人生が素晴らしいとは

六月初め
仕事で訪ねた
四万の渓流に
少しばかり早すぎる
蝉が鳴いていた

ぼくは
通夜にも
告別式にも行かず
医者から
余命を告げられ
自分の墓を
探していた
ひとりぽっちの
君の気持ちを
考えていた

世界は
不思議に満ちて
いるけれど
人生が素晴らしいとは
ぼくには言えなかった




昆虫の森にて