命が浮かんでいる

赤や黄や紫
白い花の咲く
小さな花屋の店先に
黒マメという黒猫がいる

私が手を差し伸べて
鼻の頭を指先で撫でても
静かに目を閉じたまま
眠ったふりをしている

愛想の無い奴だなあと
空を見上げると
電線に一羽のツバメがとまり
こちらの様子を伺っていた

命が浮かんでいる
漂っている
空から堕ちてくる
透明なものを待っている




花屋の店先の黒マメ