社会科学習指導案
社会科(公民) 15年6月19日(木)
1 単元名 人権の尊重と日本国憲法
2 考察
(1)教材観
@主な学習事項
社会科における人権学習は、「日本国憲法の基本的人権」を中心にして、人間の尊重の考え方を深めさせるとともに、民主主義の理解とその実現をめざしている。それは、人間尊重の考え方が「技能」「行動」として、「具体的な生活」の中に定着していくということを目指していることを意味している。
しかし、これまで行われてきた多くの人権に関する教育は、知識として教えることが中心となり、抽象的な規範意識の理解にとどまり、具体的な生活の中で、人間尊重の意識化、行動化へとなかなか結びつかない、ということが大きな課題となっている。
「人権教育のための国連10年」における「行動計画」では、これからの人権教育について「人権を抽象的な規範の表面」としてではなく、「自分たちの社会的・経済的・文化的政治的な生活現実の問題として捉えるような対話に学習を導くための手段や方法を探る」ことだとしている。つまり、「技能や知識を学習者に提供すると同時に、態度や行動に積極的に影響を与える」ことなのである。このことは、人権を守り差別を許さない「技能」「行動」として、具体的な生活の中に定着していくという意味での人権教育が重要であることを意味している。
本単元において、様々な人権に関する問題を、生徒自身が自己との関わりのある問題として捉え、その問題を「他者」と共有し合いながら吟味し、その中でこれまでの自分と違う自分を認め、新たな自分に気づく過程を通して、自らの生活を見直し、人権を尊重し民主的な社会の形成者としての自覚と態度を育成していけるものと考える。
A見方・考え方
ここで身につける見方・考え方は四つの観点から次のようになる。
・社会的事象への関心・意欲・態度
人間の尊重についての考え方と法に対する関心を高め、それらを意欲的に追究し、民主的な社会生活について考えられる。
・社会的な思考・判断
我が国の政治が憲法に基づいて行われていることの意義について多面的・多角的に考察し、民主的な社会生活の在り方について、人権問題を通して様々な考え方を踏まえ公正に判断できる。
・資料活用の技能・表現
人間の尊重についての考え方と人権に関する様々な資料を収集し、学習に役立つ情報を適切に選択して活用するとともに、追究し考察した過程を結果にまとめたり、説明したりできる。
・社会的事象についての知識・理解
人間尊重の考え方を基本的人権を中心に深めさせ、法の意義に着目させ、民主的な社会生活を営むためには、自他との人権を尊重する社会をめざし、法に基づく政治の大切さについて理解を深め、その知識を身につけることができる。また、日本国憲法が基本的人権の尊重、国民主権及び平和主義を基本原則としていること、天皇の地位と国事に関する行為について理解し、その知識を身につけられる。
また生徒の実態に応じて関心ある主題ごとに作業や発表の場を保障し、主体的な活動を仕組むことが、生徒一人ひとりの人権を学ぶ意欲に結びつくと考える。さらに、生徒に作業的な活動を通して、主題に対する自分なりの見方・考え方をノートに記入させ、四つの観点からその変容を評価の視点とする。
B学ぶ意欲
生徒一人ひとりが、人権問題を自己の問題として捉えられるためには、自分にとって身近な問題として認識を持つことができるものであるとともに、一人ひとりの心の中に人権意識を形成することができる学習が要求されてくるものと考える。
そこで本単元では、様々な基本的人権を生徒の生活との関わりから考えさせることにより、普段あまり意識していない基本的人権が自分の生活に欠かせない大切な権利であることを実感できるようにすることが大切である。また、生徒一人ひとりが自分なりの考えや問題意識を持って、自分の論拠をもとに、自ら主体的にグループで話し合い(他者と関わり)相互の考えを共有し、高め合い、互いの基本的人権を重視していこうとする姿勢が重要であると考えた。
そして、一人ひとりの生徒の普段の生活を振り返ったり、生徒の持っている自由な発想を重視した討議の中で、現代における人権に関する重要な課題について迫り、資料などを基に調べていくように計画した。さらに、人間尊重の考え方を直感的に感性を通して、一人ひとりの生徒の人権尊重の意欲と態度が育まれていけるものと考えた。現代の人権に関する重要課題について、学び合う中で、学ぶ意欲を高めるのである。
(2)生徒の実態
@学習事項に関する実態
<一部省略>授業における観察やアンケートの事前調査から「人権」に関する実態は、「生まれながらの持っている権利」4名、「差別・いじめ」5名、「憲法」3名、「基本的人権の尊重」3名、「部落差別」2名、「自由」2名、「わからない」5名である。
「憲法」では、「国・国境」10名、「きまり」6名、「日本国憲法・民定憲法」3名、「三つの原理」3名、「国会・政治」3名、「わからない・むずかしい・無回答」9名である。この結果からわかることは、既習の学習内容があることや用語としては知ってる生徒もいるので、それを生かして具体的な日常生活の中で人権尊重の意識と態度を育てることである。
A見方・考え方に関する実態
四つの観点からの実態は次のようになる。
・社会的事象への関心・意欲・態度
新聞やテレビ・ラジオなどから「北朝鮮問題」「消費税」「イラク戦争」「SARS」など単発的な社会事象の情報には関心を持っている生徒は多い。全体的には学習意欲があり、積極的でまじめに学習に取り組んでいる。
・社会的な思考・判断
社会的事象を主体的に考えることは比較的できるが、客観的に考察し、判断できる場面は少ない。
・資料活用の技能・表現
学級のまとまりはよく、グループで協力して学習することができるが発言が一部のものに限られる傾向にある。指名での発表は言葉数は少ないが大部分ができる。
・社会的事象についての知識・理解
社会科は覚えることが多く、ややこしいことばかりなので、好きではないと思い込んでいるために、さまざまな社会的事象を知識として獲得できなかったり、確実に理解しなかったりすることもある。
このような実態を踏まえたとき、人権尊重の教育は、生徒の関わりのある現実の生活の中から、自由・権利と責任・平等・義務の意味や関係を関連づけた学習課題の提示し、生徒自身が自ら「法」の意義を探究し、互いの基本的人権を尊重していこうとする態度を育める学習過程の工夫が必要となる。
B学ぶ意欲に関する実態
社会科は好き、と答える生徒10名、嫌い7名(女子6名)である。公民は好き4名、嫌い4名という結果である。生徒の多くは、自分や仲の良い友達の権利の主張には、とても積極的である。しかし、法(きまり)に対しては、誰か(他者)がつくり、与えられているものという消極的なイメージを持っている。また、法(きまり)は煩わしいものという考えを抱いている者も多い。法(きまり)によって自分たちの人権を守っている、というような考えを持っている生徒は少ない。このような状況から、生徒の規範意識は希薄であるといえる。
C主体的な活動に関する実態
課題学習で調べてまとめるなどの作業はお互いに協力してよくできる。特に発表では各グループで工夫して取り組むことができた。課題解決的な学習において、様々な資料から問題を考え出す思考力は不十分であるが、グループ活動にするとお互いの意見を様々な角度から見られ、自分の考えを修正しながら発展的な意見交換ができ、一斉授業ではなかなか見られない生き生きとした表情で学習に取り組める
資料の活用では、多面的な見方から資料選択して解決していくとき、自分の視点で解決のポイントをおさえるこが意識できるようになった。前単元「現代社会とわたしたちの生活」では、「現在の日本生活に大きく影響した戦後のできごとやものは何か」というテーマで課題学習をしている。
(3)学習指導と支援の方針
@本単元は、「人権とは何か」「憲法とは何か」など具体的な生活からとらえることのできる課題を設定し追究することが容易であり、課題解決学習に適している。課題解決学習を進めていくため学習過程を考え、で支援の方法をさぐっていく。それぞれ学習段階で学習の進め方がわかり、課題解決に見通しをもって合理的な課題追究が行えるようにする。
A学習過程での支援の方法
・導入部では、生徒たちの興味や関心が持てるように、身近な資料や写真資料などに触れる機会を多く持たせる。マンガの教材を使って生徒たちに興味を喚起し、マイクロディベートなどを行って意欲付けを図る。
・「課題設定」の段階では、基本的人権を考えさせるために、身近な生活に結び付けて具体的な社会事象に着目させて学習を進められるようにする。「人権とは何だろう」で興味・関心に応じた社会的事象について考え、話し合わせるようにする。
・人間尊重についての考え方や基本的人権を学習していく上で、グループ学習を取り入れて具体的な事象資料から話し合い活動を中心に学習を展開する事により、学習課題が明確になり、一人ひとりの学習が主体的に進めらるとともにグループ内相互の活動も活発になると考えられる。
・「課題把握」の段階では、課題をつかんで学習を進められるように、ワークシートやプリントなどを活用する。「人権」や「憲法」の定義を確実にする。
・「予想・計画」の段階では、各自が主体的に物事をとらえ、思考できる力を培えるように、一人ひとりに自分の考えを持つことのできる時間を保障するとともに、次にグループ活動を行いながらお互いの意見交換を大切にする場を設定する。
・予想するための基礎的・基本的な理解ができるよう「ダイヤモンドランキング」で話し合い、学習ワークシートを活用して考えがまとめられるように支援する。
・「課題追究」の段階では、資料の読み取りなど作業的・体験的な学習を多く取り入れる。 ・資料選択の時に、そのまま写すのではなく、その資料を「証拠資料」として選択した理由を記述することを助言するとともに、引用する場合は問題点をはっきりさせ、解決するために必要な資料としてまとめられるよう支援していく。
・「課題解決」の段階では、まとめや発表において、各班内で協力して行えるようワークシートを工夫し、また各班でお互いの考えを認め、自分たちが調べた視点以外から課題解決の共有化を図るとともに、より追究を深めるきっかけにしたい。
3 目標
人間の尊重についての考え方を基本的人権を中心に理解させるとともに、日本国憲法の基本原理を具体的な生活とのかかわりでとらえさせる。
4 評価規準
(1)社会的事象への関心・意欲・態度
人権尊重についての考え方や法の持つ意義について、自己との関わりを持って追究しようとする。
(2)社会的な思考・判断
民主的な社会生活の在り方について、自分と他者の関わりの中で、自由・権利と責任・義務の関係を踏まえて公正に判断している。
(3)資料活用の技能・表現
人間の尊重に関する様々な資料を収集・分析し、自己や他者との関わりの中から、多面的・多角的に人権問題を考え、自己の考えを表出することができる。
(4)社会的事象についての知識・理解
人間尊重の考え方や法に基づく政治が民主政治の原理となっていることを理解し、その知識を身につけている。また、日本国憲法が基本的人権の尊重、国民主権及び平和主義を基本原則にしていることに理解を深め、天皇の地位や国事に関する行為について理解し、その知識を身につけている。
5 指導計画(14時間予定)
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6 本時の学習
(1)目標
民主社会(日本国憲法)において、基本的人権とはどのようなものであるかを理解し、それを尊重しなければならないとともに、「子どもの権利条約」の存在を知り、つくられた意義や内容を考える。
(2)準備
教科書「新しい社会 公民」東京書籍、資料集、用語集、ノート、ワークシート(プリント)
(3)展開
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・人権(自由)について個人のダイヤモンドランキングをつくる。 |
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・個人のランキングを決めさせる。 |
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(4)評価ポイント
「ラベルはしゃべる」や「ポストカード」を用い、生徒の普段の生活と関わりあることや自由な発想を重視したために、自分の考えや思いを持って、集団討議することができた。自分の考えを持てたことにより、友達の意見をしっかりと聞こうとする様子が見られ、互いの考えを共有し合いながら、新たに調べてみたい人権問題について選択することができた。
7 使用した資料とその出典
◇人権のダイアモンドランキングに挑戦!◇
組 番 氏名( )
あなたなら どうするの! 落ちていく気球に乗って
◇今のあなたの状況◇
あなたは気球に乗って旅をしています。やがて海が見えてくると、突然、気球が落下し始めました。海面では、人食いザメが口を開けて待っています。 |
◇8つの権利◇
記号 |
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グループ順位 |
A |
好きなヘアースタイルや服装ができる自由 |
( ) |
B |
だれでも、好きになれる自由 |
( ) |
C |
いやな命令を強制されない自由 |
( ) |
D |
やりたい勉強や部活ができる自由 |
( ) |
E |
自分の言いたいことが堂々と言える自由 |
( ) |
F |
自分のすすみたい進路を選べる自由 |
( ) |
G |
好きなところに住める自由 |
( ) |
H |
好きな音楽やテレビを見られる自由 |
( ) |
◇ダイヤモンド・ランキング◇
「最初に捨てる権利から」、次の 1〜8の順にA〜Hから記号で記入してください。また、その理由も考えてください。
1
2 3
4 5 6
7 8
9
◇理由(個人・グループ)◇
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「人権とは何だろう」
1 日本国憲法の4つの人権?
2 「人権ランキング」最も重要な人権は何権か。一番下の 9に記入しなさい。
自己評価 はい いいえ
@ 意欲的に考えようと思いましたか。 5−4−3−2−1
A 8つの権利の意味を読み取れましたか。 5−4−3−2−1
B 人権について理解が深まりましたか。 5−4−3−2−1
C 人権について今後調べてみたいと思った点を書いてください。
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相互評価
@ 意欲的に探究していると思う友達はいましたか。 名前( )
理由
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A ランキングの判定理由の納得できる友達はいましたか。 名前( )
理由
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