アストロフォトタイマ2の製作
まずは試作機とソフト開発
アストロフォトタイマ2の開発は、ハードである回路設計、製作、さらにソフトであるプログラム開発を平行して行いました。
まずは、実験機をバラックで組んでみました。
アストロフォトタイマ2零号機(実験機)
ユニバーサル基板に、必要なパーツを乗せて、ソフト開発用の実験機を軽く作ってみました。
もちろん、ハードチェックも行ないます。
プログラム開発は手持ちのウィンドウズパソコンを、またプログラムのPICへの書き込みは秋月電子通商(以下秋月)さんが販売しているAKI−PICプログラマーキット(現行商品はver3で、定価6700円)を使いました。秋月さんのキットは、自分で組み立てなくてはいけませんが、ハンダ付けの経験がある人なら、それほど苦労することなく作り上げられる程度のモノです。
秋月電子通商さんのAKI−PICプログラマーキット
アストロフォトタイマ2実験機では、先代バージョンを使用していたが、
現在はこちらのバージョン3を利用しています。
このキットにはオリジナルの拡張命令の付いたPAというアセンブラがCD−Rで提供されていたので、実際の開発でもこれを使用しました。今思えば、マイクロチップテクノロジ社が提供しているMPLABという統合開発環境で始めればよかったかも知れません。というのも、その後、いろいろな機材をPICを使って作ってみましたが、だんだんと高度なモノになってきて、ICE(インサーキットエミュレーション・パソコンで開発した機材をだまして、あたかもPICがあるように動作させることが可能となる)を入手したこともあり、現在はこのICEの動くMPLABをメインに使っているからです。PAは拡張命令が豊富にあって便利なのですが、MPLABへ乗り換える場合、プログラムの記述が違うのでたいへんでした。
さて、開発を始めた1999年当時はこれといって参考書もなく、資料らしい資料はメーカーから提供されているデータシートとトラ技の特集くらいで、ノウハウもほとんどわからないまま、ひたすら実験の日々でした。それでも、本業の合間に製作を続け、ほぼ2週間ほどで、実用となる機体ができあがりました。
アストロフォトタイマ2初号機(試作機)
ユニバーサル基板を切って、パーツを実装しています。
キースイッチの部分は2階建てです。
仕様としては、PIC16F84を10MHzで動かし、LCDを備え、LCDにメニューを表示して、二つのキーで露出時間やフィルム枚数を設定するというモノです。また、カメラのリモート端子を接続する素子として、フォトMOSリレーというパーツを使用しました。これは、機械式のリレーのような接点がない電子リレーで、わずかな電力で駆動でき、しかも内部の回路と外部の回路を電気的にほぼ完全に遮断できるというスグレモノです。極性も気にせず、利用できるタイプもあります。天文趣味人の身近なところでは、ビクセンのオートガイダーAGA−1の出力部分などに使われています。また、時間を扱うので、クロックはPICの駆動用とは別に高精度の時計用の水晶発振ユニットを利用しました。ところで、先代流星とるとるくんは、カメラ5台を同時にコントロールしていましたが、アストロフォトタイマ2はもろもろの事情から、カメラ4台の同時コントロールになっています。
そして、回路とプログラムがほぼフィックスした時点で、こうした回路用のプラスチックケースに収まるように、基板を作り直しました。ケースはタカチ製のSS125というこれまたポピュラーなものを使用しています。これで、アストロフォトタイマ2初号機(試作機)の完成です。
その後、いろいろとPICの知識が深まるにつれ、もう少し回路を簡素化できることがわかり、改良してみました。別立ての水晶発振ユニットを廃止して、PICに内蔵されたタイマを利用したり、いろいろと電気的なマージンを大きく取っていた部分をシェイプアップするなど、手を入れてみました。時間的な精度的は少し悪くなってしまいましたが、それほど高精度な時間を必要とするモノではないと割り切りました。コピーして製作したいという方にとっても、製作費が若干お安くなるでしょう。