社会科学習指導案
社会科(中2歴史)平成18年9月21日(木)
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授業の視点 |
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本時の授業を展開するにあたり、イラスト(風刺画)の提示は、学習過程の「仮説(結果の予想)」として学び方が身に付くために有効であったか。 |
1 単元名 日清・日露戦争と近代産業
2 考察
(1)教材観
@主な学習事項
「市民革命」「産業革命」を経て、原料供給や市場の獲得のためアジアに進出する欧米諸国によって開国し、遅れて近代化を進める日本が「脱亜・入欧」をとげるためには、急速な近代化と権力の集中を必然とした。一方で欧米の民主主義思想が移入され、江戸時代からの蓄積もあって、独自の民主主義思想も育ってきた。明治憲法と教育勅語によって成立した天皇制近代国家の枠組みに組み込まれ、資本主義経済が確立していくなかで、自由民権運動が挫折する。近代日本は、政治的な民主化に失敗し、軍事的・経済的な面において成功した、きわめて特殊な近代国家であった。欧米諸国の資本主義の進展と、市場獲得競争が激化する厳しい国際環境のもとで、日本が近代国家を成立させるためには、複雑な過程を経なければならなかった。近代以降で、歴史学習につまづく生徒も多い。新しい歴史用語も増え、覚えなければならない事項も多くなるが、学習事項の近代国家の確立過程という軸からの距離をはかりつつ理解を深めさせるようにしたい。
A見方・考え方
ここで身につける歴史的な見方・考え方は四つの観点から次のようになる。
ア)社会的事象への関心・意欲・態度
・19世紀から20世紀初頭の東アジアの情勢に興味を持つ。
・日清・日露戦争について意欲的に調べようとする。
イ)社会的な思考・判断
・清や朝鮮におけるロシアやイギリスなどの動向と日本との関係について考えることができる。
・日清・日露戦争に対して多角的に考察することできる。
ウ)資料活用の技能・表現
・文献などから開戦論・非戦論を読み取ることができる。
・日清・日露戦争の被害状況を比較することができる。
エ)社会的事象についての知識・理解
・日清・日露戦争の原因と結果について理解することができる。
・日清・日露戦争が東アジアに及ぼした影響について理解することができる。
また生徒の実態に応じて関心ある主題ごとに作業や発表の場を保障し、主体的な活動を仕組むことが、生徒一人ひとりの人権を学ぶ意欲に結びつくと考える。さらに、生徒に作業的な活動を通して、主題に対する自分なりの見方・考え方をノートに記入させ、四つの観点からその変容を評価の視点とする。
B学ぶ意欲
「基礎・基本」である学習指導要領によれば、目標は2点の内容を理解させることにある。一つは「急速に近代化を進めた我が国の国際的地位の向上」を理解させることであり、二つ目は「大陸との関係のあらまし」を理解させることである。ただ「基礎・基本」として理解させるだけでは従来の「知識・理解」を中心とする歴史学習にとどまってしまう。この時代の「国際的地位」とは一体どういう意味を持つのか、「大陸との関係」とうはどういう関係であるのかを、生徒に考えさせることが大切な学習課題である。
また生徒の立場でこの時代を学習するとき、ただ単に戦争の原因や経過・結果を知識として捉えるだけでなく、この時代の為政者やさまざまな立場の人たちの戦争に対するとらえ方や考え方があったこと、そして今これらを学んでいる生徒が自分なら戦争というものに対してどう考え、どう行動するか、自らの課題としてとらえることが、学ぶ意欲を高めるのである。
C主体的な学習
教師の示した教材を通して生徒がその単元の事象に興味・関心を抱き、資料を活用して、生徒自らが考え意思を持ったとき、初めて「基礎・基本」が定着したといえる。「基礎・基本」が定着すると、生徒自ら新たな疑問を持ち、さらに知ろうとする意欲が湧いてくる。
課題解決的な学習の学習過程は、学習目標の提示→学習目標の把握→仮説(結果の予想)→計画→追究→解決である。進める際のポイントは、学習内容「基礎・基本」を提示し、確実にそれを押させる→生徒に疑問(仮説)を起こさせるよう、意図的に仕組む→生徒自ら調べ、考える時間を保障する→生徒の追究(調査)過程や結論・意思を尊重し、評価してやる→評価からもっと調べようという興味・関心を喚起させる→生徒に学習内容の「基礎・基本」を再確認させる。以上の手順を踏み、繰り返すことによって「基礎・基本」が定着し、主体的な学習や発展的な学習が図られる。
(2)教材の系統
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小学校 |
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第6学年 世界に歩み出した日本 |
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中学校 |
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第2学年 日清・日露戦争と近代化 |
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(3)実態
@主な学習事項に関する実態
ヨーロッパ近代社会の学習では、「植民地(帝国主義)とは何か」というテーマで課題解決的な学習を実施した。指導要領社会編歴史的分野3内容の取り扱い(6)ア「イギリスを中心に取り上げ、欧米諸国がアジアに進出するようになった背景を理解させる」は既習であるが、近代日本の確立過程で「明治憲法制定」の歴史的意義について理解しているとはいいがたい。「西郷隆盛」「板垣退助」「伊藤博文」の人物についてそれぞれの果たした基本的な役割を説明できたのは8名である。課題解決的な学習をより深める必要があると考える。
A見方・考え方に関する実態
ア)社会的事象への関心・意欲・態度
日本と中国の歴史的な関係や地理学習の既習の内容から大陸とのかかわりに興味を持って取り組める。
イ)社会的な思考・判断
「開国するとは?」の課題学習から欧米諸国との関係について考えることができる。「なぜ戦争をするのか」の質問に「植民地」という答えが9名である。
ウ)資料活用の技能・表現
「イラストから何が見えるか」各国の実情を各資料を活用して読み取ることから始める。
エ)社会的事象についての知識・理解
「黒船来航から何が見えるか」で、日本にペリーが来航した意味についてはほとんどの生徒が理解しているが、「ペリーがどこの国から来たのか?」またその後の欧米諸国の具体的な関わりについては理解が曖昧である。
B学ぶ意欲に関する実態
課題追究に個人差が大きいが、お互いに分担を決めたり、協力して取り組めた。例えば「開国と江戸幕府」で「ペリーの持ってきた国書には何が書いてあったか」「ペリーの7せきの艦隊にはどんな人が乗っていたのだろうか」の素朴な質問には歴史的な好奇心を感じる。また「薩英戦争の結果、イギリスは日本ついてどう思ったか」は、諸外国との関係や各藩の動きに興味を持って取り組むことができたといえる。
しかしルールを各班(5班で各5〜6名)できるだけ多くの人が質問や解答する事もポイントとして行ったにもかかわらず、実際には各班とも2〜3名の生徒の活動が中心になってしまった。また特に支援が必要な3名の生徒に学習カードへの記入を指導をしたが、「なぜ、旧幕府は江戸城を戦わずに明けわたしたのか」の質問で「旧幕府軍が弱かったから」と答えたのはそのなかの生徒である。ゲーム形式の授業に生徒は積極的に参加している。
C主体的な学習に関する実態
課題学習で調べてまとめるなどの作業はお互いに協力してよくできる。特に発表では各グループで工夫して取り組むことができた。課題解決的な学習において、様々な資料から問題を考え出す思考力は不十分であるが、グループ活動にするとお互いの意見を様々な角度から見られ、自分の考えを修正しながら発展的な意見交換ができ、一斉授業ではなかなか見られない生き生きとした表情で学習に取り組む場面が見られた
資料の活用では、多面的な見方から資料選択して解決していくとき、自分の視点で解決のポイントをおさえるこが意識できるようになった。前単元「明治維新」では、「立会演説会から何が見えるか」で課題学習をしている。
(4)学習指導と支援の方針
@本単元は、「植民地を基盤とした帝国主義化」「日本は帝国主義国となるか、植民地になるか」という重要な岐路に立っているところから課題を設定し追究することが容易であり、課題解決学習に適している。課題解決学習を進めていくため学習過程を考え、支援の方法をさぐっていく。それぞれ学習段階で学習の進め方がわかり、課題解決に見通しをもって合理的な課題追究が行えるようにする。
A学習過程での支援の方法
・学習内容に関わる学習目標として「基礎・基本」の構造の提示する。
・導入部では、生徒たちの興味や関心にうったえるように、ビデオの視聴覚教材を使って生徒たちに興味を喚起させて共通課題を全体で考えていけるように意欲付けを図る。
・仮説の段階では、風刺画を活用し、資料を執拗に追究できるように歴史的な疑問を発見できるように工夫した。
・課題解決的な学習の時は、各自が主体的に物事をとらえ、思考できる力を培えるように、一人一人に自分の考えを持つことのできる時間を保障するとともに、次にグループ活動を行いながらお互いの意見交換を大切にする。
・追究が短絡的にならないように「答え」に視点をおいて、できるだけ多く全員で答えを出させるブレーンストーミングで話し合う、というような工夫をする。
・発表においては、お互いの考えを認め、自分たちが調べた視点以外から課題解決の共有化を図るとともに、課題追究を深めるきっかけにしたい。
・グループ編成は、助け合い、協力できるように配慮し、生活班とする。
(5)人権教育との関わり
生徒の実態に応じて関心ある主題「日露戦争に対する開戦論VS非戦論」等の場を保障し、主体的な活動を仕組むことが、生徒一人ひとりの人権を学ぶ意欲に結びつくと考える。
(6)校内研修との関わり
主題「意欲をもって進んで学習する生徒の育成」〜学び方の工夫を通して〜
日清・日露戦争を通しての日本の国際社会における地位を2〜3時間で、生徒に理解させることは困難である。この単元までにどれだけ「基礎・基本」の構造を指導しておき、定着させておくかが歴史の流れを把握させる上でも重要なことである。
「近代化」とは「植民地政策を基盤とした帝国主義化」ととらえ、日本が植民地を獲得して帝国主義国としての基盤を築くのか、日本そのものが植民地となるかという岐路に立っていることを、明治以降の政策から学ぶことが重要である。そこで次の2点を「近代日本と世界」の「基礎・基本」の構造として押させておくことが必要である。
@「植民地を基盤とした帝国主義化」
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A「日本は帝国主義国になるのか、植民地になるのか?」
・植民地になりなりたくない。
・欧米との関係を築きたい。
そのため天皇を頂点とする中央集権国家として、隙をつくらない強力な軍事力を持つ国づくりが必要となる。
3 単元の目標
急速な近代化により欧米諸国との対等関係を目指していったこと通して、国際的な地位の向上と大陸との関係のあらましを理解させるとともに、当時の人々の努力にも気づかせる。
4 評価規準
(1)社会的事象への関心・意欲・態度
19世紀後半の国際情勢に興味を持ち、関連づけながら日清戦争・日露戦争の起こった理由を進んで調べようとしている。
(2)社会的な思考・判断
日清戦争・日露戦争における欧米各国の利害関係や国内の様子・戦争の影響について、さまざまな角度から考察することができる。
(3)資料活用の技能・表現
日清戦争から日露戦争までの国内の様子を、政治・産業・社会の面から年表にまとめることができる。
(4)社会的事象についての知識・理解
国際的な地位の向上と大陸との関係のあらましを、日清・日露戦争、条約改正の視点から説明できる。
5 指導と評価の計画(4時間予定)
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6 本時の学習
(1)ねらい
東アジアの情勢と日本が大陸に進出していく様子に気づかせ、日清・日露戦争をとおして、日本が国際的地位を高めたことを理解させる。
(2)準備
教科書、歴史資料集、歴史用語集、歴史ワーク、風刺画「調べる力・考える力を鍛えるワーク」(有田和正著)、図式「基礎基本の習得をめざす新しい授業実践」(高山博之著)
(3)展開
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2 日清戦争 |
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「日清・日露戦争の国内外のようすを知ろう」 |
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