施設長の独り言

   第7話 新年度にあたって今後の施設経営を考える     
 
17年度介護保険制度改正に向けて、連日新聞紙上には様々な記事が載っている。共通していえるのは、給付額の抑制と負担額の増加である。厚労省が改正内容を小出しにしてその反応を見ているのであろう(改正内容公表は当初は、7月参議院選前だったのが、8月にずれ込むようだ。給付抑制と負担増加では、与党は参議院選は戦えない)。
 要支援者・要介護度1認定者の介護保険適用を除外するとか、利用者の1割負担を見直すとか、施設利用者の食費負担額を見直すとか、新型特養以外の施設でもホテルコストを徴収するとか、20歳以上を被保険者にするとか等々。
 結局は国にお金がないのが一番の問題であり、これは社会保障費全般に渡る問題である。特に団塊の世代(1947〜49年生まれ)が老後を迎えた時に、医療・年金・介護をどう構築するかという大問題と密接に絡んでいるので問題をややこしくしている。
 さてロータスヴィレッジ存在の目的は何なのか。一つは、社会的責任である。国民の生存権を保障する施設として(セーフテイネットとしての役割)、又建築時に公金が注ぎ込まれている施設として途中で事業を放棄することは出来ない。二つには、職員の生活の安定と保証の確保である。どんな事業であっても人間無くして事業は成り立たない。又職員が社会生活を送る上で、安定した事業の継続と再生産するだけの賃金の保証は避けて通れない。三つには、自己生産の確保である。介護保険制度が給付の抑制と負担の増額の方向に向かっている時に、10年後20年後の施設の改築時の資金の確保をどうするか。ロータスヴィレッジは収入のほとんど全てを介護報酬に頼った経営を行っている。この介護報酬財源には50%の公費が投入されている以上、施設経営が国家の意向に左右され続けるのは、悔しいが認めざるを得ない事実である。
 翻って施設経営を考えた場合、これらの存在理由とどう向き合っていくのか。一つ目の存在理由は絶対にはずせない。社会福祉法人として非課税等様々な特典を与えられている以上、防貧・救貧という視点での事業運営は忘れてはならない。後は残り二つの理由のバランスを取りながら経営していくしか手がなさそうである。賃金を上げ続ければ事業の継続や改築時の資金の確保は難しい。逆にほどほどの賃金で有れば事業の継続や資金の確保はできるが、職員の社会生活に支障を来す。まことに難しい問題である。



                        平成16年4月30日   小林直行


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