編成にする。
  6. 事前学習の課題を果たし、ディベートに対する取組を確実なものにする。
  7. 論題に対して基礎的・基本的な理解ができるよう1時間は教科書を中心とした教室でのリサーチを行い、必要に応じて学習ワークシートを工夫・作成して記入させる。
  8. ディベートマッチを充実させるために「立論作戦書」ワークシートを確実に作成させ、事前に各班で立論内容を共通理解させる。

W 単元の目標

 第二次世界大戦を日本の軍国主義の立場から見ていくことで、当時の日本が行ったアジア諸地域での侵略行為や、戦争一色の国民の生活の様子を理解し、避けられなかった太平洋戦争について考え、さらに沖縄戦線や原爆投下後の資料から戦争の悲惨さと平和の尊さを理解する。

X 評価規準

  1. 論題に対して関心をもち、第二次世界大戦について読み物資料や古老などに話しを聞くなど進んで資料や情報を収集し、積極的に意見を聞いたり、発言したり、話し合ったりしようとするとともに、戦争を二度とくり返さないよう考えていく態度を身につけている。(社会的事象への関心・意欲・態度)
  2. 論題に対して第二次世界大戦の原因や経過について肯定・否定の両方の立場から多面的な見方や考え方を踏まえて、太平洋戦争に対する自分なりの考えをもつことができる。(社会的な思考・判断)
  3. ディベートに必要な資料や情報を幅広く収集・選択し、効果的な発表資料を作成できる。(資料活用の技能・表現)
  4. 日米対立の原因、太平洋戦争の始まりから経過について理解するなど、論題に対する基礎的・基本的な知識を身に付けている。(社会的事象についての知識・理解)

Y 指導と評価の計画(8時間予定)

主な学習活動


主体的な活動を促す支援・手だて

評価項目と方法

(  )内は、扱い時間数

@〜Cは、評価の観点〈 〉内は、方法

学習目標把握

  • 学習目標を知る。
  • 「第二次世界大戦の始まり」のビデオ教材を視聴する。

(1)

  • 学習目標「第二次世界大戦と日本の関連を学習する」を提示する。
  • 日本の海外侵略の概要を理解し、日中戦争と日米交渉の関連を話し合わせる。

@ビデオを視聴し、太平洋戦争や日本の内政や外交について進んで話し合い、意見を発表している。〈観察・発表〉

 課題把握

  • 「太平洋戦争はどんな戦争だったか」など学習課題を設定し、学習計画を立てる。
  • 「太平洋戦争の原因・経過・結果について調べる」

·  「読み物資料」や前時のビデオ視聴、話し合いの内容から意味の分からない用語、疑問点等を調べ、ノートに記述させる。

·  太平洋戦争の原因や背景について発表させる。

@A学習課題に関心を示し、戦前の日米関係や内政の実態を知り、ノートにまとめている。〈ノート・発言〉

 

 「議論の決定」

論題「太平洋戦争は、日本政府にとって避けることのできた戦争だった。」(1)

  • 戦争回避の可能性を考え、ワークシートに記入させる。
  • 論題について説明し、論点ごとにデータを収集する方法を考えさせる。

@A各自や班における話し合いで、戦争回避の可能性について考えられる。
〈ノート・発言〉

 

 

求 

「リサーチ(調査)」

  • 各班で肯定・否定の立論作戦書を作成する。
  • 肯定側と否定側は、他に想定質問・応答シート・最終弁論シート等を作成する。(4)

·  班単位の調査活動と資料収集で論題を追求させる。

·  自分の立場の考えの裏付けとなる証拠資料を見つけ調べさせる。

@A「ディベート」に興味をもって、論題を追求しようとしている。〈観察〉

B論題に対して自分の考えの裏付けとなる資料を探すことができる。
〈ノート・学習シート〉

 

 

 

課題解決 

 

「ディベートマッチ」

  • 司会進行、立論、質問、応答、反論、最終弁論、判定の各場面において自己の役割を果たす。
  • 審判は判定結果と理由を発表する。
  • 全員が自己評価カードを記入する。

  (1)本時 

  • 既習の学習内容をもとに相手の意見を聞きながら、自分の考えのまとめをうながす。
  • 課題解決への思考の進め方をうながす。
  • ビデオ録画を行う。

@AC「太平洋戦争」の原因について理解し、「日本政府」という観点から論題に対して積極的に自分の考えを発言する。
〈発言・学習シート〉 

学習のまとめ

  • 評価 (1)

·  論題について自分なりの考えをワークシートにまとめさせる。

·  録画ビデオを見て、討論の進め方や表現活動を相互評価させる。

A論題に対して肯定・否定の両方の立場から考察し、多面的な見方や考え方ができる。

 

Z 本時の学習

  1. ねらい

 緒戦における日本軍の勝利による戦線拡大から太平洋戦争の始まるまでの経過を理解し、日本政府(当時の内閣と軍部の指導者をさす)の観点から、太平洋戦争の原因と経過を多面的(肯定・否定の両方の立場から)に考察することができる。

  1. 準 備

教科書、歴史資料集、歴史用語集、歴史ワーク、記録用紙、判定表、評価表、タイマー

学 習 活 動

時間

指 導 上 の 留 意 点 と 支 援

評 価 項 目

1 ディベートの準備

  • 司会、記録、時計の打ち合わせを行う。
  • 肯定側、否定側は、発表者を中心に主張の論点をまとめる。

 

5分

  • 相手の意見をよく聞き、自分の考えと比較しながら考えさせる。
  • 発言は感情的にならず、きちんとした論点で行うように説明する。
  • 審判は両方の意見をよく聞いて判定を行わせる。

@A論題について自分の考えがもて、積極的に参加しようとしている。
〈観察・ノート〉

論題「太平洋戦争は、日本政府にとって避けることのできた戦争だった」

2 ディベートを行う。

  • 開会
  • 注意事項の説明
  1. 立論を述べる。

肯定側

否定側

  • それぞれ班の代表が発表する。

(2)作戦タイム

  • 班ごとに質問事項を話し合う。
  1. 質問と応答をする。

  否定側から肯定側

  肯定側から否定側

  1. 作戦タイム
  2. 反論

  否定側

  肯定側

  1. 最終弁論

  肯定側

  否定側

  • 閉会

30分

 

2分

 

3分

3分

 

3分

 

 

3分

3分

3分

 

3分

3分

 

2分

2分

  • 司会の進め方は必要に応じて助言する。
  • 必ず時間は守らせる。
  • 立論の要旨は事前に板書させる。
  • 発言内容については、必要に応じて記録用紙にメモをとらせる。
  • ディベートの中で適宜、生徒の発言内容、聞き方、記録状況等を確認する。
  • 審判は判定表に立論に対する評価を記入させる。
  • 質問は相手側の考えを認めながらも、自分の正しさを主張するために、不備な点をつき、議論がかみ合うように留意させる。
  • 同じ内容の質問のくり返しにならないように留意させる。
  • 相手の論拠を崩しながら反論させる。
  • これまでに主張してきた範囲内で、自分たちの立場を最も有利にする点や最も強く主張したい点を中心に論を組み立て、自分たちの立場が正しいことを主張させる。
  • 多くの賛同を得るように堂々と発表できるようにさせたい。

@B事前に準備した資料をもとに表現ができている。
〈観察・発言〉

@A相手の意見と自分の考えを比較し、事前に準備した資料にそって発表したり話し合いに参加したりできる。〈発表・観察〉

 

B班内で協力しながら自分の役割を果たそうとしている。〈観察〉

 

ACワークシートに自分なりの理由が書ける。
〈ワークシート〉

  1. 判定をする。
  • 審判は、判定表に最終弁論に対する評価を記入し、結果を集計する。
  • 判定結果と理由を発表する。

10分

  • 判定が審判の個人的な意見ではなく、各側の発言をよく聞いたうえで、公平に判定されるようにする。
  • 2〜3名に発表させる。

A論題に基づいて論拠をもとに肯定か否定か表明できる。〈判定表・発表〉

3 評価表を記入する。

4 先生の話を聞く。

  • ディベートの講評を聞く。

5分

  • 自己評価させる。

 

  • 今回のディベートについての講評をする。

C論題に対する社会的事象について、いろいろな面から理解できる。(自己評価)

 

 

ワークシート

1 立論作戦書(エビィデンスカード)

論題「太平洋戦争は日本政府にとって避けることのできた戦争だった。」

調べること

 

調べた内容

 

 

 

出典(資料)

 

あなたの考え(肯定・否定)  ※いずれかをまるで囲む

 

 

 

 

立論内容(相手側の立論は予想する)

〈肯定〉

 

 

〈否定〉

 

 

 

 

2 予想質問・応答シート

主張の確認(相手側)

 

指摘1

 

指摘2

 

主張の誤りの確認

 

 

3 フローシート

論題「太平洋戦争は日本政府にとって避けることのできた戦争だった」

 

肯 定 側

否 定 側

 要旨(キーワード)

 要旨(キーワード)

質問・応答

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4 最終弁論シート

(   )側は、(立論・応答・反論)のとき、

 

と主張しましたが、これには、(   )つの(矛盾・問題)点があります。

理由1(理由はいくつあってもかまわない)

第1に       について(    )側は        と述べています。

しかし、そうは考えられません。なぜなら(問題点の理由を説明する)

                               だからです。

理由2

第2に       について(    )側は        と述べています。

しかし、そうは考えられません。なぜなら(問題点の理由を説明する)

                               だからです。

自分たちの主張が正しいことを審判に向かって主張する。

以上の理由から(    )側の主張は                です。

                               という理由で

                               と考えます。

これで、(    )側の最終弁論を終わりにします。

 

 

5 ディベートの進め方

1 はじめのことば(司会)

2 注意事項(司会)

3 立論

  • 肯定側の立論(3分)
  • 否定側の立論(3分)

4 作戦タイム(3分)

5 質問・応答

  • 否定側から肯定側(3分)
  • 肯定側から否定側(3分)

6 作戦タイム(3分)

7 反論

  • 否定側(3分)
  • 肯定側(3分)

8 最終弁論

  • 肯定側(2分)
  • 否定側(2分)