施設長の独り言

  

 第18話 岡田耕一郎ユニット型特老ホーム理論検証

 前回に引き続き岡田助教授『介護サービス組織としてのユニットケア施設の課題〜従来型特別養護老人ホームとの比較から〜』東北学院大学論集経済学第155号(2004年3月)を基にし、ユニット型特老ホームについて考えていきたいと思う。下線が引かれている文章は岡田耕一郎氏記述の文であることを予め断っておく。
1.介護サービス組織における組織編成
 @相対的に組織が肥大化する傾向がある
 第9話(9話)でも指摘したとおりユニットケア施設においては入居者2名に対し1名の介護看護職員を配置する場合が多い。ということは50名定員で25名の介護看護職員がいることになる。25名全員が常勤では経営的に厳しい状態になる可能性が高いので、パート職員や臨時職員で対応するしかない。するとユニットに分かれている上にパート職員増による職員管理の必要性が高まりますます組織が大きくなる。
 A介護サービスの質の保証が容易ではない
 パート職員が多くなったための措置かどうかは定かではないが、平成18年4月介護報酬改正に伴いユニット毎に常勤のユニットリーダーを配置しなければ減算するなどといった縛りが付け加わった。パート職員は責任感が薄くなりがちであるし、仕事の面でも問題が生じやすい。いとも簡単に辞めることが問題である。せっかく育てた職員が辞め、また新たな職員を採用し育てるとなると介護サービスの質は保てない。民間介護会社は施設長を含め全てパートでスーパーバイザーと称する正社員が巡回して、サービスの質の確保とコストを安くする手法を用いている場合もある。
 B脆弱な組織編成になりやすい
 従来型特老のように全員ですべての入居者の世話をしているのと異なり、「寄り添う介護」を理念とするユニットケアはユニット毎のケアに徹するあまり担当するユニットが違うと途端に他のユニットのことがわからなくなる。そのためたとえば職員が風邪を引いて休んだ、急に辞めた等の突発的な出来事には対応するのが難しくなる。
2.介護サービスの画一性
 @不安定な中規模集団的介護の提供
  ユニットとはいえ定員は50人とか70人の規模で、夜勤は2 
  ユニットに1名であることを勘案すると小規模でも大規模でも 
  ない中規模で集団的介護にならざるを得ない。
 A食事介助の現状
 B入浴介助の現状
 C排泄介助の現状
3.利用者・家族との関わり
 @寄り添う介護の展開とその困難性
 Aユニット職員と利用者・家族とのなじみの関係の構築とその困難
 
 

4.介護サービスの質を保証する組織的仕組み
 @介護サービス管理の発想の欠落
 A放任状態になるユニット
最後に私の感想を述べると、@ユニットケア施設は効率を求めたら個々の入居者には対応できない。高齢者の増大と支える世代の減少が進む現在効率を考えないことに未来はあるのか、はなはだ疑問である。A人事教育システムがないとユニットケアは長続きしない。つまり職員の資質に左右されやすい。職員の資質に左右されるとなると福祉業界は他の業界に完敗である。中小零細規模である福祉事業所には系統だった職員育成システムは完備されていない。他の業界との職員採用を競った場合、福祉業界は負ける。B「他のユニットは何するユニット?」となる可能性がある。つまりユニット毎バラバラな介護が提供される可能性がある。バラバラになるのなら思い切って特養を解体したらよいと思う。実際に解体し地域に出たアザレアン真田の例もある。C管理者やユニットリーダーの独り善がりになる可能性がある。独り善がりになればついていく職員はいなくなる。
 今回の介護保険制度改正で制度化された小規模多機能型居宅介護は在宅指向が強く脱施設の要素の強いサービスであり、私が述べた@からCまでの感想を上回る崇高な介護理念なり高度な研修システムを必要とされるサービスである。アザレアン真田はユニットケアをしている施設ではなく、あくまで地域にこだわった結果特老解体を実行したのである。
 他人が何と言おうが自分たちが行っているケアをこつこつと実践し、それが地域住民から信頼され、あてにされることが今一番必要で、ユニットだ従来型だと思い悩む必要はない、と私は思う。

               平成18年2月28日  小林 直行

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