クリーニング屋のおじさん


捨てた
蓋されたどぶ川の中に
ホタルとザリガニと
みんな捨てた

クリーニング屋のおじさんが
泣いて話した

大丈夫だ
とおるちゃん
脳溢血で倒れてからおじさんはね
もう怒らないことにしたんだ

蓋されたどぶ川の上に
きれいな花水木が咲いているね
ああだけど何だか
造花みたいだ

おじさんの髪は
いつの間にか
真っ白になった

昔はこの道も舗装されていなかった
ここからは赤城山がよく見えた
家が今ほどなかったし
みんな垣根だった

おじさんは食事制限の話をしながら
大事なものを
捨ててきたと言って
小刻みに震える
左の手を
ぼくに見せた