想像したくもないけれど


シオンよ
想像したくもないけれど
もしもこのぼくが
ひとごろしの子で
持っているものすべてが
奪い取られたものだと
気づいたらぼくは
菜の花の咲く
野原の中を
電車のように走りつづけ
桜の咲き始めた
山里に
ひとりしずかに
暮らすだろう

想像したくもないけれど
もしもこのぼくが
ひがいしゃの子で
父や母や兄妹たちが
罪もなく殺されたのだと
気づいたらぼくは
菜の花の咲く
野原の中を
電車のように走りつづけ
桜散る木の下で
人里に住む犯人を
春雷になって
埋めるだろう
シオンよ