【摂 食 障 害 と 糖 尿 病 】
(改訂 2000/07/05)
[ はじめに ] このページは、一般のビジターにとっては、やや専門的過ぎるかもしれません。
参考のために、文献をつけておきました。一部の文献は紛失したようです。ごめんなさい。
[ 摂食障害と1型糖尿病の合併 ]
糖尿病患者では、摂食障害を合併することが多い(生涯発病率約10%)ことが報告されています。
糖尿病の中でも、とくに思春期の1型(インシュリン依存型)糖尿病と摂食障害の合併が近年注目されています。思春期の1型(インシュリン依存型)糖尿病患者に合併する摂食障害は、軽度の場合(サブクリニカルなレベル)がほとんどですが、過食症やむちゃ食い障害(Binge
Eating Disorder)もみられます。
1型糖尿病の肥満傾向、ダイエット、食物への過剰な配慮などが臨床的およびサブクリニカルな摂食障害の発症を促進すると考えられます。また、両疾患の合併患者では、インシュリンの過少投与や
HBA1C の高値が報告(Takii M et al.,, 1999)されており、治療上特別な配慮が必要といわれています。また、摂食障害の合併が、1型糖尿病患者の脂質代謝障害を悪化させる(トリグリセライド高値など)が指摘されています(Affenito
SG et al., 1997)。
摂食障害患者では、糖尿病の合併に注意し、思春期の糖尿病患者では、摂食障害の合併の可能性をチェックする必要があります。
[ 摂食障害と1型糖尿病の合併患者の研究 ]
1型糖尿病の思春期(11-18歳)、および若年成人(20-28歳)患者の調査(Bryden
KS., 1999)では、思春期女性患者、若年成人男女患者で体重超過傾向がみられました。3割の女性患者で、体重コントロールのためにインシュリンを少なめに使用したことがありました。インシュリン使用を少なくすることは、結果的に血糖コントロールを不十分にし、合併症の危険を高めます。
1型糖尿病の思春期(14-18歳)患者と正常者コントロール群を比較したところ、糖尿病患者では、平均
6.8kg の体重超過がみられました。摂食障害インベントリー(Eating
Disoder Inventory; EDI)では、糖尿病群により多くの障害摂食行動がみられました。体重超過糖尿病患者と正常体重糖尿病患者では、前者で高い
EDI 値がみられました(Engstrom I et al.,
1999)。
ドイツにおける多施設研究(Herpertz S. et
al., 1998)では、1型、2型を含む糖尿病患者における摂食障害合併率は、5.9% (生涯合併率
10.0%)で、性差と糖尿病のタイプによる差はありませんでした。摂食障害のうち、過食症に限っていえば、2型よりも1型
に多く、むちゃ食い障害は1型よりも2型糖尿病に多くみられました。
[ 文献 ]
Affenito SG et al: Subclinical and clinical
eating disorders in IDDM negatively affect
metabolic control.
Diabetes Care. 1997 ; 20(2): 182-184.
Affenito SG et al: Women with insulin-dependent
diabetes mellitus (IDDM) complicated by eating
disorders are at risk for exacerbated alterations
in lipid metabolism. Eur J Clin Nutr. 1997
; 51(7): 462-466.
Bryden KS et al: Eating habits, body weight,
and insulin misuse. A longitudinal study
of teenagers and young adults with type 1
diabetes. Diabetes Care. 1999 ; 22(12): 1956-1960.
Engstrom I et al: Eating disorders in adolescent
girls with insulin-dependent diabetes mellitus:
a population-based case-control study. Acta
Paediatr. 1999; 88(2): 175-180.
Herpertz S et al: Comorbidity of diabetes
and eating disorders. Does diabetes control
reflect disturbed eating behavior? Diabetes
Care. 1998; 21(7): 1110-1116.
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文責:竹村道夫(2000/01/06)