【ハーブ系ダイエット薬、エフェドラ(Ephedra)の危険性 】
 赤城高原ホスピタル

(改訂: 08/10/06)


[ 別ページの関連記事 ]

 →「エフェドラ(Ephedra)の危険性、続報1」
 →「エフェドラ(Ephedra)の危険性、続報2」
 →「エフェドラ、続報3、終に販売禁止へ」

 →「エフェドラ、体験者のメッセージ、第1部」
 →「エフェドラ、体験者のメッセージ、第2部」

 →[脱法ドラッグ、流行小史]


[ エフェドラとは ] (註:このページの情報は、一部を除いて2000年年末頃の状況に基づいています)

 エフェドラ(Ephedra)というのは、ハーブ系の薬品で、マーファング、マファング、マファン、マ・フアン(ma huang )という名前でも知られています。中国に自生するマオウ科(Ephedraceae)のEphedra属のシナマオウ(Ephedra.sinica)、アイマオウ(Ephedra.intermedia)、キダチマオウ(Ephedra.equisetina)などの地上茎を乾燥したものが、生薬「マオウ」です。このように生薬「マオウ」は、中国原産で、中国名を漢字で「麻黄」と書き、(mahuang または、ma huang)と音訳されます。日本名としては、中国と同じ漢字で「麻黄」と書き、「マオウ」と読まれます。「マオウ」と片仮名で記載されることもあります。英名は、(Ephedra Herb)と書き、省略して(Ephedra)とも呼ばれます。だから、エフェドラとマオウ(麻黄)はほぼ同義語です。漢方では、鎮咳、解熱、発汗作用を持つ成分として他の生薬とブレンドし、方剤(混合薬)の形で使われます。

 アメリカでは、体重コントロールをしたいダイエット中の人、活動性を高め、筋肉質の体を作りたいボディビルダーやハイな気分を味わいたい人など、数百万人ないし一千万人に使用されています。日本でも個人輸入が可能です。実際には、多くの個人輸入代行業者があり、実情は輸入販売(違法行為です)に近いところが多いようです。インターネットで「エフェドラ」を検索すると、多くのサイトが見つかります。スマートドラッグ、合法(脱法)ドラッグ、生活改善薬、減量関連商品、健康食品、ダイエット情報などのサイトです。それらのHPでは、エフェドラの危険性に関する情報はほとんどありません。

 一方アメリカでは、エフェドラの副作用とみられる事故が続発し、FDA(Food and Drug Administration : 食品医薬品局)がその監視と対策に乗り出しました。

 エフェドラの副作用に関する報告は、1993年頃からあり、44歳の水泳とテニスの好きな男性は、コーヒーとココアの代りにエフェドラ製品を飲み始めて3週間後、テニスから帰宅した後に冠動脈血栓で死亡しました(MMWR August 16, 1996: Adverse Events Associated with Ephedrine-Containing Products)。 そのほか、1996年には、20歳の大学生がエフェドラ製品服用後に死亡しました。1997年には薬物乱用歴のない健康な23歳の男性がエフェドリン25mg入りドリンクを服用後に死亡しました(Theoharides, TC. 1997)。さらに38歳の男性は、エフェドラ2カプセルをコ−ヒ−と一緒に飲み日課の朝のジョギングを行い、戻った後心臓発作を起こして死亡しました。また、エフェドラを常用している35歳の女性はエアロビクスの最中に脳卒中で死亡しました(FDA Cracks Down on Ephedrine-Laced Supplements 02/06/05確認)。ダイエットのためエフェドラ製品を1ヵ月間服用していた24歳女性は、脳卒中発作を起こし片麻痺と失語症になりました(2000/4/20 Washington Post)。

 筆者は嗜癖問題の専門家であり、薬学やエフェドラ問題の専門家でも薬剤師でもありませんが、薬物乱用者が大好きな「合法ドラッグ」(脱法ドラッグ)や摂食障害患者が愛用、乱用するダイエット関連商品(やせ薬)に関心を持っていて、その両方から、「エフェドラ」という名前を聞くことが多くなったので、2000年初め頃から気になってこの問題を調べ始めました。


[ 麻黄、マオウ、エフェドリン、エフェドラ、覚せい剤、健康食品、合法(脱法)ドラッグ、ドーピング ]

 麻黄というのは、マオウ科の植物 Ephedra sinica などの地上茎を乾燥したものです。 Ephedra sinica は日本国内には自生せず、中国(山西省、陝西省、内蒙古、吉林省、遼寧省、河北省、四川省、甘粛省など)の乾燥地帯などが産地です。家庭菜園などで栽培することは困難なようです。現在でも、中国ではマオウ抽出法でエフェドリンが生産されていますが、抽出過程で発生する廃液などが問題になっており、砂漠固定作用をもつマオウを採りすぎると、土地の砂漠化をもたらし、生態環境に影響することが心配されています。このため、中国では、多量のマオウを原料としてエフェドリン粗抽出を行う企業に対して、自社栽培地の保有を義務づけています。実際に栽培化も進んでいるようです。

 1996年、日本は中国から約700トンのマオウを輸入しました。1999年から中国はマオウの輸出規制を始めました。このため2006年頃には日本国内の在庫が尽きることが心配されていました。この事態に対処するために、日本でも栽培方法が研究されていましたが、2004年2月、国立医薬品食品衛生研究所筑波薬用植物栽培試験場でマオウの栽培に成功したことが報告されました。(04/02/06、日経新聞)

 ほかには、Sida cordifolia という植物もエフェドリンを含むハーブとして知られています。またマオウは Ma huang 、Chinese Ephedra、epitonin などとも呼ばれることがあります。

 マオウは、かつては喘息の薬である、塩酸エフェドリン製造の原料とされましたが、現在ではエフェドリンはほとんどが化学合成品です。マオウ(エフェドラ)は、天然のエフェドリンとプソイドエフェドリン(pseudoephedrine; 英語読みだとスードゥエフェッドリン)、norephedrine、 norpseudoephedrine、 N-methylephedrine、 N-methylpseudoephedrine を含んでおり、これらはまとめて、エフェドラアルカロイドと呼ばれます。エフェドラの効果はこのエフェドラアルカロイドの作用によります。

 医薬品としての塩酸エフェドリンは、交感神経様作用を持ち、気管支を拡張して、呼吸困難を改善します。気管支喘息、感冒、肺結核、上気道炎などに伴う鎮咳、鼻粘膜の充血・腫張などに使用されます。1回12.5〜25mgを1日1〜3回内服します。 副作用として、不眠、神経過敏、振戦、悪心・嘔吐、頭痛、頭重、排尿困難、口渇などをきたします。長期連用によって、不安、幻覚を伴う精神症状が現れることがあります。中枢興奮作用を有し、過量に用いると不整脈や心停止を起こすおそれがあります。一方、pseudoephedrine は鼻閉に対し使用されます。

 エフェドラの効果は、カフェインと類似しており、副作用も似通っています。ただし、エフェドラの心血管系への活性はカフェインより強力です。

 医薬品としてのマオウは、エフェドリンを含有し、鎮咳去痰薬として、1日最大4gまで配合されます。漢方の葛根湯(かっこんとう)、麻黄湯(まおうとう)、越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)、小青竜湯(しょうせいりゅうとう)、麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)、麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)、神秘湯(しんぴとう)、五積散(ごしゃくさん)などにも含まれています。塩酸エフェドリンと同様の副作用があります。

 日本では、塩酸エフェドリンを含有する製品は、薬事法により医薬品とみなされます。そのような製品を薬事法に基づく所要の許認可を取得することなく輸入及び販売することは、同法第22条第1項(医薬品無許可輸入販売業)及び同法第55条第2項(無承認無許可医薬品の販売・授与等の禁止)に違反する行為とされます。

Amph, Meth, Ephedrine chemical structure  塩酸エフェドリンは喘息の治療などに使用される医薬品ですが、日本では、エフェドリンとして、1回分 25mg を超えて含有するものは、劇薬として規制されています。また10%を超えて含有するものは、覚せい剤取締法により、覚せい剤原料として規制されています。

 そもそも覚せい剤、アンフェタミン類はエフェドリン合成過程から開発されたものです。1888年、日本の薬理学者、長井長義氏は、漢方薬麻黄から有効成分のエフェドリンを抽出しようとしていて、エフェドリンの誘導体のアンフェタミン類の合成に成功したのです。

 現在でも、エフェドリンは、覚せい剤密造の原料となっています。オウム真理教もエフェドリンから覚せい剤を合成したと聞いています。(1990年代から、アメリカを中心として、プソイドエフェドリンから覚せい剤を密造することが多くなっています。)

 1998年3月、バンコクでアジアの某国関連企業が同国需要の数十倍の塩酸エフェドリンを輸入しようとして摘発された事件がありました。同国で製造された覚せい剤の主な市場は日本とされています。

 東京都が、いわゆる「健康食品」、「合法(脱法)ドラッグ」の買上げ調査をして成分を分析したところ、50製品中15製品に、医薬品でしか使用できない「塩酸エフェドリン」、「マオウ」などを発見し、薬事法違反で摘発しました。違反品は全て輸入品でした(1997年、http://icj-net.com/true/contents/tocyou/3.htm(02/06/05確認))。1996年から2000年までに8回行った同様の検査で、188製品中、47製品に有害物質が含まれていました。

 なおエフェドリン、プソイドエフェドリン、メチルエフェドリンは、国際オリンピック委員会の指定する禁止薬物リストのうち、興奮薬の中に含まれています。いわゆるドーピングの対象薬です。http://www.rcss.kyoto-u.ac.jp/doping.htm(02/06/05確認)http://www.anti-doping.or.jp/doc/2_prohibitedlist.html(08/10/06確認)。2000年のシドニーオリンピックでは、尿検査で禁止薬物、プソイドエフェドリンを検出された、ルーマニアの体操女王、アンドレーア・ラドゥカン選手(16歳)が金メダルを剥奪されました。コーチらは、本人が知らずに風邪薬を服用していたため、と無実を主張しましたが、認められませんでした。

 エフェドリンは、メタンフェタミン(日本で「覚せい剤」と呼ばれる)と化学構造式が類似し、覚醒作用を持っており、しばしば薬物乱用者の乱用対象薬となっています。赤城高原ホスピタルでも、年間に数名のエフェドリン乱用者を診療します。もっとも、国際オリンピック委員会はエフェドリン製剤を嗜癖薬物と規定しましたが、アメリカの National Institute on Drug Abuse は依存性はあるが、その程度は強くないとしています。

 2000年年末に、咳止めシロップ薬、エスエス製薬「エスエスブロン液エース」と佐藤製薬「新トニン咳止め薬」(通称「ブロン」、「新トニン」)が、含有成分に関して東京都の指導を受けました(2000/12/29 朝日新聞)。1回使用量5ml(1本60ml)なのに、数本もまとめ売りするなど、乱用されているという指摘です。両方とも、エフェドリンが含有されており、日本の薬物乱用者と薬物乱用治療者との間では、有名な(悪名高い)乱用対象薬物です。ホスピタル受診者でもこれらの薬剤の乱用者は多数見られます。このほかにも、エフェドリンを含む風邪薬は少なくありません。

 ある種の薬物スクリーニング検査では、エフェドラ製品服用者で、アンフェタミン類(覚醒剤)が偽陽性になることがあります(Hallar, 2000)。現在、世界中で使用されている主要な簡易尿検査(免疫検定)キットの説明書には、このことを明示した特別の注意書きが入っています。検査キット使用者からの質問と苦情が多いためです。マオウ類とアンフェタミン類とを区別して、確実な分析結果を得るためには、簡易検査とは別の精密化学分析法が必要です。


[ エフェドラの伝統的使用法と新しい使用法 ] 

 マオウ(エフェドラ)は中国漢方では4000年の使用歴をもつ重要なハーブです。日本でも古くから感冒薬や気管支喘息薬として使われてきましたし、現在でも、市販感冒薬の多くに含まれています。

 ところが、1980年代から、アメリカを中心に、エフェドラの新しい使用法が広がってきました。それは、これまでこの薬剤の副作用として考えられてきた食欲不振、不眠、血圧上昇、体温上昇などの効果の逆用です。ダイエット業界はこれらの副作用に注目して、エフェドラ製品をダイエット薬として使用し始めました。エフェドラは基礎代謝率を高くし、体温、血圧などをわずかに上げ、エネルギー消費率を高めます。使用者によっては、運動能力を高め、気分をハイにするとされています。同じ仲間の化合物、カフェイン、アンフェタミンやリタリン(メチルフェニデート)の効果から類推しても、これは大いにありうることです。このような新しく発見された効能(?)をつけ加えて宣伝に使い、エフェドラはダイエット市場の成長株になったのです。

 アメリカでは、1960年代、1970年代にダイエット薬にアンフェタミン類(日本でいう「覚せい剤」類、食欲抑制効果が強い)が混入される事件が頻発し、その乱用が問題になりました。規制と取締りが厳しくなって、その種非合法ダイエット製品ユーザーも合法のハーブ系ダイエット剤に流れたようです。

 現在エフェドラは、中国やアメリカでは、補助食品、煎茶や食品添加物として、あるいは抽出物のカプセル剤や錠剤などいろいろな形で販売され使用されています。折からの健康ブームとハーブ人気に乗ってエフェドラは販路を広げ、日本にも輸入されるようになりました(違法行為です)。ダイエット薬として使用されるときには、日本でも、古くからある「マオウ」という名称ではなく、「エフェドラ」と呼ばれてきました。

 覚醒系ハーブ製剤、ハーブ系ダイエット製剤の多くは、ma huang というハーブ植物から得られ、エフェドラを含有しています。また、guarana 飲料に由来するカフェインを含有していることも多く、これらは相乗的にハーブ製剤の効果と副作用に関与しています。

 このように、エフェドラの使用法には伝統的使用法と、新しい使用法と、大きく2つの区別ができます。前者は古くからの漢方薬として、医薬品としての使用法です。

 これに対し後者は、従来の使用法における効能(呼吸器疾患治療)とは異なる効能(ダイエット、賦活作用)を目的にした使用法です。医薬品もありますが、処方箋のいらないOTC(over-the-counter; 店頭販売)薬品ですし、アメリカではそれよりも「サプリメント」、「食品添加物」として広く使用されています。

 アメリカでは、エフェドラ製品には、補助食品(Dietary Supplement)、食品添加物(Food Additive)、処方箋なしで薬局の店頭で購入できるOTC薬品、処方薬があり、これを規制する法律も異なるようです。後述するように、補助食品としてのハーブ製品は、1994年の法律改正で、ほとんどFDAの規制を受ける必要がなくなりました。この裏には、巨大なハーブ業界、ダイエット業界のロビー活動がありました。

 現在、アメリカで議論の的になっている「エフェドラ問題」は、後者の使用法です。 主として呼吸器系疾患の治療薬としての、4000年の歴史のあるマオウの使用法ではないのです。なお現在では、喘息や呼吸器疾患治療薬として副作用の少ない治療薬が多数あるので、実際の臨床場面で、医師が、呼吸器疾患に対してエフェドラやエフェドリンを処方することはほとんどないと思います。ただ、現在でも一部の漢方薬にはエフェドラ(マオウ)が含まれていますし、日本の市販感冒薬、咳止め薬にはエフェドリンが含まれています。

 古くからの使用法には、ダイエット効果、筋肉増強、エネルギー賦活、ハイな気分にするなどの効能は含まれていませんでした。このような目的に使用され始めると、使用量、使用期間、使用方法、商品の宣伝方法などに関して、乱用傾向がつきものであるのは容易に想像ができます。医薬品としての安全性が確認されていない使用法であるという意味では、新しい使用法は、それ自体が乱用であるという言い方もできるかもしれません。まして、補助食品、食品添加物として使用されるということは、使用者が根拠のない安全性認識を持ち、医学的管理のないところで使用されることを意味します。

 アメリカでは、エフェドラ製品は、ダイエット剤、エネルギー賦活剤として、あるいは気分をハイにする乱用薬として、さまざまな商品名で売られています。主なブランド名は、Metabolife 356、 Ripped Fuel、 Ultimate Orange、 Hydroxycut、Xenadrine RFA-1 (ゼナドリン)などです。トラック運転手の仲間うちでは、"super-energy pill"と呼ばれ、マニアの間では、しばしば"legal speed"(合法覚せい剤)と呼ばれています。アメリカではエフェドラ製品は、健康食品店、フィットネスクラブ、インターネットなどで簡単に入手できます。

 食欲抑制、賦活作用、不眠、気分高揚、乱用、依存傾向などは、程度の差はあれ、これらのエフェドリン、リタリン、アンフェタミン(覚せい剤)など類似化合物に共通して見られる効果(副作用)です。

 かくして、古くからのハーブ使用法でもなく、治療薬としてでもない、新しいエフェドラ使用方法の時代が始まったのです。そこには以下のような危険がひそんでいます。

手軽に使用できるようにハーブから抽出した有効成分を錠剤やカプセルにして、使用するようになりました(量を多めに飲みがちです)。
医薬品ではないので、有効成分の量の管理がいい加減です。表示そのものが間違っていたり、カフェインなど併用注意の物質が含まれていたり、表示量より実際の成分量が多かったり少なかったりします。
抽出物をコーヒーやコーラなどのカフェイン入り飲料と一緒に服用したりしがちです(カフェインはエフェドリンの効果を強め、危険)。
ハーブ製品だから、危険はなく、むしろ体に良いと誤認しがちです。
医薬品の認識がないと、あれこれとりまぜて使ったり、同じような成分が含まれているかぜ薬などと併用したりしがちです。
もともと基礎疾患のある人、体調不良の人が、医師の管理外で服用することになります。
ダイエット志向の健康な人、アスリート(運動家、スポーツ好きの人)などが、エフェドラ製品を服用して、すぐに運動したりしがちです。
治療の認識がないので、使用期間を限度なしに延長しがちです。
薬物乱用者や摂食障害患者など、薬物志向、ダイエット志向の強い人たちが、違法薬使用を避けて、エフェドラを使用する傾向があります。

 まだまだ、ほかにもいっぱい危険性があります。医薬品のマオウ、エフェドリンと、食品添加物(サプリメント)のエフェドラとは同じ成分であっても同じ扱いではないのです。後者には、医薬品以上の管理体制が必要だったのに、アメリカでは、その認識がないまま、あるいは政治的な事情のために規制の枠から外れたまま、乱用の歴史が始まってしまったのです。


[ エフェドラ製品の宣伝文句 ]

 エフェドラ製品の宣伝文句をご覧いただくと、筆者の分析と主張を理解しやすいと思います。

(英文の宣伝語句)1997年6月のFDAの勧告以来、過激な表現は減ってきているようです。

pep up extracts; pep up packets; pep up formulas(pep up は元気づけると言う意味。pep or pap? というのは、pep-up 商品の氾濫に対する皮肉で使われていた表現。pap は子供だまし)
diet pill; weight loss supplements; natural ecstasy; herbal ecstasy; X-phoria;
exercise aids; stimulants; natural high; legal high
herbal fen-phen(フェンフェンはフェンテルミン、フェンフルラミン配合のアメリカで人気があったダイエット商品、副作用のため1997年配合禁止);
fat-burning; energy boosters;
100% safe; psychedelic agents; "rave" parties
the weight-loss product ; the ultimate weight loss product

Produces euphoria !  Enhances energy levels !  Aids in weight loss !  Heightens awareness !  Increases sexual sensations !  Enhances Physical Performance ! Increases Mental Alertness !  Stimulates Fat Burning Metabolism.!  Lose weight by feeling less hungry !  Burn stored fat! Reduces appetite !  Control sugar and carbohydrate cravings !  Preserve lean muscle tissue !  Helps you stop smoking!

you wont be hungry for 7 hours after just one dose
the number one choice of body-builders for fat-burning compounds
No toxic constituents, all ingredients are 100% natural guaranteed!!

間接的表現(文脈から)
taking their pill will not only make you lose weight, but will also change your financial status.
"calorie-restricted diets are proving ineffective and counterproductive"
(Mahuan is) a "powerful natural thermogenic agent that causes brown fat in the body to burn excess ordinary fat to create heat" (Thermogenesis is a process in which the body's metabolism speeds up, burning more fat calories than the fat calories burned from normal daily activities.)

(日本語の宣伝語句)日本では、薬事法により、エフェドラ製品の国内での転売が禁止されています。そこで、個人輸入の代行という形式を取っていますが、実質は輸入販売に近いところもあるようです。インターネットオークションで入手する人も多いようです。最近、製品名を表示して、一般公開することが規制され始めたようです。宣伝が、以前に比べてずっと大人しくなりました。突然姿を消す業者や閉鎖されるサイトも多いようです。

補助食品、スマドラ、自然ダイエット/痩身製品、ナチュラルにダイエット
ハーバル エクスタシー  性欲覚醒・快感アップ
UP系媚薬(快感に浸る)
赤い悪魔、強力合法覚醒剤
米国では健康食品として販売されています
エフェドラ・スーパーカップ 米国内で製造・販売禁止のいわくつき、1粒あたり833mgのエフェドラを含む強力なアッパー
エフェ○○スーパーカップ(100Tab=6,400円)(製品名自粛の苦肉の策?)
感覚を敏感にし食欲を抑える効果もあるエフェドラ
東洋医学にて、5000年間の歴史を持ち安全だとして使用されています。
細胞レベルでの熱生産により脂肪を燃焼させる機能を促進させます。この働きにより、体の脂肪の燃焼を助けます。
エフェドラ、ガラナ、カフェインなどの有効成分が体の基礎代謝を高め、 脂肪を燃焼しやすくします
近年、産業界においてもっともホットなウェイト コントロール製品
エフェドラの含有量を増加し、熱生産の効果を増進
食欲抑制と脂肪燃焼効果があります。



[ エフェドラの効果と副作用の報告 ]

 ハーブ薬剤エフェドラは、エフェドリンとプソイドエフェドリンを含有していますから、人体に対し化学合成エフェドリンと同様の効果をもっています(Young R ら、1998)。

 White LM ら(1997)は、正常血圧者への ma huang 投与により、化学的合成したエフェドリンと同様の心血管系効果があることを確認しています。

 Nardir A ら(1996)は、中国製ハーブ製品 ma huang による急性肝障害を報告しています。

 Zaacks SM ら(1999)は、エフェドラ製品使用による過敏性心筋炎(39歳男性)のケースを報告しています。

 Gurley BJ ら(1998)は、エフェドラ製品に関連すると思われる17人の死亡例を報告し、ハーブ系薬剤は「天然」物質であるから生来安全であるという一般人の誤った信仰に警鐘を鳴らしています。

 Gruber AJら(1998)は、エフェドリン製剤を使用している女性運動家、36人を調査し、大部分が副作用の経験があり、7人(19%)では明らかな依存がみられたことを報告し、またエフェドリンユーザーには摂食障害者が少なくないと指摘しています。

 コカインやアンフェタミンなどの違法覚醒剤は高価なので、より安価なエフェドリンなどによって混合され薄められていたり取り替えられていたりすることがあります。これを知らずに注射すると心筋障害や肺浮腫など深刻な障害を起こします。Cockings JGら(1997)は、アンフェタミンのつもりでエフェドリンを注射した25歳男性ケースを報告しています。

 エフェドラ製品のエフェドラ含有量は正確でない物が多く、ロットごとの違いが1000%に達するものがあり、半数以上の製品で表示量と測定量の差が20%以上あったと報告されています(Gurley BJら, 2000)。

 研究者らは、エフェドラを含む製品には、もっとわかりやすい、標準化された表示が必要であると主張しています。ある調査では、ラベルどおりに服用すると、エフェドリン製剤(店頭販売の喘息治療薬;1剤12.5‐25mg)の勧告使用量の10倍量(エフェドリン225mg+カフェイン100mg)に達する製品まであったと報告されています(MMWR August 16, 1996: Adverse Events Associated with Ephedrine-Containing Products)。


[ 専門家の副作用調査と警告 ]

 最近(2000年11月)、より厳密で広範な調査によって、エフェドラ製品が、心臓発作、脳卒中、けいれん発作、流産、死亡などの強い副作用を起こしていたことが確認されたという専門家の報告と警告(Haller CA ら、2000)がありました。アメリカではビッグニュースとして報告されました。

 かねてからの副作用の報告により、アメリカ FDA は、このエフェドラ含有製品の使用量と使用期限を制限するように提言していました。今回の調査は、その FDAの要請により行われたものです。

 アメリカサンフランシスコにあるカリフォルニア大学の研究者グループが、1997年6月から1999年3月までにエフェドラ製品使用中の副作用をFDAに報告してきた140人の病歴を調査しました。

 43例(第1群)では症状は明らかにあるいはおそらく(definitely or probably)製品に関連があり、44例(第2群)では症状は製品に関連している可能性がある(possibly)、という結論になりました。以上2群のうち10例(第1群の3例を含む)は死亡しており、13例(第1群の7例を含む)では永続的な障害が残ったと報告されています。

 副作用としては、高血圧、動悸、心悸亢進など、心血管系症状が47%、脳卒中やけいれんなど脳神経系症状が18%でした。

 この調査結果は、2000年12月号の New England Journal of Medicine に収載されました。健康被害の危険性があるという観点から、同雑誌の発売予定6週間前の11月初めに同誌のオンラインサイトにも緊急報告されました。


[ ハラーとベノウィッツのレポート ]

 この研究は、アメリカでは、研究者2人の名をとって、「ハラーとベノウィッツのレポート」と呼ばれています。厳密な対照研究ではなく、FDAに自主的に報告があったケース(実際の症例数の1割程度?)を再調査したものですが、今のところ、これがエフェドラの危険性に関する最新のデータです。この話題について論じる人は、少なくとも今後当分は、この報告を引き合いに出すことになるでしょう。

 この報告でのエフェドラ製剤による副作用被害の特徴は、元来自覚的には健康な若年から中年の男女が多く、ダイエットや運動能力を高めるためにエフェドラ製剤を使用していて、常用量のエフェドラ製剤を使用後に運動をしていて発症したケースが多いこと。その結果は、軽症例だけでなく、重症例、死亡例まであるということです。

 このように、エフェドリンの服用量と副作用は必ずしも相関せず、この原因としては、感受性の個人差の問題があると言われています。この種の刺激興奮剤に過敏な人たちが存在するという訳です。今後、より組織的な副作用情報の収集調査と共に、ハイリスクグループの特定が望まれます。

 覚せい剤やエフェドリンの研究者や乱用、依存症治療者の中には、この系統の薬剤では、感受性の個人差がきわめて大きいので、現在の医学では、実際上副作用の出現は予測不能であるという意見もあります。

 一方で、ユーザーの数を考えると、エフェドラの副作用被害の報告は少なく、比較的安全な薬品であるという意見もあります。しかし、上述のように、治療の必要上服用する医薬品の安全性と補助食品や食品添加物の安全性を同列で論じることはおかしいのではないでしょうか。

 ハラーとベノウィッツのレポートに関しては、科学的、統計的手法に関して、批判的な意見も少なくないようです。NEMJの原文やをFDAの関連文書を読んで検討した筆者の個人的感想からすると、レポートは正しい方向性を示していると思います。批判をしているのが、業界のロビイストやお抱え学者かどうかということは、筆者にはわかりません。


[ アメリカの行政機関の対応 ]

 FDAは、1983年には早くも、処方箋不要のOTCの覚醒系薬剤(stimulants)、体重コントロール剤では、2種類の薬剤のブレンド製品は不可。1種類に限るとして、カフェイン、フェニルプロパノールアミン、エフェドリンの合剤の販売禁止処置を打ち出しています。

 ところが、ダイエット業界、ハーブ業界は巨大な資金力にものをいわせ、優秀なロビイストを多数動員して、積極的に政治的工作を行いました。その結果、FDAなどによる、エフェドラ入りサプリメント規制法案を棚上げにさせたばかりでなく、1994 年には Dietary Supplement and Health Education Act (DSHEA)を勝ち取ったのです。この法律によって、ハーブ製品は安全性、有効性を証明する必要がなく、ラベルに書かれていることを保証する責任がなくなりました。ハーブ製品は、処方薬、OTC製品、食品添加物に課せられているFDAの規制を逃れられたのです。ハーブ製品は、数年以上かかる、安全性と有効性の証明なしで販売できることになりました。ハーブ製品による健康被害の因果関係の証明責任はFDAに課せられ、その証明なしにハーブ製品を市場から追放することができなくなりました。

 FDAは、1997年6月、エフェドリン製剤に関する規制勧告を公表しました。勧告内容は、エフェドリン食品添加物(ephedrine dietary supplements)に関するもので、1回量、1日限度量、連続使用の制限(後述)。エネルギー賦活作用などを目標にした、短期大量使用の危険のある製剤には、「勧告量を超えて服用すると、心臓発作、脳卒中、けいれん、死亡の可能性がある」というラベルを添付すること。またエフェドラ製剤とカフェインを併用することの禁止などです。

 アメリカで、Herbal Ecstasy(02/06/05確認)(ハーブ系エクスタシー、エクスタシーは麻薬、MDMAの別名)という名前で「100%天然で、安全」な商品として出回っていたエフェドラ製品が FDA(食品医薬品局)の取締りを受けた(1997)という報道があります。

 エフェドラ製剤について、アメリカでは副作用に関する裁判ケースが増えています。2000/7/23付けワシントンポストによると、1994年から、少なくとも33件の裁判(結審)ケースがあり、42件のケースが係争中で、そのうち2件は集団訴訟(class action)の証明を申請中です。あるケースでは、原告が250万ドルの賠償金を受けています。

 エフェドラ製剤の誤用、乱用、副作用の続発に対応して、多くの州では、連邦の規制よりも厳しい規制処置を行っています。

 オハイオ州とテキサス州では、製品中のエフェドラ量を制限し、18歳未満のユーザーへの販売を制限しています(Washington-CNN 02/06/05確認)。イリノイ州では、エフェドラ製品は処方箋なしでは、入手できません。

 一方で、有名な副作用被害ケースに反応して、オハイオ州とネブラスカ州では、一時的にエフェドラ製剤が販売禁止になりましたが、その後、業界のロビイ活動が成功して、過剰反応であったという見方が広がり、禁止令は取り下げられたようです(ネブラスカ州ではまだ販売禁止?)。

 ハラーとベノウィッツのレポート後も、FDAは新しい販売制限などの規制は打ち出していないようです。

 一方、カナダでは、エフェドリン製剤を市場から締め出す動きが急速に進みつつあります。Health Canada - Warnings/Advisories - Health Canada requests recall of certain products containing Ephedra/ephedrine(02/01/09)。オーストラリアでも、エフェドリン製剤は不許可です。Personal Import Scheme for Unapproved Medicines

 アメリカでは、エフェドリンやエフェドラ製品を処方箋の必要な医薬品にしようとする市民、関係者グループ、FDAとハーブ製品業界のロビイストとの間で現在も熾烈なバトルが続いています。業界は強大な資金力をてこにして、エフェドラ製品反対の研究者の経歴などを調べ上げて個人攻撃をしたり、場合によっては訴訟に持ち込むなどの露骨なプレッシャーをかけているといわれます(2000/7/23 Washington Post)。

 2000年8月に行われた公聴会では、業界は多くの専門家を動員して、FDAの規制に反対する3つのパネルを企画し、規制賛成派を圧倒しました(2000/12/25 Washington Post)。


[ 危険? 安全?]

 結局のところ、エフェドラ製品は危険なのでしょうか、安全なのでしょうか? 患者さんやご家族に、医師としての意見を求められたら、何と答えればよいでしょうか? 以下、あちこち取り集めた情報に筆者の常識を混ぜ合わせたものです。

 上記のようにアメリカでは、一見健康な若年者で、エフェドラ製品の副作用によると思われる死亡例などの報告があります。これに関して、厳密な意味での医学的因果関係に関する結論はまだ出ていませんが、重篤な副作用の危険性があることは否定しがたい事実です。個人の過敏性、隠れた基礎疾患、服用時の体調、エフェドラ製品の有効成分量の不均一、説明書の不備、同時服用のカフェインなどの影響、エフェドラ製品服用後の運動などが関与しているかもしれません。少なくとも、ハーブ系製剤は天然物だから安全という保証は何もありません。とくにこの製剤の常用量を超えた乱用は危険です。 

 エフェドリン系補助食品(ephedrine dietary supplements)の使用量と使用期間について、FDAの勧告(1997)は、エフェドラアルカロイド、またはエフェドリン量にして、1回量 8mg 以下、6時間の間隔をあけて服用し、1日量 24mg 以下です。また7日以上の連続使用をしないように指示をすべきであるとしています。業界の抵抗にあって、規制とすることはできず、勧告という形式になりました。

 一方、業界は1日100mg、3ヵ月使用して、1ヵ月休薬を主張しています。従来アメリカでは、エフェドリン製剤(店頭販売の医薬品)は1日最高100mg、最高3ヵ月使用で中断し、1ヵ月以上の休薬期間をあけるべきであるとされていました。業界はこの医薬品の常用量を補助食品や食品添加物の使用量(有効成分量)に流用しているのです。医師の常識から考えて不適切と思われます。使用量について検討するときには、その点にご注意ください。なお日本では、医薬品として用いる場合の1日使用量が、塩酸エフェドリンとして、1回12.5-25mgを1日1−3回内服と定められています。つまり最大使用量が75mgということになります。


 常用量のエフェドラ製品を服用すると、30分から2-3時間後に、体が火照るような感覚や消化器系副作用(嘔気など)を経験する人が多いようです。時には常用量以下の服用でも、同様の効果があり、これを不快に感じるという人も少なくありません。

 エフェドラ急性中毒の徴候は、エフェドラ製品を服用して30分から数時間後に出現します。症状は、神経過敏、不安、振戦、動悸、悪心・嘔吐、頭痛、頭重、排尿困難、口渇、幻覚などから始まり、さらに重症の場合は、多量の発汗、瞳孔散大、けいれん、高熱、不整脈や心停止までみられます。エフェドラアルカロイドの致死量は、経口投与で1−2g といわれています。心不全と窒息が過量服用時の直接の死因です。これは最近問題になっている常用量使用中の心筋梗塞、心不全、脳梗塞などによる突然死とは一応区別される問題です。

 エフェドラ製剤は覚醒系薬品なので、腎疾患患者、心疾患、高血圧、甲状腺機能亢進症、精神疾患の既往のある人、けいれん発作や糖尿病の病歴のある人、妊婦、授乳中の女性、前立腺肥大症、緑内障患者などでは使用を避けるべきでしょう。

 エフェドラと他のアッパー系薬剤(リタリン、カフェイン製剤など)、飲酒との併用は危険です。エフェドラ製剤服用中は、コーヒーやコーラなど、カフェイン入り飲料は控えるべきです。エフェドラ製品をコーヒーで流し込むのはとんでもないことです。カフェインとの相乗効果で危険です。覚せい剤メタンフェタミンは単独使用でも危険ですが、エフェドラ製剤と併用すると危険性が高くなります。エフェドリンは市販のかぜ薬、鎮咳剤などに含まれていますので、これらの薬剤とエフェドラ製剤を併用すべきではありません。また、多くの感冒薬にはカフェインも含まれています。

 エフェドラの依存性の報告は少ないようですが、有効成分エフェドリンには依存性があり、ホスピタルでもエフェドリン錠の乱用依存患者は時々みかけます。またエフェドリン入り咳止め薬の乱用者は年間20名以上の新患が受診されます。文献では、Gruber AJら(1998)が、エフェドリン製剤の依存を報告しています。

 精神科関係では、不眠症患者、パニック発作のある方などもエフェドラ製剤は服用すべきではありません。摂食障害の方にとってエフェドラ製剤は魅力あるダイエット薬かもしれませんが、注意が必要です。情緒不安定を強める可能性があります。筆者はお勧めしません。

 筆者自身は、薬物乱用患者や過食症患者の薬物志向と薬物信仰を知っているので心配です。 たとえば赤城高原ホスピタル入院時にハーブ系製剤や補助食品を山のように持ち込んでくる患者さんは少なくありません。彼ら/彼女たちの多くが、安定剤、眠剤、下剤、利尿剤などと共にハーブ系ダイエット剤を乱用しています。

 少なくとも、エフェドラは医薬品として扱われるべきもので、危険性の情報が公表され、医療機関や一般市民に知らされるべきではないでしょうか。エフェドラ製品が、「健康食品」、「ハーブサプリメント」のような安全が保証された製品であるかのような呼称で販売されている現状は問題です。

 アメリカで大問題になっているエフェドラ製品ですが、日本では、法律的には、エフェドラ製品は販売も、宣伝も禁止されているからでしょうか、日本の厚生(労働)省が、エフェドラ製品を名指しして、何か対策を打ち出したり、指示を出したりしたという情報が見つかりません。対岸の火事と見ているのでしょうか。海外から購入する薬剤は自己責任だから、お役所は知らないということでしょうか。(02/09/05に、エフェドラ製品への注意喚起、健康被害の報告など、監視指導の通達が厚生労働省から出ました)

 エフェドラ製品に限らず、この種の問題をめぐって、アメリカでは、公聴会や議会など、オープンな場所で議論があるのに対し、日本では、行政指導など関係者だけが知る場所で対応と処理が進んでいくケースが多いようです。だからエフェドラ関係の情報も、日本語のものとしては、マニア雑誌やアングラ情報誌のようなものしかありません。


[ アメリカで大流行のエフェドラ製品、日本にも上陸。あなたも知らないで使っているかも ]

 アメリカでは、1999年には、1200万人がエフェドラの入った栄養補助製品(dietary supplement)を使用したと推定されています(Hallar, 2000)。

 日本では、エフェドラ(マオウ)の食品添加物としての使用は、薬事法により認められていませんが、東京都の摘発事件。ネット販売の実情を見れば分かるように、実際は多くの違反行為が横行しているようです。また、個人輸入は規制されていません。そもそも、これだけ国際交流の増えた現代、アメリカで大流行しているダイエット薬、合法ドラッグ(脱法ドラッグ)を日本が水際で排除することなどできません。

 日本では次々に薬事法違反事例が摘発されています。過去に薬事法違反として公表されたエフェドラ入り製品には、セクスタシー、X TABLETS、LIQUID X、 PLANET X、 HASHANNA OIL、 MIDNIGHT ECSTASY、 BUZZ TABSなど多数あります。しかしエフェドラ製品は次々に日本に上陸し、すでにあなたの身近にあります。もしかしたら、もう知らずに使っているかもしれません。あなたの使っているダイエット薬、元気が出る薬、性感を高める薬、ボディービルディング用薬剤、眠気覚まし、知人から「安全なハーブ製品」といわれてもらった薬、アメリカから持ち帰った「みんなが使っている、人気のダイエット薬」、そして個人輸入で入手した製品などに、エフェドラが含まれています。

 一般に、アメリカの市販薬、OTC製品は、副作用もあるけど、効果があるという使用体験者は少なくありません。背景としては、医師の診察を受けると診察料がやたら高くつくというアメリカの健康保険制度があるとも言われます。そのようなアメリカンドラッグだと信じて購入してみたら、日本語の説明書をつけるのと同時に、日本の薬事法に違反しないように、有効成分を抜いて同じ名前で売っている製品もあるようです。「副作用も少ない代わり、効果もない(?)」日本仕様の市販薬にすり替えられていたという訳です。

 アメリカでは、エフェドラ問題は、CNNやTIME誌など、主要なマスメディアでは繰返し、大きく取り上げられましたから、平均的なアメリカ人ならハーブ製品の副作用情報に何度か接しているはずです。一方日本では、エフェドラ製品使用者は、このような情報をほとんど知らないはずです。

 筆者は、広義の覚醒系の薬剤(Stimulants)を全面禁止にすべきだとはいう意見ではありません。それぞれの薬物の危険性には、程度、レベルがあるからです。コーヒーが自由に飲めなくなるのはごめんです。ただ、危険情報は可能な限り、早く正確に伝えるべきだと思います。

[ 文献 ]

Cockings JG, Brown M:
Ephedrine abuse causing acute myocardial infarction.
Med J Aust Aug 18;167(4):199-200. 1997.

Gruber AJ, Pope HG Jr:
Ephedrine abuse among 36 female weightlifters.
Am J Addict Fall;7(4):256-61. 1998.

Gurley BJ, Gardner SF, White LM, Wang PL:
Ephedrine pharmacokinetics after the ingestion of nutritional supplements containing Ephedra sinica (ma huang).
Ther Drug Monit Aug;20(4):439-45; 1998.

Gurley BJ, Gardner SF, Hubbard MA.:
Content versus label claims in ephedra-containing dietary supplements.
Am J Health Syst Pharm 57:963-9.2000.

Haller CA, Benowitz NL:
Adverse cardiovascular and central nervous system events associated with dietary supplements containing ephedra alkaloids.
N Engl J Med. Dec 21;343(25):1833-8; 2000.

Nadir A, Agrawal S, King PD, Marshall JB:
Acute hepatitis associated with the use of a Chinese herbal product, ma-huang.
Am J Gastroenterol Jul;91(7):1436-8; 1996.

Theoharides, TC.:
Sudden death of a healthy college student related to ephedrine toxicity from a ma huang-containing drink [letter]
Journal of Clinical Psychopharmacology, Oct, 17(5):437-9. 1997.

White LM, Gardner SF, Gurley BJ, Marx MA, Wang PL, Estes M:
Pharmacokinetics and cardiovascular effects of ma-huang (Ephedra sinica) in normotensive adults.
J Clin Pharmacol Feb;37(2):116-22; 1997.

Young R, Glennon RA:
Discriminative stimulus properties of (-)ephedrine.
Pharmacol Biochem Behav Jul;60(3):771-5; 1998.

Zaacks SM, Klein L, Tan CD, Rodriguez ER, Leikin JB:
Hypersensitivity myocarditis associated with ephedra use.
J Toxicol Clin Toxicol 37(4):485-9; 1999.


[ リンク ]

NEJM オンラインサイト(02/06/05確認)
The New England Journal of Medicine -- December 21, 2000 -- Vol. 343, No. 25 論文の要約

The Ephedra Injury Page(02/06/05確認)
エフェドリンとエフェドラの被害者へのメッセージ。法律事務所のHP。法律的アドバイスと被害ケースなど。

Ephedra sinica, Ma huang -- Friend or Foe?(01/01/01確認)
 アメリカのエフェドラ製品のリストがあります。

The FDA, Regulation, and Risk of Stroke(01/01/01確認)
ハラーとベノウィッツの報告を受けて、NEMJ の Editorial。

Study Finds Ephedra Poses Health Risk (washingtonpost.com)(08/10/06確認)
ワシントンポストの関連記事。

U.S. Food and Drug Administration (FDA)
FDA関連の文書は、ここから入手するといいようです。ダケット(Docket: 細目)番号を打ち込んで検索します。NEMJの論文関係の文書は、00N-1200です。

Public hearings probe ephedra safety
2000/08/09のCNNニュース。関連記事。

Ephedra is Killing People!!

「エフェドラが人々を殺している !!」 リーダーズ・ダイジェスト(2000/10)のエフェドラの危険性に関する特集記事が詳しく紹介されています。


[ あとがき ]
 
 日本では、エフェドリンは市販薬にも含まれています。以前から、エフェドリン入り風邪薬や咳止め薬の乱用例は、ホスピタル受診患者では珍しくありませんでした。最近、これらの薬物乱用者に混在して、乱用認識のないエフェドラ入り製剤使用者が増えてきました。ホスピタルに入院される患者さんや外苑神経科に通院される患者さん(主として摂食障害や薬物乱用の方)の常用するサプリメントの中に「エフェドラ」という文字を発見することが多くなったことがきっかけで、2000年初め頃からエフェドラについて調べ始めました。「エフェドラ」と「エフェドリン」という、音感からして関係がありそうな医薬品名に医師としての勘が反応したのです。

 ほんのちょっとした出来心でスタートしたのですが、だんだんと足をぬけなくなってしまいました。アメリカ人のダイエット志向、フィットネス志向、薬物志向、アメリカの巨大なダイエット業界、ハーブブーム、薬物乱用問題、FDAの指導力、業界ロビイストの存在、などなどエフェドラ問題は奥が深いのです。エフェドラ問題の中には、現代アメリカ社会の縮図があると言ってしまうと大げさでしょうか。

 薬物製品の区別、法律問題など、専門外のことが多くて、理解に時間がかかりました。「エフェドラの伝統的使用法と新しい使用法」は全く違うのだという基本的構図に気づいてから、全体像が見えてきました。

 そもそも、戦後のヒロポン(覚せい剤)乱用の歴史を知っている日本の薬物乱用取締関係者や治療関係者の目から見ると、アメリカは、アンフェタミン類に対するガードが甘いように思われます。それは、アメリカ人児童の5%が服用しているといわれるリタリン(メチルフェニデート、ADHD、注意欠陥/多動性障害に用いられる)の使用法にも表れています。

 筆者が精神医学教育を受けたのは1970年代ですが、先輩からヒロポン乱用時代の昔話を聞かされたものです。エフェドラ問題の調査中に時々このことを思い出しました。

 日本とアメリカの国情の違いで気づいたことは、なんと言っても、アメリカにおける情報公開の原則、そしてアメリカと日本のインターネット事情の違いです。問題の特殊性もあるのでしょうが、この件に関するネット情報の量は、日米で100倍-1000倍くらい違うのではないかと思います。日本語の情報はほとんど手に入りません(2000年年末頃の状況)。筆者がこんなにも情報提供に熱心なのは、その事実に気づいたためです。

 2000年11月のハラーとベノヴィッツのレポートに驚き、またそれが日本であまり注目されないのにさらに驚き、それまでに貯めていた調査研究資料などをまとめて、急遽このサイトをオープンしました。

 予想どおりというか、予想以上に、日本にもエフェドラ製剤使用者がいました。エフェドラ製剤による健康被害の報告が集まってきました。それらの使用者のほとんどが、エフェドラの危険性情報を全く知らなかったということを聞き、たまたまこの場に居合わせ、この問題に気づいた医師の義務として、このサイトの更新をし続けることになってしまいました。更新はほとんどが真夜中の作業です。時々、事態の進行や、多くのメールによる報告に更新が追いつかなくなります。ご容赦ください。


[ 別ページの関連記事 ]

 →「エフェドラ(Ephedra)の危険性、続報1」
 →「エフェドラ(Ephedra)の危険性、続報2」
 →「エフェドラ、続報3、終に販売禁止へ」

 →「エフェドラ、体験者のメッセージ、第1部」
 →「エフェドラ、体験者のメッセージ、第2部」

 →[脱法ドラッグ、流行小史]


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AKH 文責:竹村道夫(2000/12)


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