施設長の独り言

   第10話 社会福祉法人の使命とは 
 

平成18年度実施に向けた介護保険制度改革大綱の取りまとめが年明け(平成17年初頭)にずれ込む見通しという。厚労省としては保険料徴収年齢を現在の40歳以上から引き下げたい意向のようであるが、日本経団連と連合の労使、経済諮問会議の民間議員などが反対しており、安易な引き下げよりは「徹底的な給付の効率化」や「保険料徴収年齢引き下げは、年金、介護、医療の一体的な見直しと同時に行うべき」との意見が出ているという。
 このような議論が出ているためか、現在要支援と介護度1と認定された人達を介護保険適用除外とすべきとか、施設入所者と在宅生活者との間をイコールフイットさせるために、施設入所者の自己負担増(朝日新聞によると月額3万円程の増)を図るべきとの意見が出され、一部は実施される可能性が高い。
 しかし、10月に起きた新潟県中越地震や台風被害者をみると、圧倒的に高齢者や乳幼児(災害弱者)が被災される例が多い。これら災害弱者のセーフテイネット(安全網)をどうするかという議論が出されてきた。セーフテイネットの役割は弱者の最後の拠り所である。このセーフテイネットこそ特別養護老人ホームや児童福祉施設等の社会福祉施設だと思う。
 作家の渡辺淳一氏はある週刊誌で「弱者の居場所」という内容でコラムを書いている。勝つ人がいれば負ける人もいる、収入が多い人がいれば少ない人もいるのがこの世の常である。負けた人が努力が足りなかったから、自業自得だからといって、これらの人々の居場所をほっといて良いものだろうか。否。また、日経新聞、大機小機欄において担当筆者は、日本国政府及び地方公共団体の天文学的借金のためある時を境に大増税と社会保障給付の大幅カットを見越して企業の業績回復にも関わらず、株価の低迷が続いていると述べている。この論に従うならば、政府の社会保障給付の肩代わりを企業が求められ法定福利費や厚生経費が膨らむことを暗示している。全ての企業がこの負担に耐えられる訳ではない。中小零細企業はその日の運転資金にさえ事欠く状況がある。社会福祉法人でも同様である。
 先進国日本が、努力が報われる人達のみの政策を追求していくならば、弱者の居場所はなくなるし、社会的不安は増すし、安心して暮らせることは出来ない。
 社会福祉法人の使命は、これら弱者の居場所確保であることを肝に銘じなければならないし、政府も弱者の居場所確保に向けた政策を押し進めねばならない。


                        平成16年10月31日   小林直行


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